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まぞくといっしょ  作者: 黒梵天
第一章 白銀の鎧と悪魔の少女
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ああ素晴らしきモンタージュ02

 異世界生活三ヵ月……目……?

 最近日数が曖昧になってきました。

 こんにちは、リッキこと萩原律樹です。

 もう三ヶ月っすなー。早いもんです。

 最近ちょっと風呂に入りたいなぁ、なんて思ってます。

 この世界にはお風呂に入るってな概念が無いみたいっす。

 人間の町では大衆向けにサウナなんてものがあるみたいなんすけど、大体の人は体を水で流したり、布で拭いたりしてるみたいです。

 俺ももちろん布で体を拭いたり、頭は水で流したりしてるけど、最近じゃ面倒臭くなってきて、近くの湖でざぶざぶ泳ぎながら体洗ってます。

 ――文明が恋しいよぉ……ぐすん……。

 まぁ、無いものは無いし、俺にゃ大工技術もないから作れないや。

 だから自分にできる事を出来る範囲でやるわけです。

 ってなわけで――


「そいつぁさすがに食らわないよ! エクセリカちゃん!」


 現在戦闘訓練受けてます!

 そんでもって俺はエクセリカちゃんの切り上げやら、なぎ払いやらを最低限の横ステップで交わして避けてます!

 そうなんす! 俺はとうとう戦闘の訓練を受けられるようになったんす!

 しかも結構な経験積んで、メキメキ実力が上がってたりするんすよ! もうエクセリカちゃんの攻撃なんて余裕で避けられ……ません。かなりいっぱいいっぱいっす。

 実は避けられるほうが珍しいんです……。


「ほう! 避けたか! いいぞ! だがこれはどうだ!」


 身長差を利用した下段への素早い横薙ぎの木刀連打がやってくる!


「甘いっす!」


 それを回避する為に素早く飛びのいて地面をローリング! そんでもってすぐ立つ! いわゆる回避行動ってやつっす!

 飛びのきだけだと追撃の突きに絡めとられるから、ちょっとオーバーにやるのがポイント! ふふ、エクセリカちゃん、その技はもう見たよ!


「ほう、学習したなリッキ。それじゃあ次は十分の二でいくぞ?」


「えっ」


 エクセリカちゃんすげぇ楽しそうに、今度は木刀を一本逆手に構えて、片手にもう一本木刀を持ちまんた。

 ……そうです、エクセリカちゃんはまだ十分の一の実力でしか戦ってなかったんす。

 エクセリカちゃん、君が十全の力を出したら、俺はどうなるのん……?


「リッキ、避けろよ?」


 逆手にもった方をまるでフェンシングのように構えて、じわじわ近づいてくるエクセリカちゃんが怖い。


「お、オーケイ……」


 木刀を構えなおす。

 怖いけれど、俺も最初の弱いまんまの俺じゃないっす。

 だって最初の頃なんか――


『アッー!』


 こんな声前日上げて情けなく転げまわってたんだから……。


 例えば、ええっと……あれはまだ俺が構えをようやく覚えて、エクセリカちゃんと何十回か手合わせをして、ようやくちょっとだけ体が動くようになってきたって時の事を話そうかしら――。




「ほらほら! 早く立たないとどうなっても知らんぞ!」


 剣払い落とされて足引っ掛けられて四つん這いになったところを、無慈悲にもエクセリカちゃんが穴に『ブスリ!』と刺してきますぅ!? そのままグリグリされ――ひぎぃ!?

 

「こわれりゅう!!」


 童貞失う前に処女失っちゃった気分だよ……。こんなのれいぷっぷだよ!

 ……快楽に目覚めそうではあるけど。


「う、うひー!」


 俺は這いながら逃げて、そのままヘロヘロと立ち上がって、木の棒を構えてエクセリカちゃんの動向を探るわけだけど、マジで次に何してくるか予想もつかねえ。


「はは、上達しないなあリッキは。ふむ……そんなんじゃ、いつかお前の尻が三つになるかもな。いや、もしかした穴が二つになるかもしれん」


 木の棒を左右に切り払ってから、自分の腰に引っさげるエクセリカちゃんはとっても格好いいんだけど、最終的に俺のケツを叩いたりケツにそれをぶっ刺されたりしてくるから残念な感じに思えてくるよ……まあ、これには理由があるんだけどね。

 最初は『どうしてこうケツにこだわるのかな? 好きなのかな?』とか思って混乱してたんだけど、ちょっと考えて自己解決しまんた。

 だってケツならちょっと強く叩いても大丈夫だし、あそこ脂肪のクッションのお蔭で怪我しても一番大事にならないところだもんね。

 これは訓練だし、大けがしたらマズいって事をエクセリカちゃんは良く考えてくれていたんですな。

 ……じゃあ『ケツだけガードしてたら勝てるんじゃね?』って発想の元、実行に移してみたら、武器を払い落とされて『真面目にやれ』って言われて往復ビンタされました。

 あの時は結構真面目だったのに……ひでえや……。


「す、すぐ上手になるんだもんげ! エクセリカちゃんなんかすぐに相手にならなくなるぐらい最強の男になっちまうよ! あ、嘘ですごめんなさい俺はザコですカス猿ですウジ虫ですだから鞭でケツを叩くのだけは許してくださいそれ本当に痛いからやめ――いひぃ!?」


 俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑って鞭ぶんぶん振り回してくるのは何でなんですかねぇ!? それ実は笑ってるけど怒ってるんですかねぇ!?


