最悪の敵です!!
一見普通の青年だが、油断はしない。
なぜか分からないけど、こいつからはミーニャと同じ、嫌な感覚を覚える。
「やだなぁ、そんなに警戒しないでよ。今日は連絡役として来たんだから」
「連絡?」
「ミーニャから、『カナちゃんはもうもたないよ♪寿命は、あと半日ぐらいかな♥』だってさ」
あと半日......
間に合う訳がない。『世界樹』すら見つけてないのに。
「あぁ、気を落とさないでいいよ。『世界樹』は半日あれば余裕で着くから」
ファーストの顔を見ると「まぁ、場所が分かればだけどね」と嘲笑ってる気がした。
「さて、どうする? 僕は仕事も終わったし、もう戻るつもりだけど」
どこに戻るのか? そんな事は分かっている。ファーストの顔がにやけていることから、世界樹に戻るのだろう。
だから、私に選択肢はなかった。
「力ぞくで場所を教えて貰う」
「おっ、いいね......だけど、君は僕に勝てない。まぁ、僕も君に勝てないんだけどね」
そんな事を言って笑う、ファーストの全ての行動に警戒しながら私は、特攻する。
―――だが、ファーストはその場をピクリとも動かなかった。
私が目の前に姿を現しても、能力を発動しようとした瞬間も。
私は難なく、ファーストの腕をつかんだ。
「世界樹はどこ!!」
「おぉ、いつの間に......気付かなかったよ」
私の能力を知っているはずなのに、余裕そうに嗤うファースト。
「どこ?」
次はないと、自分の中で覚悟を決めた。ファーストが答えなければ私は能力を発動させる。
「君に僕を殺すことは出来るかな?」
明らかに侮蔑を込めた笑いに私は能力を発動させた。
◇◆◇◆◇
「ねぇ~♥カナちゃん★今生きてる?」
磔にされたまま喋りもしなくなったカナに、ミーニャが問いかけるが、返答は無い。
すでに目からは生気が感じられない。
「まぁ~♪いっか☆」
そんな事は気にしないとばかりに、どうでも良さそうな態度をとるミーニャ。
だが、急に纏わせる雰囲気をどす黒いものに変えて言った。
「どうせ♪こうなる運命なのだから★」
ミーニャが張り付けたような笑顔のまま、カナの頭を撫でた。
「ミーニャの可愛い実験台♥」
◇◆◇◆◇
いきなり私の足に鋭い痛みが走った。
地面に派手に転ぶと同時に、私にダメージを与えた人物を確認する。
「やっぱり固いな~ラスボスって。こっちの足が折れちゃうよ」
見たことがある青年だった。
「初めまして。僕は『ファースト』。君の―――いや、君達の敵さ」
ついさっき、同じような場面を見た。
「あれっ? 始めてなのに反応が薄いなぁ~」
ファーストが嗤う。
「もしかして君―――2回目?」
背筋が凍りつくような感覚を覚えた。
反射的に後ろに飛び、距離をとる。
おかしい......私の記憶は、ファーストに能力を発動させたところまでで、その先の記憶がない。
「あぁ、とりあえずミーニャからの伝言『カナちゃんはもうもたないよ♪寿命は、あと半日ぐらいかな♥』だってさ」
聞き覚えのある言葉。どうなってる?
頭の中は、意味わからないで埋め尽くされていた。
「混乱してるみたいだね。それも仕方ないさ、僕の能力は最悪だからね」
「......」
「人の想いも、時間も、やってきたことも、何もかも僕の意思で消せる。神様みたいでしょ? だけど残念なことに......この世界には、すでに神様がいるんだよ」
「......ミーニャ」
私がぼそっと溢した言葉にファーストは、驚き、そして笑った。
「君はアレが神様だと思っているのかい?」
「どういう事」
「アレはただの偽物さ、君も真実を知れば分かるさ、この世界がどんなものなのかを」
何を言ってるのか意味が分からない。だけど、その答えはなんだかすぐ近くにあるような気がした。
「さて、仕事も終わったし......いや、まだあったな」
ファーストがゆっくりと振り返る。
「君が一番良く知ってる場所に僕達はいる。君が見ている世界が全てじゃない」
そう言い残し、一瞬でどこかに消えた。




