幸せ者です!!
「お姉ちゃん? どうしたの?」
「......マナ様に何も言わないで来ちゃったけど、良かったの?」
「だって、セツナ達の話をしたらマナ様が、一緒に行くって言うでしょ......ほら、早くお母さんの所に行くよ。お姉ちゃん」
「......うん」
二人で仲良く手を繋いで歩く姿は、誰がどう見ても、仲の良い姉妹だった。その二人のどちらも国を滅ぼせる力を持っているとは誰も、予想出来ないだろう。
現在、マナの元から離れたリッカとセツナの二人は、自分達の故郷に帰っていた。
二人の故郷『デール村』は、ラスボスの城から遥か遠くの辺境の村で、絹や綿などを生産していて、それを使い特徴的な衣服―――洋服を作り出した最初の村でもある。
それほど大きい村でも無いが、場所が辺境にあるため、村人達のレベルも普通と比べると相当高く、森などに出て、狩りなどをして生活しているような村だ。
「あ、お姉ちゃん。見えてきたよ~」
「うん、そうだね。ここに来るのも久しぶりだね......」
リッカとセツナがやって来たのは、『デール村』の少し外れた場所にある、小高い丘の上。
色とりどりの花が埋め尽くす、その丘の先には......少し大きな石が花に囲まれるように置かれていた。
「一年ぶりだね......お母さん」
石に向かって話しかけるセツナは、辛そうに顔を歪めていた。
そんな風に、今にも泣き出しそうなセツナの手をギュッと握るリッカ。
「セツナ......お母さんの前では泣かないって約束したでしょ」
「でも......お姉ちゃん」
リッカはさらに、握る手の力を強くする。
「私だって分かってる。でも、私達の悲しんでる姿を、お母さんに見せたくない......私達の元気な姿をお母さんに、見せてあげたい」
小高い丘に吹き抜ける風は、優しく二人の頭を撫でる。
対立する二人の可愛い娘を仲直りさせる母のように......
「......お母さん?」
返事は帰ってこない。だけど、すぐそこに居るような、そんな気がした。
☆★☆★☆
これは、リッカとセツナがまだ、カナと出会う前の話。二人の母親が亡くなった原因の物語。そして......悲劇の物語。
辺境の村に、とても仲良しな姉妹がいた。だが、その姉妹の母親は、未知の病にかかっていた。
「お母さん、今日の調子はどう?」
「ご飯食べれる?」
「リッカ、セツナ。ありがとう。今日は調子もいいから、お母さんが料理つくってあげるよ~」
そんな、言葉を言っている二人の母親は......どう見ても元気では無かった。
娘の前では、元気に振る舞う。そんな優しい嘘だ。
「大丈夫だよ、お母さんは安静にしてて。私、最近料理にも馴れてきたし、心配することもないよ」
「そうそう。セツナは、お母さんが元気になるまで、頑張るからね。その後に甘えさせてね」
そんな、二人の娘の言葉に、心の中で何度も何度も謝る母。どれだけ、二人に迷惑をかけているかと、何度も自分を責める毎日の繰り返し。
だけど、そんな時だからこそ、娘がいつも側に居てくれるからこそ、ちょっとした娘の成長を見逃す事無く、見ていられる。
「リッカの料理も確かに上手くなってきたし、セツナも大人に混ざって狩りに行ってるんでしょ? お母さんなんて...」
いらない......とそんな言葉が出る前に
「「ダメ!!」」
「お母さんは、セツナが絶対治してあげるんだから」
「私だって、お母さんを治してあげる。だから......そんな事言わないで」
今にも泣き出しそうな娘を見た母親は、また自分を責める。今、言った言葉だって、可愛い娘達に否定して欲しくて言った言葉だ。
「リッカ、セツナ。ちょっとこっちに来てくれない?」
「......うん」
「うん」
母親は、二人が目の前に着たとき、寝ていたベットから飛び出すように、二人の娘を抱き締めた。
「お、お母さん!?」
「どうしたの?」
「こんなお母さんで......ごめんね」
そんな母親の目からは、涙が溢れていた。何もしてあげられない娘に謝る。
後悔ばかりが頭に浮かぶ。娘の成長を肌で感じていたかったと。娘が悪いことをしたら怒って、凄いことをしたら誉めて、一緒に外で遊んだり、料理を教えてあげたり、二人の反抗期を体験して悩んだり、掃除、洗濯で毎日が忙しかったり......そんな、そんな普通の毎日を......娘と同じ時間を一緒に生きたかった。
「私、お母さん大好きだよ」
「セツナも、大好き」
迷いながらも弱く抱き締め返してくれる、二人の娘の行動に、その言葉に涙が止まらない。
「お母さんもリッカとセツナを誰よりも愛してる」
後悔だったそんな毎日が、辛かった日々がたった一言で報われたような気がした。
暖かい二人の体温が、まだ離れたくないと語っていた。




