世界樹へです!!
私が良く知ってる場所―――そんなもの一つしかない。
だけど、そこに世界樹が無いことは私が良く分かっている。
あと半日......もしかしたらもう......
ミーニャが言っている寿命というのは当てにならない。今すぐにでも、世界樹へたどり着かなければゲームオーバーだ。
たどり着くための鍵は、ファーストの言った「君の見ている世界が全てじゃない」という言葉。
見ている世界―――見ることができる世界―――今見ているこの世界。
ふと思い出す。
私が勇者だった時にやった馬鹿げた実験。
このゲームの世界にある地下へと向かっていく洞窟のダンジョン。そのダンジョンの最下層50階層に、ダンジョンを攻略するのではなく、ダンジョンの壁に沿って横に穴を掘り、地下50階層地点でダンジョンの壁をぶち抜き、侵入するというものだった。
もちろんダンジョンの壁を壊せる筈もなく、結果は失敗に終わった。
だけど、あの時―――この世界の地面に穴を掘る事が出来ることを知った。
つまり、地面の下にある巨大な何かを隠したいが為に、この世界には地下があると考えられる。
私が良く知ってる、ラスボスの城―――その地下に『世界樹』は隠されている!!
それに、ラスボスの力なら、ダンジョンの壁をぶち抜き世界樹の中に侵入出来るかも知れない。
私に時間が残されて無い以上。この手を試すしかない!!
そして、危険が多すぎるから、みんなは連れていかない。
私一人で全てを終わらせる。
爆発。
私が蹴った地面が大きすぎる力に耐えきれず、爆散する。
駆け抜ける。私の最速で。
景色は一瞬にして切り替わり、いつも見た光景が目に入る。
ラスボスの城―――その手前で私は魔法を創る。
地面を掘るためだけの魔法。
「抉り取れ、『エアロブラスト』」
高速回転する風の刃が、地面を抉り、地下深くまで突き進んでいく。
その穴に私は身を投げ出す。慣れない浮遊感に襲われながら、落ちて行く。
落下しながら違和感を感じる......一体どこまでこの穴は続いているの?
私が落下を初めてから、1分が経過した。
先の見えない穴の中から、木の床のようなものが現れた。風魔法で、落下速度を減速させつつ、そこに着地する。
「私の全力で放った魔法が、ただの木に止められる筈がない......ここが、『世界樹』」
問題はここから。
この壁を壊すことが出来るのかが重要だ。『勇者』だった時は出来なかった。だけど今なら......
拳を握りしめ、ミーニャを本気で殴るような要領で、世界樹を殴る。大地震が起きたかのような振動が世界に伝わった。
......壁は壊れない。
だか......ラスボスは笑っていた。
殴った右手は、骨が折れているのか変な方向に曲がっていた。
「......ヒビが入った」
何でもなかったかのように右手を元通りにし、また殴る。
ヒビが少し広がっていく。
また......殴る。治して、殴る。殴る。殴る。
「これで、終わりだ!!」
右手が壁を壊した感触を感じた。
そして、殴った勢いのまま『世界樹』内部へと侵入する。
だが私が目の当たりにしたのは......この世界の"異常"だった。
ズラリと先が見えないほどに並べられた、謎のカプセル。
その中身は――――人間。
あり得ないほど広いこの部屋に、人間の入ったカプセルがびっしりと並べられている。中を覗くと、 何かの液体の中に人が眠るようにして閉じ込められていた。
そして、一つ一つに名前が書かれていた。
「何......これ」
そして、その中の一つに見てはいけないものが入っていた。
「何で......私が居るの?」
そのカプセルの個人名は、結城 真名。
現実世界にいるはずの私だった―――
何か大事なものが崩れるような音がした。
「じゃあ......ここにいる私は......何なの?」
そして、もう一つ見てしまった。
結城 真名のカプセルの隣。私と瓜二つの見た目をした女性。
隣の私と全く同じ顔だった。
そして......カプセルの個人名は―――結城 仮名
 




