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勇者とラスボスです!!

 私が気を失っている間に、何かがあったらしい事は、いつもとは違い怒りの表情をしているローエンを見れば明白だった。


 何かあったのかと、問い掛けようと立ち上がる。しかし、何故か足が動かない。正確に言うと、上手く動かせないのだ。

 まるで、自分の身体じゃないものを動かしているみたいだ。


 「ローエン。ちょっと助けてくれない?」


 傷は何故か消えていたけど、ダメージは残っていたのかと考え、ローエンに助けを求めた。

 すぐに駆けつけてくれたローエンが私の身体を持ち上げ、おんぶしてくれた。ローエンの背中は頼もしく、安心感があった。


 「マナ様。どうなされたんですか?」


 そんな、心配そうな声が背中越しに聞こえてくる。


 「何か、疲れちゃったみたい。休めば治るよ」

 「そうですか......」

 「それより、さっきのエリックて言う勇者はどこに行ったの?」


 私を蹴り飛ばした本人。ラスボスのステータスでも(かな)わない大きな力。あの人は勇者の中でも異質だ。


 「エリックなら、帰りましたよ」


 そんな風に、軽く話していることから、私が倒れた後に何かあったことと、エリックは関係無いのだと考える。


 「......少し、思ったことなんだけど。ローエンは、あの勇者と知り合いなの? 最初に会ったとき、ローエンの名前を言ってたし」

 「はい、そうですね。私と共に旅をした、かつての仲間です」


 ......と言うことは、ローエンは元々、勇者側にいたということ?


 「勇者と仲間? ローエンとカナさんは、敵同士だったって事?」

 「はい。私はかつてエリックと共にカナ様に挑んだのです。ですが、それは戦いですら無かったのです。たった一分で、全てが終わりました。勿論、立っていたのはカナ様です」


 あのエリックを瞬殺ですか......カナさん、あなた何者ですか?


 「二人がかりで挑んだのに、手も足も出ませんでした。カナ様はラスボスらしく、圧倒的な力を持ってエリックをねじ伏せたのです。負けた私たちは死を覚悟していましたが、そんな私たちにカナ様は言ったのです。「楽しかった。また遊びに来てくれ」と、敵の私たちに向かって......おかしいですよね」


 その状況を思い出しているのか、ローエンは少し嬉しそうだった。


 「マナ様~」


 遠くから、シーナの声が聞こえる。どうやら、ここまで走ってきたようで、他の四人も一緒だった。


 「マナ様!! 大丈夫ですか!!」


 そうやって心配そうに、走ってくるセツナを見ると、どこか安心してしまう。私が心配されるほど、この子達にとって大切だと認識できたからだ。


 「疲れちゃっただけだから大丈夫。早く帰ろう」

 「はい」


 私の事を相当心配していたようで、大きく息をついて胸を撫で下ろしていた。

 


◇◆◇◆◇◆



 ラスボスの城へと帰って来た私は、ローエンにエリックについて教えてもらっていた。


「まず、エリックのステータスはマナ様よりも、かなり低い数値です。ですが、エリックが持っている一つの能力が強力なのです」

 「やっぱり、能力か......」


 最初に、私がエリックを殴った時、私はラスボスの能力を発動していた。『触れたものを消す能力』で、私はエリックの能力を消そうとしたが無効化されてしまった。


 その事から、私はエリックの能力は"打ち消す"ものだと考える。


 「エリックは、能力を打ち消す能力を持ってるの?」


 だが、ローエンは首を横に振る。


 「マナ様の考えは近いですが、それとは全く別の恐ろしいものです」

 「じゃあ......私と同じような能力?」

 「いえ、エリックの能力は『無視』というものです」


 ローエンから出た意外な言葉に、私は首をかしげるしかなかった。


 「触れた時にしか発動できないという制限付きですが、それでも十分に強すぎました」

 「ちょっと待って。その『無視』って能力で何が出来るの?」


 無視と聞いたら、他人の話を無視するとか、なんかいじめのイメージしか出てこない。


 「エリックは、『無視』の使い方が滅茶苦茶なのです。例えば、自分にかかる重力を『無視』、空気抵抗を『無視』し、ラスボスと同じスピードを手に入れ。さらに、相手の防御力を『無視』して攻撃する。マナ様がダメージを受けたのはそういう理由です」


 能力の範囲を明らかに越えている『能力』。それは、世界の法則すら簡単にねじ曲げるという凶悪なものだった。

 ローエンの口から、エリックの真実がこぼれる。


 「エリックは、500年もの時間を生きている人間(・・)です。本来ならば死んでいるはずのエリックは、歳をとることを『無視』して、20歳の肉体で永遠と生きているのです」

 「......そこまでして、エリックが執着しているものって何なの?」


 死ねない身体。それがどれほど辛いものかは分からない。だけど、多くのものを失って、多くの人の死を看取って、多くの歴史を見て......周りが変わる世界で自分だけが変わらない。そんな世界でそれでもなお、エリックは今を生きている。

 そんな人間の生きる理由がどうしても気になった。


 「エリックは、ミーニャという人物を探しているようでした。ラスボスを倒せばその人に会えると言っていましたが」

 「ミーニャ!? 何でエリックが、ミーニャを......」


 出てきた意外な人物。エリックがミーニャを探しているのは、なぜだ? 頭に浮かぶのは、私と同じようにこの世界に転生してきたのかも知れないという可能性。

 そして、もう1つの可能性。


 もしかしたら......エリックは......

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