04
空き地の真ん中で佇む杏子は両手を広げて、
「と、まあこんな感じで裏は取れてるんだけど、どうする? いま謝るんだったら免責とまではいかないけど、それなりの配慮はしてやってもいい」
「…………」
沈黙は肯定。
という解釈が成り立つのは人間だけ。
「……変なことは考えない方がいい。影の魔女(私)はアンタを殺せる」
影の魔女。魔女狩りの魔女も類からもれず、誓いにより不死となる契約をしている。契約したのは杏子ではなく、杏子のへ力を植え付けた者だが。
元の魔女が書き記したのは、『契約違反を犯した魔女を殺害できる。これまでの殺害方法も無論有効である』という誓い。
ただそれは、元・影の魔女が立てた誓いであって、力の断片だけを持つ杏子にどこまで適用されるかは分からない。
そこから予測できるベアトリーチェの行動は、単純だった。
「あんた、不死性はどうなってんすか?」
幸か不幸か馬鹿か利口か、契約を結ぶ際、影の魔女が違反者を罰する役を引き受けたおかげで、違反時における契約からの直接的干渉の取り決めはされなかった。
「さあ? 試してみれば?」
「…………調子に乗るなよ、パチモンが」
つまりは、影の魔女を打倒してしまえば無罪放免なのだった。しかも現在の影の魔女は、力の断片を抱えている程度。
実際のところ、どこまでの力を引き継いでいるのか自分でも分からない杏子だったが、ここで引き下がる理由はどこにもなかった。
「かかってこいよクソアマ。三流魔女と影の魔女の贋者(格)の違いってやつを教えてやらあ」
直後。
ベアトリーチェが片手で車を持ち上げ、投擲。
近距離から先制を取られ一瞬だけ杏子は逡巡したが、寸でのところで跳んで回避。したまでは良かったのだが、車が辿る軌道上に誠とかえでがいることに気付き、身体を旋回──勢いそのまま踵落としの要領で繰り出した右脚が車体の横っ腹を捉え、吹き飛ばした。




