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3.女

「私たちの一族は竜の血を引いているのです」

 依頼人は、男に説明を始めた。

 彼の息子は、矢神竜牙は、矢神家の跡取りであったが、つい最近までは、竜の力を顕現することができなかったそうである。

 もともと矢神家は、竜の血を継いでいるとはいえ、その血は薄く、依頼人もまた、竜となったことはなかったそうである、

 ところが、運悪く竜牙は、その力に目覚めてしまった。

 そして、さらに運が悪いことに……、

 

 ……竜牙は竜に呑まれてしまった。

 

 

**********

 

「私が悪いんです」

 そう言いながら、女は涙を流した。

 郊外のファミレスで、男は、依頼人から教えられた女と会っていたのだ。

 彼女は、竜牙の”元”彼女であった。

「矢神くんとつきあっていたのに、騙されて大河内さんんともつきあってしまって」

 そう、事の発端は痴話げんかだった。

 結婚の約束までしていた女性が、実は浮気をしていて、裏切られた男が激情のまま不倫相手のもとへ殴りこみをかける。

 どこにでもある物語

 ただ、違うのは、男は実業家とは名ばかりのヤクザで腕が立ったこと。

 ……そして、半殺しの憂き目にあった矢神竜牙が竜の血に目覚め、浮気相手を喰ったことだ。

「もう、私、どうしたらいいのか……」 

 男は女を見る。

 哀しんでいる表情を浮かべているのはわかる。

 だが、彼女が着飾っていること、きちんと化粧をしていることも理解していた。

 男は感情の機微はわからない、実際に彼女が何を考えているのか、わからない。

 男が目覚めて、人間を観察してわかったことは、人間の想いは複雑だということだ。

「すみませんが、私が聞きたいのは、あなたの思い出話ではない」

 ……だから、男は事実から導きだされた推測に基づいて尋ねる。

「彼の居場所を教えてください」

「……あれから彼と連絡は……」

「最初の殺人事件から、彼がやったと思われる殺人事件は4件、傷害事件は9件、そのうち、殺人事件の被害者は彼と面識がないものもいるが、あなたとは面識がある、しかも、あなたにとっては障害となる人物らしいですね」

 女は絶句する。

 その程度のことは警察でも調べはついている。

 問題は、殺害方法が表の世界-人間-の常識を逸脱していることだった。

 ……ゆえに法では裁けない。

「あなたが彼を利用しているのはわかりますが、依頼人はそれを望みません。教えてくれないか」

「証拠はないでしょ、それにだから何? 竜で襲われるなんてありえないでしょ」

 女は逆切れをする。

 男はため息をする。

 欲情した彼の種族は男も女もキレやすいが、目の前の雌はさらに気が短そうだ。

「証拠か……」

 男は<気>を調整する。

「これならどうだ」

 男は幻術の一部を解き、女に自分の真の姿を見せる。。

「ひいいいいい!」

 突然のことに女性は悲鳴をあげる。

「騒ぐな」 

 男が幻術を帯びた<気>を指先から放ち、女性に打ち込む。

 精神を操る<気>が、女性の体の支配権を強引に、女性から奪い去る。

「……」 

 悲鳴をあげようとするが、声にならない現状に女はパニックになる。

 逃げようにも逃げられない、そして、女からすれば異常な状態なのに、ファミレスの他の客や従業員は平然としている。

「無駄だ、誰もあなたの危機に気付かない。……今まで、あなたが私の正体に気付かなかったかのように」

 男は淡々と言葉をつづける。

「あなたの言った通り、彼とあなたの罪は表の世界では裁けない」

「だが闇の世界なら別だ、そして、闇の世界の罰は”死”だ」

「あなたが”死”を選ぶか、知っていることをすべて話して”生”を選ぶか」

「それは、あなた次第だ」

 女は迷わず選択した。


**********


「幻術ですか」

「そうよ、これ学べねえと、自由に動けないからな」

 男の問いに師匠は答える。

「肉体変化の道術は難しいからな、幻術ならなんとかなるだろう、お前さんは<気>の量も桁外れに豊富だしな、大丈夫だろう」

「そうですか」

「不服かい、自分を偽るのは」

 師匠の問いに、男は苦笑する。

「いえ、しょせん、私は独りですから」

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 この小説は、チャットで行うゲーム、現代異能バトルTRPG魔獣戦線~Knights of Round Table~ の設定に基づいた小説です。
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