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悲しみの連鎖です!!

 メリーがなぜ私の攻撃から蛇を守ったのか、それはあの奇形の化け物が、メリーの姉だったから。

 本当にそうだという確証はない。さらに、私には助けられるか分からないというのがメリーからのお願いに答えなかった理由だ。


 私が大蛇を打ち出してくる奇形の化け物をすでに『危険』だと認識してしまっている時点で、私が触れば存在ごと消えてしまうだろう。

 頭の中で渦巻く、『不可能』、『無理』の文字を振り払いながら考える。どうすれば......


 「ァあァアオ」


 その声が聞こえた瞬間、私はメリーを抱え真上に飛ぶ。

 下を見るとさっきまでいた場所に、凄い勢いで大蛇が通過していった。


 「メリー。『魅了』は使える?」

 「うん」

 「対象をあの大蛇に向かって発動して」


 私の言葉を聞いた後、メリーが目を大きく開く。

 しかし、大蛇の動きは止まらなかった。


 「マナちゃん。『魅了』が聴かないよ」

 「いや、それでいいの」


 メリーの『魅了』が聴かないということは、あの大蛇と奇形の化け物は繋がっていない。だから、私が大蛇に触れても本体を消すことがなく大蛇だけを消すことができる。

 メリーのお姉ちゃんならメリーを可愛いと思ってるはずだから......

 

 地面に足を着き、メリーを放す。


 「メリー。あなたのお姉ちゃんを助ける事は私には出来ないかも知れない」

 「えっ」

 「だけど、出来る限りのことはする。だから、そこで見てて」


 私はメリーの返事を待たずに飛び出した。向かう先は奇形の化け物。

 私が近付いたことで、頭の蛇の集合体は蠢き、その中の一匹が飛び出したと同時に巨大化し、私に襲いかかろうとする。

 

 「無駄!!」


 私の手が、大蛇に触れた瞬間。大蛇は元から居なかったかのように消えた。

 あり得ない現象に奇形の化け物が、驚いたように固まる。それを見て私は一歩強く踏み出し、加速する。


 まだ固まったままの奇形の化け物の蛇の部分だけを目掛けて、手を伸ばす。その時、蛇の一匹がまた飛び出した事が見えた瞬間、視界が暗転した。


 「何が起こったの?」


 暗い視界の中でうっすらと見えたのは、赤くぼこぼこした壁。

 そして、生臭い匂いと、地面に塗られたベタベタした何か。


 「まさか......大蛇の中にいる!?」


 私はすぐに大蛇の内部に手を触れ、能力を発動させる。

 すぐに視界は晴れ、毒の沼地が映った。


 そこにはピタリとも動かない奇形の化け物が立っていた。


 「マナちゃん!!」


 その声で、すぐにメリーの『魅了』の力だと分かり、私は飛び出す。奇形の化け物の蛇の部分だけを消していく、そして大部分を消した所で私は見てはいけないものを見てしまう。


 蛇の集合体の部分には、メリーの姉の顔があると思っていたが、そんな事は無かった。私はその部分に何もないのを見た。本来あるべきはずの顔どころか、首の中にはポッカリと穴が空いていた。

 そして、その穴から蛇がウジャウジャと湧き出てきていた。


 私はすぐに奇形の化け物から離れ、メリーの元へと向かう。


 「マナちゃん!? どうしたの?」

 「......メリー」


 メリーの姉が蛇に操られているだけだったなら、私の能力で助けることができた。だけど、死んだ人間を生き返らせることは私にも出来ない。


 何も出来ない悔しさが顔に出ていたのか、メリーはこの事態に気付いた。

 だけど、メリーは一瞬だけ悲しい顔を見せて、すぐに元に戻る。


 「メリー......その」

 「いいのマナちゃん、メリー何となく分かってた。でも、諦められなくてマナちゃんに頼っちゃった。ごめんね」


 メリーの顔を見てられない。今、メリーがどんな顔をして、何を思っているのか、私は想像するだけで心が壊れてしまいそうだった。


 「私は......」

 「メリーは大丈夫だから、マナちゃんは休んでて」


 メリーはそのままゆっくりと奇形の化け物の元へと歩いていく。さっきの私の攻撃で蛇たちが少なくなってはいるけど、メリーの力ではどうなるか分からない。


 心配になってメリーの元に向かおうとしたときには、私の体はもう動かなかった。

 

 「これは、『魅了』!?」


 ピクリとも動かない体。メリーは、既に奇形の化け物の目の前に立っていた。


 「メリー!!」


 『魅了』の影響がない蛇は、メリーの体に襲いかかる。しかし、メリーはなにもしなかった。蛇に噛みつかれ、赤い血を流した。


 「ねぇ、お姉ちゃん」

 「ガァァオオア」


 メリーの白い肌が赤く染まっていく。だが、メリーは優しく微笑んでいた。


 「ごめんね。今......楽にしてあげるから」


 メリーは、奇形の化け物に抱き着いた。少しでも残った姉を感じるように。

 メリーの行動で、さらに蛇が出て来てメリーを襲う。


 だが、その蛇の牙はメリーには届かなかった。

 なぜか一瞬にして、奇形の化け物と蛇は石に変わった。


 「なんで、『石化』が!?」


 目の前の光景は異常だった。私が消したはずの『石化』をメリーはなぜか使えていた。

 

 「お姉ちゃん、ごめんね」


 その言葉を聞いて安心したかのように、石になった奇形の化け物は、ガラガラと崩れ落ち、やがて砂に変わった。

 メリーが流す涙に濡れて、砂はキラキラと光っては風にのって消えていった。

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