謎の美容師男子
この暗い夜道に
人の頭を持って
急いで走ってきた
これは
まさか・・・
「あ、あの」
「言いたいことはわかる」
「!」
「いいか、絶対叫ぶなよ。それからよく見ろ、これは本物じゃない。触って確かめても構わない。」
言われた通りよく見れば、確かに偽物だった
触ってみると、とても硬い。
「俺は美容師の学校行ってて、それは練習に使うやつ。」
なるほど。
「すみません、変な勘違いしてしまって。」
「いや、別にいい。それより、ケガとか、してないか?」
「大丈夫です。」
「そうか、ならいい。なんか悪かったな。」
そう言って、彼はまた、急いで走っていった。
「なんか、忙しそうな人だったなぁ。」
って、大変だ。
「やばい、本当に急いで帰らないと!」
さっきよりも、だいぶ暗くなっていた。
少し小走りで帰ると、玄関には案の定、落ち着かない様子の瀬戸さんがいた。
とりあえず、顔をみたとたん質問攻めしてくる彼に、なんとか落ち着いてもらってから
おやすみなさい、と言って別れた。
こうして私の、一人でゆっくりと過ごすはずの、全くそうではない一日が終わった。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「はー。学校か・・・。」
別に、学校が嫌なわけではない。
友達もいるから楽しいし、勉強は、まぁ・・・うん。
ただ、もう少し寝たい。
昨日はなんだか、ただの買い物だったのに疲れたし。
今日は一時間目から、体育だし。
私は、運動はあまり得意ではないので、なおさら。
「うー。もうすこし、だ、け・・・」
「お嬢様ー!遅刻してしまいますよー!」
ドアの外から、文崎さんの声が聞こえる。
「・・・はい、準備しますー」
眠い。
すごく。
でも、せっかく朝食も準備してくれているし
起きよう。
「いってきます。」
朝食も食べ終え外に出ると、迎えの車とともに、満面の笑みの彼がいた。
「おはようございます、羽坂さん。」
どうしたら、朝からこんなにも満面の笑みを浮かべて、明るく振舞えるのか。
「おはようございます、瀬戸さん。」