夢のまた夢で...です!!
どこかの世界のどこかの場所。
捕らえられたカナと、それを嬉しそうに観察するミーニャの姿がそこにはあった。
やはり、部屋の真ん中には、大きな水晶が浮かんでいて、その中にマナの姿が写し出されている。
そして今、写っているのは、マナとギルドマスターが話している場面。
「ねぇ☆カ~ナ~ちゃん♥君は~マナちゃんを恨んでないの♪」
ミーニャから唐突に投げ掛けられた、質問に律儀にも答えるカナ。
「ミーニャ。君は知っているんだろう......私は偽物。あの子は本物だって......偽物の私は、消えるのが存在意義みたいなものだろう?」
「そうかもね☆ん~♥もうそんなに時間も無いし♪♪マナちゃんに与える試練は~次で最後にしよう♥」
水晶を見つめているミーニャの顔が、一瞬だけ悲しそうに見えたのは、気のせいだったのだろうか、すぐにいつものように口を歪ませ、そして嗤う。
「ミーニャ。君に後悔は無いか?」
カナの口から出たそんな質問に、長い沈黙が訪れる。
少しの間の後、ミーニャがゆっくりとカナの方に振り返り、その答えを告げる。
「ミーニャの人生は♪全てが後悔にゃ~♥」
「なら!! 今すぐ、こんなことやめればいい!!」
「カナちゃん☆ここから引き返す事は許されない★ミーニャの罪はもう消えないから♪」
そう言って、何かを悟ったように嗤うミーニャ。
「でもね♪カナちゃん♥ミーニャは君達にとって『悪』でいい☆でも人類にとって『正義』でありたいの♪」
その言葉を残して、部屋を出ていこうとするミーニャに、カナが必死に呼び止めようとする。
「私は、死んでもいい。だから、マナを解放させてやってくれ」
「......ダーメ♥この世界はまだ☆夢のまた夢の物語なのだから♪」
カナの思いは届かない。
ミーニャが出ていった後、その部屋には、水晶に写るマナの姿を、ただただ見ていることしか出来ずに、涙を流している少女の姿が残っていた。
☆★☆★☆
「マナちゃん......この世界がもし、ゲームなのだとしたら、何の目的があって作られたと思う?」
「目的か......目的.....何か成し遂げたかった事...ミーニャがやりたい事......いや、やらなければいけない事は......このゲームをクリアさせる事?」
ゲームクリアという言葉にギルドマスターは食い付く。
「え、マナちゃん。もしかして、この世界のクリア方法を知ってるの!? 教えてくれないか?」
「えっと、ゲームの時のクリア方法は二つだった。一つは―――ラスボスを倒すこと。そして、二つ目は―――世界樹の攻略。たげど、二つ目はこの世界がゲームのままだとしたら諦めた方がいい」
私も、勇者の時にラスボスを倒すことを、一旦休んで世界樹の攻略に挑んだ事がある。でも、すぐに諦めた。
それは、攻略が難しいとかそう言う事じゃなく。
攻略以前の話だった。
まず、その世界樹がどこにあるか分からなかった。ゲームのマップに写る場所を全て探しても見つからなかったのだ。
存在しない世界樹をどうやって攻略すればいいのだ、という話だ。
「ん? 世界樹なんて言葉、初めて聞いたぞ。世界樹なんてこの世界にあるのか?」
「今は、まだ分からない」
「まだって事は、何か手掛かりがあるかも知れないって事か?」
流石に、ギルドマスターをやってる事だけはある。話が早くてすごく助かる。
「王都の大図書館に、Sランク冒険者しか見ることの出来ない場所がある。だから私は、早くSランク冒険者に......」
今、気付いた事なんだけど、ギルドマスターってSランク冒険者じゃなかった? ギルドマスターに見てきてもらえば、解決するんじゃ......
「ねぇ、ギルドマスター。一つお願いがあるんだけどいい?」
私の、そんな言葉に一切の疑問も持たずに、返答するギルドマスター。
「僕が出来る事なら、何でもいいよ」
「じゃあ、王都の大図書館に「あぁ、それは無理だよ」」
喰い気味に、私の言葉を遮ったギルドマスターだったが、それには、しっかりとした理由があった。
「僕は、この街から出られないんだよ。そういう決まりがあるからね」
「え? 何それ......」
ゲームの時には聞いたこともない、そんなルールがこの世界にあるの?
「ギルドマスターは、統治する街での最高戦力だ。だから、その街が危険にさらされれば、その危険を排除しなければならないって言う規則だ。街が危険なのに、ギルドマスターがどっか行ってて街が壊滅しましたなんて事を避ける為だ。あの魔王がきたときも、僕は規則によって逃げることが出来なかった...まぁ、あの時逃げるつもりなんて少しも無かったけど......と、そういう事で僕はこの街から外に行けないんだ」
「それじゃあ仕方ない......か」
やはり、残された道は、私がSランク冒険者になる事だけ。人々に認められる成果を残し、誰も達成したことのない試練をクリアする。
なんだ......私の趣味と似ているじゃないか。
誰もクリア出来なかったクソゲーをクリアし、そのゲームをクリア可能なゲームにするという成果を残す。
やるべき事は、この世界の方が圧倒的に多い。だけど、それがゲームの中の話なら......私の得意分野だ。
「ギルドマスター。私が最速でSランク冒険者になるにはどうすればいい?」
「......本来ならば、教えたくない事なんだがな」
「大丈夫。私はどんな試練でも乗り越える」
私の言葉に、ギルドマスターの方が折れた。
「最近、新しいダンジョンが出現したらしい。場所は、ここからかなり離れた、『キーベルグ』というかなり大きな都市の近くだそうだ。今から馬車で出発したとしても、二週間はかかる距離だが」
都市近くのダンジョンか、その都市も気になるけど、今は少しでも早く、カナさんの元へ行かないと。
「移動方法はあるから、大丈夫。それで、そのダンジョンをクリアすればSランク冒険者になれるの?」
「まぁ、そうなんだが......どうやらそのダンジョンがおかしいらしい」
「おかしい? 何か事故でもあったの?」
「事故といえば事故かも知れないな......まぁ、どうやらそのダンジョンは5階層ぐらいしか無いそうだ。普通のダンジョンなら、最低でも10階層はあるものなのだが」
最低で10階層か.....そういえば、この目の前にいるギルドマスターは100階層のダンジョンを一人でクリアしてるのだから、すごいと言うべきだろう。
「たった5階層なら、誰かがもうクリアしたんじゃ無いの?」
それだけの階層しかないなら、強い冒険者がクリアしていてもおかしくはないはず。
「そこで、もう一つの事故なんだが......誰も1階層をクリア出来て無いみたいなんだ。名の知れたAランク冒険者が、そのダンジョンに挑んで帰って来なかったという噂もあるぐらいだ」
「つまり、1階層から強いボスが待ち構えてるって事?」
「多分、そうだろう。今、かなりの注目を集めているそのダンジョンを単独でクリア出来たならば、君はSランク冒険者として、認定されるだろう......だけど、気を付けてくれ。ダンジョンには、どんな魔物が住んでいるか分からないからね」
単独で......か。
私が勇者として、活動してた時はいつも一人だったけど。ラスボスになった今、皆がいて私は一人じゃなかった。
頼りっぱなしのラスボスには、なりたくないからね。今回でそれを証明して、綺麗に、そして、かっこよく......Sランク冒険者になってやる!!
そんな決意を胸に、マナはダンジョンへと向かう。
誰も突破出来ない、最凶のダンジョンへと、足を進める。




