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魔王とラスボスです!!

 魔王は今も街を汚染しながらゆっくりと近付いてきている。わざと遅く移動することで人間の恐怖を煽っているようにも見える。


 早くアレを止めないと、この街は数分後に死ぬ。そうなる前に......


 「ローエン。前みたいにアレの影から私を「ダメです」...」


 私の言葉の途中から否定を口にしたローエン。その顔は、真剣そのものだ。


 「誰かが止めないと、また、あの子みたいな犠牲者がでる。だから私の能力で「ダメです!!」」


 さっきよりも強い否定の言葉がローエンの口から飛び出した。


 「マナ様、あなたの能力では、あの魔王を倒せない。そんな事は、ご自身が一番よく分かっているでしょう?」


 確かにそうかもしれないと感じる。図星を突かれ、なにも言い返す事が出来ない。

 だけど


 「まだ、やってみないと分からないじゃない!! 汚染される前に私が能力を発動させれば」


 「無理です。マナ様が助けたあの少女は、魔王に近付いただけで死にかけたのです。そんなものに触れでもしたら、あなたと言えども死は(まぬが)れません」


 そんな意見の対立に、私の頭に血が昇る。

 ローエンが私を心配して言ってるのは分かってる。でも、苦しむ人を、家族を失って泣き叫ぶ誰かを、ただ指をくわえて見てるだげなんて事は出来ない!!


 「ローエンがやらないなら、私は、一人で行く。私にかかる汚染を消しながら魔王に...」


 パチン!!


 そんな乾いた音と頬に伝わる痛みが、私の思考を空白に染めた。


 「手を上げた非礼は、後で償います。ですが、マナ様。あなたは一人では無いんです。しっかりと周りに目を向けて下さい」


 言われた通りに、目を向けて見ると......

 心配そうに私を見つめる、リッカとセツナ。そして、誰よりも辛そうな目をしているローエン。


 「勝てない敵なら、逃げてもいいのです。無理に戦い、命を落とすよりも、冷静に判断し、倒せる誰かが現れるのを待てばいいのです」


 ローエンが言ったのは、戦うことを諦めて逃げろと言うことだった。ラスボスは最強だ、だけどそんな最強でも逃げてもいいのか? 誰かを見捨て、自分が助かる道を選んでも......ダメだ、やっぱり私は納得出来ない。


 1%でも勝てる可能性があるのなら......私は戦う。


 私がそう決意したそんな時だった。


 「そうそう、冒険者は一人じゃ無いんだ。時には助け合いが必要なんだぞ。ほら、ここは僕に任せてくれよ」


 ギルドの奥から現れたギルドマスターが、私達の横を通りすぎ、軽く手をプラプラと振りながら、魔王へと向かっていく。


 まだ魔王は、近く無いのに、私達の立つ地面の汚染が始まる。足を踏み出す度に地面が、グチャリと嫌な音を立てて足の裏へとへばりつく。


 そんな、汚染の中を悠々と進むギルドマスター。


 「さて、久しぶりに”勇者”として活躍するかな」


 そう言ったギルドマスターの姿は、一歩踏み出す度に、醜く歪んでいく。見えている皮膚がズルリと落ち、肉が露見(ろけん)する。

 着ていたはずの服も、ボロボロと崩れ落ちる。


 しかし、ギルドマスターの体は、まるで、さっきの姿を逆再生でもするかのように治っていく。

 ぐちゃぐちゃになった皮膚が再生し、服が無いギルドマスターの本当の姿が私の目に写る。


 「なんなの......その姿......」


 いつもの豚のコスプレから出てきたのは、想像も出来ないほど酷い姿だった。

 まるで、まだ汚染されているかのように見える肌。所々、肉が剥き出しになり、酷い火傷を負ったようにボロボロの肌。


 「この姿を見られちゃうと、女の子にモテ無くなるんだよな~。まぁ、僕にはアイラが居るからいいか」


 ギルドマスターの視線の先には、ギルドから出てきたアイラさんの姿があった。


 「いえ、私はギルドマスターのものでは無いですよ?」

 「......フェ!?」


 と、魔王が来ていると言うのに気が抜けるような、そんな会話をしているギルドマスター。

 そして、いつも豚のコスプレにより隠れていた頭には、黒色の髪が生えていた。そして、その顔はアジア風の顔立ち。

 この世界で黒色の髪を持つ人は滅多に居ない......


 「日本人......なの?」


 そんな私の疑問に軽く流しながらも答えるギルドマスター。


 「まぁまぁ、そう言う込み入った話は、コレが終わった後に、ゆっくりと......誰も居ない部屋で、二人っきりで話そうじゃないか」


 なぜか親指をグッと立て、何度もぎこちないウィンク繰り返すギルドマスター。

 そこに、いつの間にかギルドマスターの側に立っていたアイラさん。


 「え、ギルドマスター。私とゆうものがありながら、マナさんみたいな可愛い子とイチャイチャするんですか、そうですか」

 「え、ちょ、アイラ。さっき僕のこと突き放したよね!?」

 「ギルドマスター嫌いです」

 「理不尽だ......あぁ、もう!! ごめんなさい、アイラ様。後で何でもするので許して下さい」


 綺麗な土下座だった。汚染で地面がぐちゃぐちゃなのにも関わらず、綺麗な土下座だった。


 「まぁ、いいでしょう。後で色々やらせて貰いますよ」


 そう言って、嬉しそうに微笑みながら、ギルドマスターと同じように前に進むアイラさん。


 そこで、私が見たものは先程と全く同じ光景。

 アイラさんの、姿がボロボロに崩れ、また再生するという奇妙な光景だ。


 「マナさん。後は、私達(・・)に任せてください。この街は私達の思い出の場所ですからね」

 「そうだな、ギルドマスターとしてこの街を守ってやるよ。だから、今は(・・)見ててくれ......後からマナちゃんの力が必要かも知れないからな」


 そう言ってギルドマスターは、魔王の元へ、アイラさんと一緒に歩いていった......

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