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闇の世界です!!

 ガタゴトと揺れていた馬車は止まり、ついに目的の場所へとたどり着いた。


 「さぁ、着いたよ。ようこそ、僕の研究所へ」


 マッドが大きく手を広げ、自慢するかのようにその建物を指す。

 自慢するだけあって、マッドの研究所はかなりの大きさを持っている。その建物内には数多くの設備があり、リッカやセツナが見ても分からないような物が多く置いてあった。


 「なにこれ? 涼しい風が出てる」

 「あぁ、それは送風機と言って、魔石を動力元にして高速で羽を回す機械なんだ。そして羽の素材に、雪鳥を使うことで涼しい風が出るようになってる」

 「すごいね、お姉ちゃん。セツナこんなの始めて見たよ」


 ぴょんぴょんと、リッカの腕を掴みながら跳ねるセツナ。そして、この部屋の中には、まだまだ二人の知らない物が多くある。


 「この部屋の物は、全部マッドさんが作った物なの?」


 そう聞かれたマッドは、誰にも分からないぐらいの一瞬、闇のような暗い目で機械を見てから質問に答える。


 「いやいや、僕じゃこんなの作れないよ。これを作ったのは、あそこに見える、都市の真ん中にある大きな建物に居る人だよ」


 マッドが指差すその先の窓から見えたのは、この都市で一番大きな建物。この都市に着く前にマッドが説明してくれた、場所だ。


 「へぇ~、すごい人が、あそこに居るんだね」

 「まぁ、あそこは研究者たちの憧れさ。誰もが行けるような場所じゃないよ」


 諦めたように笑うマッドだったが、その目だけは、諦められないと言ったように建物を睨んでいた。


 「よし、じゃあ。早速、治療を始めるとしよう。リッカちゃんとセツナちゃんは、ちょっと待っててくれ。お母さんは治してあげるから」

 「「はーい」」

 「リー、ミー。リッカちゃんとセツナちゃんをよろしくね。僕は治療室にに移るから。あと、家を案内してあげて」

 「はい、分かりました」


 さっさと、子供達は部屋から出ていき、その後に楽しげな笑い声が聞こえる。


 「随分と仲良くなりましたよね。リーとミーは、人見知りだったのですが......良かったです」

 「そうですね。娘に友達が出来て良かったです」

 「......それでは、行きましょうか」

 「......はい」


 大人の二人も、その部屋から出ていき、治療室へと向かう。頑丈そうな鉄の扉の上に治療室と書いてある掛札(かけふだ)がある。


 扉に手を掛けると、ギィーと金属の錆び付いたような音が響いた。

 その中を見ると、ベットの周りによく分からない機械が多くあり。眩しいぐらいの光っている機械もある。

 

 「ベットの上にどうぞ」

 「はい」


 言われるままに、ベットの上に乗る。


 「それじゃあ、念のため身体を固定させて頂きますね。動かれると僕の手が狂ってしまうので」


 マッドはそう言って、カチカチと腕や足、首をしっかりとベットに固定させる。

 母親は、本当に身動きが取れなくなった。

 その時だった......マッドの雰囲気が豹変したのは......


 「ふぅ~。これでやっと、実験(・・)ができる。あ~あ~良い医者を演じる(・・・)のも疲れるな~」


 マッドは口元を手で覆ってそう言ったが、その指の隙間から白い歯が見えていた。


 「え? どういうこと!?」

 「はぁ~。この状況でまだ、分かんないのかよ。お前らは騙されたんだよ~。考えても見ろよ、辺境の村出身。その村の可愛い二人の子供。しかも、その唯一の親は病気......実験動物(・・・・)にするにはもってこいじゃないか~。たとえ実験失敗して、死んでも誰にも分からないだろ~」


