表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

6.拳

 

 ゴリラが雄たけびをあげながら走る。

 ゴリラは四足で走る。

 だが、前肢、つまり両腕は拳を握った状態で走るのだ。

 これをナックルウォーキングでという。

 ゆえに移動後、上半身を起こしながらのアッパーカット気味の打ち込みが容易となる。

 その巨体で鈍重なイメージとはかけ離れた雷光のごとき動きでゴリラは竜に近づく。

 竜はブレスを吐き、爪を薙ぎ、その行く手を阻もうとする。

 轟! とゴリラの左ほおをかすめ、光のブレスが背後の壁に突き刺さる。

 疾! と薙いでくる爪を素早くサイドステップしてかわす。

「ウホッ!」

 鋭い呼気とともに、竜の腕の付け根あたりに、ゴリラの右拳が打ち込まれる。

 金属を叩くような音とともにドラゴンは揺らぐが、それだけであった。

 巨体にまかせて押しつぶそうとする竜の動きを察知して、ゴリラは素早く後ろへ後退する。

「どうした、さっきまでの威勢は!」

 竜が吼える。

 与える打撃はゴリラのほうが多い、いや、竜の攻撃は一度もゴリラに当たっていない。

 当たれば、たとえゴリラとはいえ無傷ではいられない。

 竜が攻撃を当てる前に、ゴリラが竜を倒すほどの打撃を繰り出す。

 それがゴリラの勝利の条件であった。

 だが、ゴリラの打撃は、竜には致命傷を与えず、竜の攻撃はだんだんとゴリラの動きを読めるようになり、かわしにくくなっていく。

 均衡はあとわずかで崩れそうになる。

 さらに何度も攻防を重ねたすえ、竜がブレスを吐いた。

 ゴリラではなくゴリラの足元めがけて

 ゴリラはブレスをかわすが、床はブレスを砕け散る。

 砕け散ったアスファルトの無数の欠片がゴリラを襲い、ゴリラの動きが一瞬止まる。

 そこへドラゴンが突進しようとする。

 ゴリラは両腕を地面に打ち付ける。

 <気>を放ち、工場の天井近くまで飛びあがり、攻撃を回避しようとする。

「馬鹿め」

 突進はフェイント、ゴリラが大きくよけ、隙をつくるのが目的だった。

 空中で回避不可なゴリラをみて竜は勝利を確信し、ゴリラに噛みついた。

  

 

 

 その瞬間、ゴリラの姿が消える。

 

 

 ゴリラを喰らった感触がないことに竜が戸惑う。

 

 

 その時、ゴリラの姿は竜の足元にいた。

 空中にあったのは、ゴリラが幻術によって創った幻、竜が幻に気を取られている間に、ゴリラは竜の胴体に肉薄していた。

 しかも竜は上を向いたため、腹部がガラ空きの状態であった。


 ゴリラは右拳を竜の腹部に当てる。

「ウホッ!」

 鋭い呼気ともに放たれるのは寸勁

 全身の力を拳に載せることで、零距離から放つことが可能な必殺の一撃であった。


 剛!

 

 ゴリラゆえに人並み外れた筋力から繰り出され、かつ<気>も載せたその一撃は岩をも砕く力を持つ。

 しかも、放たれた寸勁は1発でない。

 

 烈!

 

 さらに<気>が込められた一撃に、表面の鱗が砕け散る。

 

 絶!

 

 衝撃により動きが止まった竜にさらに打ち込まれる<気>は竜の体内を波動となって駆け廻り、内側からズタズタにする。。

 

 幻!

 

 穿たれた<気>は幻術の<気>、竜の動きを止める術が込められている。

 

 1秒にも満たない間に、ゴリラの右手から繰り出された4発の寸勁

 衝撃が体内を駆け廻り、幻術により身動きも取れない状態となった。

 

 だが、それでもゴリラの動きは止まらない。

 

「ウホオオオオオオオオオオオオオオッ」

 

 裂帛の気合とともに、ゴリラは全力で左腕を振るった。

 幻術を己に施し、肉体のリミッターを解除する。

 その剛力はただ闇雲に振るうわけではない、しっかりと両足で大地を踏みし、芸術的なほど洗練された武の動きにて振るわれる。 

 その左拳に宿るのは、魔力すらも破壊する絶大なる<気>

 まさしく全身全霊の一撃が……

 

 撃!

 

 身動きとれない竜に炸裂する。

  



**********

 

「そうだ、その一撃だよ」

 師匠が満足げに男の打撃痕をみて頷く。

「右の寸勁4連撃からの左の一撃、この技を喰らえば、神ですら滅ぼせるだろうね」

「そうですか」

 ゴリラは大地に寝そべりながら答える。

「消耗も激しいし、相手に密着しないとダメだし、制約も多いが、まあ経験を積めばなんとかなるだろう」

 ゴリラのそばには小石の山があった。

 いや、それは全長20メートルを超える巨岩のなれの果てであった。

「せっかくだから、技の名をつけようか、この技をつかれば、五輪、つまり、森羅万象、すべてを破壊できるから……

 

**********

 

 力尽き黄金の竜から人へと戻っていく竜牙を見つつ、ゴリラは呟いた。

  

 

 

「……奥義 五輪乱拳ごりんらんけん

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

 この小説は、チャットで行うゲーム、現代異能バトルTRPG魔獣戦線~Knights of Round Table~ の設定に基づいた小説です。
 魔獣戦線は、同人活動であり、無料でプレイできます。
 不定期にメンバー募集していますし、興味をもたれた方はぜひお立ち寄りください。
 サイトURL:http://majyusen.web.fc2.com/first_index.html

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