4.黄金の竜
「竜か、竜と言っても様々だからなんとも言えないが、今聞いた話だと、かなりヤバイと思うな、その竜牙という奴の心が」
男から助言を求められ、電話で一部始終を聞き終えた師匠はそう答えた。
「もともと体内に宿っていた竜の力だ、ある程度、気質も影響されるとはいえ、結局は野郎の意思が核となる。もともと、精神的にいちばんつらい時に竜になり、その結果、人を殺めた。そのことが、奴に“竜は凶暴で人の血を求めるもの”って認識してしまった可能性があるな」
「ということは……」
「ああ、歯止めが効かなくなる。現にクソ女の指示以外に何人か怪我を負わせているんだろ、おそらく途中で我に返ったんだろうが、このままだと竜の意思が暴走したとか言い訳して誰か殺すな」
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そこは、あまり使用されていない倉庫であった。
ゆえに荷物は少なく、誰もこない
あまり明るくない照明の下、それはいた。
「何者だ、貴様」
眼の下に隈のできた青年であった。
上半身は裸、下半身はジャージを吐いている。
その声は苛立たしげで、疲労の濃い表情をしているが、その眼光は異様に鋭い。
「どこにでもいる退魔士さ」
「退魔士?」
「ああ、表の世界の人間だったな、要は魔を狩るもの、もちろん……」
男は嗤った。
「……その中には竜も含まれる」
男の説明に、青年-竜牙-は、暗い笑みを浮かべる。
「俺を倒す気か」
「ああ、依頼を受けたからな」
「誰だ、香里か?」
「いや」
土下座して命乞いをする女を思いだしながら、男は答える。
「……お前の父親だ」
「父親だと?」
一瞬驚いた青年であるが、狂ったように笑い出す。
「ハハハハ! なんだよ、そりゃ。こんな異形の血に目覚めた子はいらないのかよ」
その体から魔力が迸り、全身が黄金に輝く鱗に覆われる。
変化はそれで終わらない、体が膨れ上がりながら、その骨格すらも変化をはじめ、数秒後には、巨大な黄金の竜が姿を現していた。
「俺が何をした。仕方ないだろ! この力に目覚めてしまったんだから! 俺は、この衝動を、どす黒い想いを止められないんだ!」
竜が叫ぶ。
男は黙って聞いていた。
「俺は……、な、なんだ貴様は!」
激昂していた青年は驚いたように男を見た。
竜になったことにより、男が常時張っていた幻術を打ち破り、その正体に気付いたのだ。
身長190センチ、体重150キロ
全身は黒い獣毛に覆われており、その両腕は太い
アフリカの大型類人猿3種のうちの一つで,現生の霊長類の中では最大である猿
男はゴリラであった。