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人に変わるのです!!

 どこかの世界のどこかの部屋。

 人よりも大きい水晶に、映し出されている映像は、倒れている勇者達だった。

 その映像に面白くないと声を上げたのは、この世界の神と名乗る人物。ミーニャだ。


 「む~☆面白くないにゃあ♥やっぱり~♪雑魚勇者五万人じゃ駄目だったね☆......じゃあ次は~♪もっと面白い勇者を連れてこよう♥」


 その場でクルクル回りながら楽しそうに笑う。

 そして、切り替わった水晶の映像は、マナの楽しそうな姿が映っていた。


 新しい仲間と共に、生き残ったマナを見て、言葉を吐き出す。


 「待っててね♪きっと面白くなるから☆」


 そう、愉しそうな笑みを浮かべて......そして、部屋から居なくなった。

 その後、ミーニャがどこに行ったのかは、誰も知らない。


 しかし、その後、日本各地で神隠しの事件が起こり、世間を騒がせた。

 


◆◇◆◇◆◇



 あの日の夜は、カナさんの話で盛り上がっていた。

 どうやらカナさんは、かなりの変わり者で、みんなは振り回されてばかりだったと言う。


 だけど、すごく強く、すごく優しく、何より一緒にいて楽しかったそうだ。

 私も、一度会ってみたいな。なんて思ってしまうほどに魅力的な人みたいだ。


 みんなが楽しそうに、そして、昔を懐かしむように語ってくれた。泣ける話も、笑える話も、心温まる話も......カナさんがどれだけこの五人に愛されていたのか、それが一番良く分かった。


 夜が終わるまで、思い出話に花を咲かせていた。

 楽しい時間が過ぎるのは早いもので、もう朝日が昇り窓から優しい光が差している。

 ラスボスの城という事で、大きくて可愛くない鳥のさえずりも聞こえ、朝が来たことを知らせているようだった。


 まだ聞けていない大切な思い出は、次の機会に聞くことにしよう。楽しみはとっておかないとね。


 そして、気付いた事が一つ。

 どうやら、ラスボスは寝る必要は無いみたいで眠気は全く無かった。それどころか、元気が溢れていた。


 朝日に当り、グッと伸びをする。なんかこうすると朝が来たって感じで気持ちいい。

 ふと、思い付いたことを口に出した。


 「そうだ、人の街へ行こう!!」


 やっぱり、異世界に来たら、異世界の街を見ないとね。興味もあるし。


 散歩に行こう、みたいな軽さでそんな事を言ってみたが。勿論、そんな事を突然言ったら......


 「了解しました。すぐに準備致します」


 嫌がるよね......え!?

 予想していた答えとは真逆の反応が帰って来たことに驚く。


 「嫌がらないの? てゆーか、まず驚いてよ! 私が馬鹿みたいじゃない」


 訴えてはみるが、「それは普通ですよ?」とばかりの反応が返される。

 やはり、カナさんの影響でそういう事に慣れているのだろうか? と、考えているとローエンはさっさと準備に行ってしまった。


 「セツナは、人の街へ行ってみたいな~。お姉ちゃんはどう?」

 「マナ様と一緒なら、どこでも行く」


 セツナとリッカの嬉しい答えが聞こえてきた。

 何だか、子を持つ親の気持ちが少し分かったような気がする。これでもし、反対されてたら心が折れそう。


 「それじゃあ、みんなで行こうか......はっ!!」


 1つ、重大な事件が発生した。

 デリドラって人の街へ行けないんじゃないか? という疑問だ。見た目がドラゴンだから、人の街で怖がられるんじゃないかと


 「ごめん、デリドラ。私が考え不足で......」


 そう言ってデリドラを向くと、「ん??」みたいな顔をしていた。首を傾けている所が可愛らしい。いやいや、今はどうでもいい。


 「主様。我は『人化(じんか)』できるドラゴンですぞ。それに、シーナも出来るであろう」

 「出来ますよ~。......ほら」


 そう言って、シーナは『人化』をしたのだが、まぁ変わった所は羽の部分だけで、ほぼいつものシーナと変わりが無かった。


 それより、今は、デリドラの『人化』が気になる。どうやって人の姿になるのだろう? 私の想像力をフルに使っても、想像出来ない。


 そして、「ぬん!!」という低い声と共に、デリドラの『人化』が始まる。光を反射する鱗は、キラキラと光り輝き、その眩しさに目を細める。

 まるで、ポケットに入る大きさのボールに、無理矢理詰め込まれたモンスター達の進化を見ているようだ。


 そして、段々と光は収縮していき、人の大きさのところで収縮は止まる。

 光の中から現れたのは......さらさらの銀髪で、キラキラとした眩しい笑顔を振り撒く、細身のイケメン。


 「「「「誰!?」」」」


 そこに居た、全ての四人の言葉が重なった。


 「我だよ、我」


 なんだよ、我我詐欺(われわれさぎ)かよ!! 何それ、別人に変わった? もしかして中の人が出てきた?


