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意志を継ぐ者、意志を伝える者です!!

 私の身体は、エリックの戦いの後から、上手く動かなくなっていた。まるで自分の身体じゃないみたいに言うことを聞かない。


 膝がガクガク震え、立っていることすら出来ない。片膝をつくことで何とか座っているような状態。


 「マナ様!! 大丈夫ですか!?」


 崩れ落ちる前にローエンが支えてくれなければ、私はそのまま地面に頭を打っていただろう。


 「ありがとう。ローエン」


 どうして、自分の身体が制御出来ないの? いつもは無意識に......そう、こうやって力を入れて......


 地面に手をついて立ち上がろう力を入れた直後。

 ピシッ、ピシッと、地面にヒビが入る。


 「え?」


 私が軽く力を入れた地面が砕けたのだ。痛みを感じてその手を見ると、血だらけだった。


 「なんで......こんな」


 ふと思い出す。ラスボスの城の地面は、絶対に砕けないように出来ていたはずだと。

 勇者をやっていた時の私が、ラスボスの城を最上階まで昇るのは、めんどくさいからと思って、勇者の最強技を使って床を消し飛ばそうとした。

 本来なら街一つ、跡形もなく消し飛ばすような威力をもつその技だが、勿論、このゲームの技だから何とも言えない欠点がある。


 その問題は、攻撃範囲が広すぎること。それなら欠点じゃないと思うかも知れないが......

 技発動場所から、100キロメートルの範囲で攻撃の判定がある。しかも扇状型に100キロメートルなので、とてつもない範囲攻撃となる。しかも、遠くになればなるほど、威力が上がるというオマケ付き。


 例え、何もない平原で発動しても、遥かその先にある街や国に当たる可能性があるということだ。唯一この技を使えるとしたら、自分よりも上にいる相手にしか使えない。


 上に向かって放てば、街や国に住んでいる民間人を殺しての、強制ゲームオーバーにもならないし、発動すればその威力によって消し飛ばす事が出来るので自分に壊した建物の瓦礫が降ってくるような事もない。


 その事から私は、上に向かって技を放った。剣を振る(ただし、自分に向かって)という変な行動により発動したその技。


 だけど、その床には傷一つ付いていなかった。



 そして今、それほど頑丈な床にヒビが入るほどの力が込められていた事になる。

 それはまさしく、ラスボスの全力の力。


 「ローエン!! 私から離れて!!」


 こんなあり得ない力でローエンを触ったら危ない。触るという行為だけで大怪我させてしまう。


 「マナ様......なぜ」

 「まさか、これもエリックの能力なの?」


 この状態が、エリックのせいだと疑問を浮かべるが


 「いえ、エリックは自分に関する事しか『無視』出来ません」


 ローエンによればその可能性は無いと告げられる。


 じゃあ、何で私の身体は?

 その答えは、突如として響いた声が言った。


 「マナちゃん♥久しぶり♪今回は~☆声だけ登場のミーニャちゃんで~す♥」

 「なっ、ミーニャ!?」


 辺りに姿は見えない。本当に声だけが頭に響いてくる。自称神様なだけあってこんなことも出来るの?


 「では~☆マナちゃんの身体に起こってる♪異変の答えはど~れ♪①能力使いすぎの反動 ②勇者の能力による封印 ③ただの疲労 さぁ、ど~れだ♥」


 ③は無いとして、可能性があるのは①かも知れない。ラスボスの強力な能力に制限が無いのはおかしいと思っていたし。次の日動けない位の反動がなければ使い放題だし、チート過ぎる。


 答えは①の能力の使いすぎだ。


 「じゃあ、①の「ブッブ~☆正解は♥④の君の中にいた人のサポートが無くなったからでした~♥」


 ①と言う前に言葉を被せていたミーニャに向かって天井を睨めつけるが、面白そうに笑ってる声だけが聞こえてきただけ。


 うわっ、ウザい。確かにミーニャは選択肢の中に答えがあるとは言ってなかったけど......どうしてだろうか、とてもウザい。


 「ちょっと待って。私には意味わかんないんだけど......本当にそれが答えなの?」


 私の中にいた人ってどういうこと? 私、二重人格じゃ無いよね......まさか、もう一人の私が!?


 「詳しいことは~♪そこにいる狼くんに聞いてね♥じゃあまたね☆......あぁ♪それと狼くん☆君の主人はまだ(・・)生きてるよ♥」


 またって事は、次も現れる可能性があるってことか......もう、来ないで!! 二度と来ないで!!


 そこで、頭の声は消えた。

 ふと気が付いた時に、ローエンを見る。


 「!!......ローエン? なの?」


 部屋を満たす殺気。何もない空を睨み付け、明らかな殺意を向けるローエンは、私の知っているローエンとは別人のように写った。


 何とか立ち上がり、ローエンの元へと足を引きずりながら向かう。今、私が動かないとローエンがどこか遠くに行ってしまうような、そんな変な感覚に襲われた。


 そして、ローエンの目の前まで来た私は、傷付け無いように優しく、ローエンに抱き付いた。

 男性のガッチリとした身体に体重を預ける。そして、今まで私が思ってた事をぶつける。


 「ねぇ、ローエン。私は、貴方の中でどんな存在なの? カナさんの意志で仕方なく私と居るの? シーナやデリドラが従うから貴方も周りに合わせて従うの? それとも、カナさんの変わりに私に従ってるの?」

 「マナ様......私は......」

 「ふざけないでよ!! 私はカナさんじゃない!! 他のだれでもない、私はマナだ!! 私の知らない所で勝手に全部を背負わないで相談してよ!! 私は......私はローエンにとってどうでもいい、ただの他人だったの?」


 信頼を置いていたのは私だけ、ローエンは私にカナさんを重ねて見てただけ......そんな薄っぺらい関係。


 そんな時、突然、身体がふわりと軽くなる。ローエンが両手で私を抱きしめ返したのだ。


 「ごめんなさい。マナ様。私は間違っていました」


 そう言ったローエンの顔を確認することは出来なかったけど、先程のような剥き出しの殺意は、どこかに消えていた。

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