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勇者ギルドマスターです!!

 『汚染』されていく世界に立ち向かう"勇者"が居た。その者は、街を救うため、魔王に立ち向かう。

 例え、その者の姿がどんなに醜く歪んでいたとしても、変わらない愛を注ぐ、ウサギの亜人と共に......


 「アイラ、無理はするなよ?」

 「ギルドマスターこそ。無茶して死んだら、私は二度と許しませんから」

 「アイラに嫌われるのは、死ぬより怖いな......それじゃあ、頑張らないとな」

 「はい、そうですね」


 そんな、二人の見つめる先に居るのは、魔王ステイン。

 『環境汚染』を体現した魔王はおぞましく、そして、桁違いに強い。普通の冒険者なら、近付くことすら出来ずに死が訪れる。


 しかし、ギルドマスターの能力『耐性・免疫』が、魔王が放つ状態異常攻撃を無効にし、さらに、ギルドマスターをパワーアップさせていた。


 「私の能力なら、どこまでも強くなるギルドマスターと肩を並べて戦える。改めて、この能力に感謝ですね」


 アイラの口から出たそれは、独り言。今、アイラがここに立てているのは、ギルドマスターの能力をアイラの能力でコピーしているからだ。


 アイラの能力は、『友人の心(フレンズ)』と言うもの。

 その能力は特殊で、一定期間以上、同じ場所に居た者の能力を使えるという能力。他人の能力を完全に使える訳では無く、同じ人と同じ場所にいる時間が長ければ長いほど、オリジナルの能力に近い力が発揮できるという能力だ。


 だからこそ、アイラはギルドの受付をすることで、ギルドにやって来る強い冒険者と、同じ能力を手に入れる事が出来た。

 そして、ギルドマスターの『耐性・免疫』という強力な能力も完全ではないにしろ手に入れていた。


 「ハハッ、アイラはすぐに僕を追い抜くさ」


 独り言が聞こえていたのか、ギルドマスターは、笑いながら答えた。

 そして、自分の体の何十倍もある魔王を見上げ、問い掛ける。


 「さて......これ以上。僕達の街(・・・・)を汚すなら、早々に退場して貰うぞ?」

 『ほぅ、我に挑む汝は、どうやら異界の勇者。ならば(・・・)、我は汝に罰を与える!!』


 魔王は、前に倒れ掛かってきた。それだけで20メートルの巨体を持つ魔王にしてみれば充分な攻撃だった。

 ギルドマスターが避ければ、街が死に、受け止めようとすればギルドマスターがまるで、人に踏みつけられる蟻のように抵抗も無く潰れる。


 そう......ギルドマスターだけ(・・)だった場合だ。


 「能力『友人の心(フレンズ)』。『耐性・免疫』『限界突破』『ステータス強化』『ステータス激化』『ステータス狂化』『豪腕』『豪脚』『硬化』『再生』そして、『巨人殺し(ジャイアントキリング)』発動」


 魔王から見れば、米粒程の人間......いや、亜人がどうしようと止められるものでは無いだろう。

 だが、倒れ掛かる魔王に対して、逃げるどころか、突っ込んでいくアイラ。


 アイラがその小さな拳を振り終わった直後。吹っ飛んだのは......魔王だった。

 20メートルの巨体が空に飛ぶという、嘘みたいな光景が広がる。

 魔王の周りに纏われていたゴミも、その衝撃により半分以上が削れていた。


 それは、アイラが発動した能力の内の一つ『巨人殺し(ジャイアントキリング)』の能力のせいだ。

 敵対した相手の大きさを関係なくするという能力だが、大きさ(・・・)が関係なくなるだけで、重さ(・・)は変わらないという欠点がある。


 それでも、アイラが魔王を吹き飛ばせたのは、大きな代償を払っているからだ。どんな能力にも普通は(・・・)、欠点や代償を支払わなければならない。


 ステータス強化の能力を三つ同時に使ったアイラは、あの時のギルドマスターと同様に、ステータスが存在しない状態にまで弱っていた。

 『豪腕』『豪脚』『硬化』により、手足、皮膚にダメージが大きく、動ける状態では無くなっていた。それでも、『再生』によって少しずつ治ってはいるものの、後数時間は動けない状態。だが、『耐性・免疫』で着実に回復している。


 そこまで、状態が悪化しているのは、アイラの能力である『友人の心(フレンズ)』の代償のせいである。

 能力を使った時の代償が大きくなるという代償により、アイラは傷付いていた。


 「ハハッ、マジかよ......」


 アイラによって半分抉れた魔王を見ていたギルドマスターの口からそんな言葉がこぼれる。

 ゴミを纏って隠していた本当の姿―――それは、巨大なスライム。


 かつて、ギルドマスターを捕食し、今も治らない傷を付けたスライムだった。

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