 デリドラの変わりように、時間が止まったように全員が固まっている。

 あれ? セツナ、能力使った?


 「ね、ねぇ。デリドラ」

 「何でしょうか、主様」

 「えっと、いつもその姿で居られないの?」

 「この状態は、我の体を無理矢理この体のサイズにしているので、全身が締め付けられている感じがして、ちょっと苦しいんです」


 デリドラが自分の体を抱き締めながら、そんな事を言った。

 その姿でその仕草は、ちょっと反則。中身がデリドラじゃ無かったら、ドキッとしてしまうだろう。


 すると、いつの間にか準備を終えたローエンが隣に立っていた。そして、手に持っている物を私の手に落としてくれた。


 「マナ様、この指輪をどうぞ」


 別に、ローエンが私にプロポーズしてきた訳ではない。

 この指輪は、このゲームでは、道具箱(アイテムボックス)の役割を果たしてくれる。


―――――――――――――――――――――――――

 『宝物の指輪』――――様々なアイテムをしまっておくことができる指輪。お金、装備、どうぐ、という種類を指輪が勝手にわけてくれる。入る容量は、装備者のレベルに依存する。

―――――――――――――――――――――――――

 勿論、ラスボスはレベルなんてカンストしてるので、心配ないだろう。


 そして、これがひとつあれば、冒険も旅行も手ぶらで行くことが出来るという超便利アイテム。

 指輪の中身には、必要なだけのお金と、ちょっとした着替え、あとは小物。ローエンが準備してくれただけあって、必要な物だけでなく、必要になりそうな物まで予想されてしっかりと入っていた。


 さて、準備も出来たことだし

 

 「よし、じゃあ、みんなで行こう!!」


 ......って言っても、どうやって行こうか。

 まぁ、一つしか方法が無いけど。


 ここから人がいる街まで最短でも、三日かかる距離だ。まぁ、私が本気で走れば、三分で着くけど......それじゃつまらないし。


 という事で私が頼んだ人物。それは......


 「ローエンお願い。場所は、『始まりの街』で」


 と、私がそう言った時に、珍しくローエンが驚いていた。さっきのデリドラの人化の時も驚いてたけど。

 とりあえずローエンが驚くのは珍しい。


 「マナ様は、私の能力を知っていたのですか。流石ですね」


 勿論、とばかりに私は頷き返す。

 私は五年間このゲームをやっているゲーマーだよ。それぐらいは分かっている。


 ローエンの能力。影渡シャドーウォーク。影の中ならどこでも行くことが出来る。それに、影の中の世界に色々なものを詰め込んまり取り出すことも出来る。チートと言うよりは便利と言った方が当てはまる能力だ。

 もう1つローエンには、能力があるけど、それはまたの機会に説明しよう。


 「それでは、皆さん。掴まって下さい」


 その合図で、ローエンの肩を掴む。

 意外とガッチリしてるな。と思いながらも、影の中へと沈んでいく。

 足からゆっくりと、地面に埋まっていくように見えるけど、実際は影の中に入っているだけ......それも、普通ならおかしいことだけど。


 「街の中の目立たない所へ出ます。マナ様には少し不快な場所ですが、お許し下さい」

 「うん、大丈夫だよ」


 「ありがとうございます」と、その言葉と共に地上へと出る。

 ラスボスの城から、約10万㎞以上離れた『始まりの街』へと足を踏み入れる。

 ここは、本来ならば、ラスボスなんて来るはずのない街。ラスボスの城から最も離れた場所だ。


 一瞬で着いたその街の風景は、ちょっと薄暗い裏路地から始まった。


 近くにいるイケメンのデリドラに違和感を感じながらも、異世界の街に来たことに興奮を隠せない。


 だが、そこで裏路地での必須イベントが始まる。


 「なぁ、そこの可愛い子達。俺達と遊ばない?」


 異世界のチンピラ集団が、そこにはズラズラと立っていた。赤、青、黄と髪の色がカラフルで面白い。昔のチンピラみたいだ。


 だけど、そんなチンピラ達は、すぐに倒されるだろう。私の周りの仲間は皆強いし......と、そんなことを考えていたとき、


 「失せろ、ゴミ共。マナ様の視界内に入るな」


 ......ん!?

 いきなり豹変(ひょうへん)したシーナが、そんな暴言を吐いた。だが表情は変わらずいつもの、のほほんとした笑顔のままだ。


 え!? シーナってそんなキャラだったけ?

 増えた一つの疑問と共に異世界で二度目のイベントが始まりを告げた。

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