「そうかそうか、強くなるか! よく言った! やっぱり男は強くなくっちゃな! 最強と言わないまでも、絶対にお前がモノになれるよう、私も頑張ろうじゃないか!」


 そんな事言いながら木の棒をまたもよ腰から引き抜いてくるエクセリカちゃん。

 あ、俺これは終わったな。だってああなったエクセリカちゃんはいつもの三倍は俺をしごいてくるもの。

 しごくなら俺のちん――よそう、今は戦闘訓練に集中だ……。


「ハイ……オレモガンバリマス……」


 まあ、期待を裏切るマネは出来ないさ。俺も応えていかねーと。

 ふふ……そして強くなったら、俺は二人を守る格好良い年上のお兄さんを気取りながらどんどん可愛い女の子を仲間にして、俺のハーレムを作ってみんな孕ませるんだ……。

 そう……もう毎日とっかえひっかえホッカホカの――


「ぎひぃ!?」


 なんかニヤニヤしてたら顔にグーパンが飛んできたよ!?

 エクセリカちゃんたまにこうやって格闘混ぜてくるから気が抜けない! 強いよ、この子強すぎるよ!


「ほう、今のは良く避けたぞリッキ。……ははっ、なんだかまるっきりダメだったお前だというのに、最近では随分呑み込みが早くなってきているじゃないか。うむ、精進しろよ?」


 あ、エクセリカちゃんが微笑んでくれた。


「か……かわいい……」


 い、いっつも怒ってるか仏頂面してるだけなのに、こんな顔もあったんだ……。

 ゲームだったら絵師に『なんで二枚しか顔パターンねえんだよ!』ってな文句が言いたくなるぐらい、ほんっと表情が変化した事なかったんだけど……。

 この子って微笑むと、すっごく可愛いんだな……。


「可愛いだと……? ほう、私の攻撃は可愛いか。そうか、手加減はいらなかったか。まったく、それならそうと最初から言ってくれ。お前はいっつも自分を過小評価しすぎる。私はどうしていいかわからんぞ。……さあ武器を抜け、全力でかかってこい」


 某アクション映画のカンフーの達人のように、手の先をクイクイっと曲げて俺を呼ぶエクセリカちゃんの目の奥に、何か炎のようなものが見えた気がする。

 あ、ダメだ……。あれ絶対いつもの6倍は強くなってる。

 ――死ぬかもしれない。

 うう……。過小評価じゃないっす。本当に弱いんですってばよ……。

 つっても――


「うおー!」


 剣を振り上げ全力突進!

 魔法も知らない俺にゃ、これしか道はないんだもんげええええ!!

 絶対強くなってやる! そしてハーレムを――あべし!?


「ぶべええええ!? んおっ!? ひぎぃ!」


 突っ込んだらすぐにカウンター食らって武器叩き落とされて四つん這いにされた挙句ケツに蹴り入れられました! 無理! 勝てない! 強くなんかなれない!

 やっぱハーレムなんて俺には無理! 絶対無理! 今日はもう終わりでいい! むしろ終わりにしてください家事ができなくなりますお願いします。

 ……ダメだ、ありゃ夕方過ぎても友達の家から帰らない子供のような無邪気な目で俺を見てる、絶対終わりにしてくれない。

 うう……家に帰ってエロゲーがやりたいよお……ぐすん……。




 ――ってな事もあったなあ……。


「ふふっ……」


 ふう……あの時の俺は弱すぎだったな……。

 だけど、今ならもうあんな情けない事に――


「ん? どうしたリッキ? 苦笑いなんかして。集中しないと避けれるものもよけられんぞ――っと」


「きひゃえい!?」


 なる所だったよぉおお!?

 ぐ、うう……思い出に浸ってたら顔に突きが飛んできたぞ!?

 エクセリカちゃん、それはダメだよ! 

 確かにそれ木刀つっても棒っきれだし、先は丸くなってるけど危ないんだよ!? 目に当たったら洒落になんないんだよ!?

 ……ぐぅ、しかし悔しい。

 前と同じで考え事からの不意打ち……ちゃんと治ったと思ってたのにこれじゃあ全然成長できてないじゃないか……。


「よし、うまいぞ! それじゃあ今の倍の速さで突きを出すからな! 点は面や線よりも距離感覚が掴みにくい、早めに慣れろ、わかったな?」


 言うが早いかエクセリカちゃんの恐ろしい刺突がたっぷり飛んでくるぅ!?


「ひっ!? ひぃっ!? ひぃいっ!?」


 一歩下がって、飛び出して、左右にステップしてかく乱してからの突きだったり、中段からの突き上げだったりで縦横無尽に飛んできて対処してきれ――ぶふっ!?


「あぎっ!? げほっ!」


 ぐおっ……み、エクセリカちゃんの刺突が鳩尾に入った……。

 こ、攻撃する場所は……か、顔だけじゃ……なかったんすね……。


「ふふ、まだまだだな。だがお前……やはり強くなってるぞ。確実に、着実にな」


 地面に手を付いて痛みに耐える俺の背中を、ポンポンと叩いて励ましの言葉をくれるエクセリカちゃん。

 なんか剣を交えてから態度が前と比べて全然優しくなってくれてます。


「は、早くもっと強くなりたいっす……」


 そんな風に漏らす俺を見てエクセリカちゃんが『焦るな。積み重ねろ』ってすごく当たり前の事を言うけど、この子に言われると何となく心に響くんだよな……。


「う、うい!」


 木刀を杖代わりに立ち上がって、再び構え。

 とりあえず、まだまだ心は折れちゃいない。

 絶対強くなって、二人を見返してやる。


「そんでハーレム作るんだぁああああ――エンッ!?」


 エクセリカちゃんに上段の構えで飛び掛かったら顔面にグーパンを食らいまんた……。

 うぐぅ……またカウンターだよ……。

 やっぱり俺、成長してないんじゃないかな。

 頑張らないと、ね……ふへへ……。


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