 マッドは醜く顔を歪めて真実を話す。


 「改めて、ようこそ。僕の実験場(・・・)へ。君はもう死んじゃうだろうから......あの二人を実験に使わせて貰うよ~」


 後ろへ振り返り手をプラプラと振りながら、部屋を出ていこうとするマッドに、突き付けられた真実に唖然とする母親。

 動こうにも、ベットに固定されていて動くことが出来ない。


 「待て!! 娘に何をするつもりだ!!」


 マッドは、口を歪に歪ませて嫌らしく答えた。


 「実験(・・)ですよ。ほら、人間がネズミやブタを使ってやるような......そんな実験ですよ」

 「やめろ!! 私ならどうなってもいい!! だけど、娘には......」

 「ハハハハハハ。嫌ですよ」


 白いマントを翻して、部屋を出ていくマッドに母親が何を言っても、もう意味がなかった。

 そして、重く頑丈な扉が、ガタンッと閉められた。



☆★☆★☆



 「ねぇ、ミーちゃん。私達はどこに向かってるの?」


 研究所に入って、お母さんと別れたあの部屋から、かなり長い時間移動している。そして、今、地下に向かう階段を降りている途中だ。


 「外で、遊ぶと近所迷惑だから、この研究所の下にある少し広い場所に行こうかなって思って」

 「そうなの?......何か薄暗くて怖いなって思ったから」

 「お姉ちゃんは、怖がりさんだからねー」

 「む~。セツナやめて、怒こるよ」


 逃げるように、走って階段を下っていったセツナに、「もう、走ると危ないよ~」といって追いかけていくリッカ。


 先に走っていったセツナが、その広場に着いた。


 「おー、確かに広いね」

 「そうだね。研究所の下にこんな場所を作ってるなんて......」


 そこは、子供四人が遊ぶには十分な大きさの、広場だった。


 「ここは~マッドが実験に使う場所。だから、こんなに広い」


 リーがそう言うと共に、ガタンッと、広場の入り口をミーが閉めた音がした。この広場には、出入口が一つしかなく、ミーが閉めた事によって出られなくなった。


 「......実験?」

 「そう、こういう実験・・・・・・


 ミーが急にナイフを取りだし......リーのお腹にそのナイフを刺した。


 「え!? ミー何やってるの!?」


 切られたリーの体から真っ赤な液体が流れ出す。


 「あぅう......痛......」


 その場にうずくまるリーに、ミーはさらにナイフを突き付ける。リーの背中に深々とナイフが刺さり、服に赤い染みを作る。


 「ミーやめて!! リーが死んじゃう!!」


 リッカの必死の叫びも、耳に届かず、またグサッと傷を増やす。


 「リッカちゃん。これは、姉さんの実験じゃなくて......君達の実験なんだよ」


 不気味に笑いながら、返り血を浴びて手が真っ赤に染まったミーは、理解できないことを言い放つ。


 そして、今度はリーのお腹にナイフを突き立てる。

 血によって濡れたナイフがぐちゃっと嫌な音を立てて刺さる。

 そんな時、リーが何かを言った。


 「ミー......も、もっと...して......」


 まるで、興奮したように息を荒くしながら、頬を紅く染め、理解できないことを言うリー。


 「もぅ、姉さんの欲しがり」


 そう言ったミーは、リーのお腹に刺さったままのナイフをぐちゃぐちゃと横にかき混ぜるように動かした。


 「あっ...ぐ......ん......はぁ、はぁ......気持ち...いいよ......ミー」


 現実離れしたこの光景に、言葉を出すことが出来ないリッカとセツナ。その異様な光景を目にしっかりと納めながらも、止めることが出来ない。

 なぜなら、刺されているはずのリーが本当に気持ち良さそうに声を上げるからだ。


 「ん......ミー...もっと...」

 「姉さん、もうそろそろ能力使って?」

 「ふっ...わ...ん...分かった」


 もう、肌の色が明らかに白くなってきているリーが、セツナを指差し、言葉を放つ。


 「能力発動......『一心同体』」


 そう言った瞬間。

 セツナがお腹を抱えて、うずくまった。


 「は、痛い...が...痛い、痛い痛い」


 ギリギリと音が出るぐらいに歯を食い縛り、体がガクガクと震えている。実際に怪我をしているわけではないのに、お腹を力強く握り締めている。

 その額からポタポタと冷や汗が流れては、落ちていく。


 「セツナ、どうしたの!?」

 「お、お...ねえ...ちゃん......」


 苦しそうに息をしながら、何とか言葉を絞り出すセツナに、どうすることも出来ずに慌てるリッカ。


 それは、能力『一心同体』―――自分と指定した相手の痛みを共有するという能力。本来ならば、何の役にも立たない能力だが、痛みを快感だと感じるリーだからこそ、こんな風に能力が使える。


 そして......


 「姉さん、もう一回いくよ」

 「うん...きて...」


 グサッ、ぐちゃっぐちゃ


 「あ...アぁぁあァぁあアぁ......」


 声にならない叫びをあげて、セツナがパタリと倒れて動かなくなった。


 「セツナ...ねぇセツナ!!」


 リッカが揺すっても、ピクッピクッと痙攣するだけで、起きない。


 「さぁて、姉さん。次は......」

 「...分かった」


 そして......リーの指が、リッカに指される。


 「能力発動......『一心同体』」


 背中が刺される痛みが、お腹を(えぐ)られる痛みが、傷口を掻き回される痛みが一気にリッカに襲いかかる。

 当然、耐えきれる訳もなく......リッカの脳が強制的に意識を遮断した。

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