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まぞくといっしょ  作者: 黒梵天
第一章 白銀の鎧と悪魔の少女
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異世界生活序盤ラスト コン○ルGoodが好きでした。


「うん、板についてきたじゃないか。やれば出来るんだな、お前も」


 異世界生活――何日目だ?

 まあ多分3週間ぐらい?

 そんなわけで今日も今日とて薪割りのお仕事さ。そんでこれが終わったら洗濯やら農作業やら今日の晩御飯の為の野菜の収穫もあるんだけど、まあ朝と言えばやっぱり薪割りから始まるわけっす。

 そしてもちろん今朝もエクセリカちゃんが起こしにきて、やっぱりいつもと同じように俺は反抗して、そこでぼっこぼこにやられてからの一日スタートです。

 ……家事手伝いの、朝は早い。

 ――帰りたいよう。

 ニ○ニコ動画でまったりと動画見ながらピザポ○トボリボリ食ってドクペ飲んでごろごろしてたい……。

 でもだめっす。諦めるっす。ちょっとずつでもいいから変わりたいんす。

 それに生きる為には働かないといけないんだもんげ。

 ……そんな当然の事を、俺はずっと蔑ろにしてたんだ。

 ――なんつって。

 さて、褒めてくれたんだし、お礼を言わないとね!


「ありがとう! そしてありがとう! 実を言うと、俺は薪割りの達人なんだ!」


 あ、笑った。

 口に手を当てて『くくっ! 何だそれは、またお前は適当ばっかり言って! ふふふっ!』なーんつって笑ってくれてる。

 うぇひひっ、エクセリカちゃん笑うとかわいいんだよなー。

 いっつも険しい表情してるんだけど、それがふにゃあって柔らかくなんの。超かわいいよ。マジで写真に撮ってブログに貼って自慢したいぐらいだわ。

 ――まぁ彼女でもなんでもないんだけどね……。


「さて、これならもう一人で任せても大丈夫そうだな。すまないが私もそれほど時間がとれなくてな、これから森の魔物を討伐しに出かけなくちゃならないんだ。悪いがここの留守は任せるぞ? アルシラは今日、村の集会場に出ずっぱりでな。お前がここに本格的に留まっても大丈夫なように説得したり、書類や手紙を書いたりで忙しいからな。まさか泥棒なんてものはこないだろうが……。それでも鳥やら猫やらが窓から入ってきたら大変だ。しっかり番を頼むぞ? ああ、あとは飯だが、アルシラが早起きしてお前の分の飯を用意してくれてるから、腹が減ったらそれを食べろ。そしてこれで最後になるが、薪は最低でも50セットは作るんだぞ、いいな?」


 早口で言われてちょっと聞き逃したけど、今日もアルシラさんは俺の為に他の亜族の村人達を説得しに行ってくれてんのか……。本当にありがてえなあ……。

 うっし、じゃあそんなアルシラさんの為にも、一生懸命お留守番するかね!

 ――あれ……俺マジで自宅警備員になってね……?

 いや、あれ(ニート)とは天と地程の差があるな、うん。


「了解! エクセリカちゃんも気を付けてね」


「ああ、それじゃあ頼んだぞ」


 エクセリカちゃんが俺の肩をトントンと叩いてくれた。

 期待されて――お留守番に期待もなにもないか……。

 

「おっ」


 薪割り場から去っていくエクセリカちゃんは、森の入り口らへんに差し掛かった辺りですぐさま鎧を身にまとって、そのままゆっくりと奥に消えてったんだけど、鎧をまとう瞬間って、体にちょっとキラキラした銀色の粒子が出るんだわ。あれすっごい綺麗なの。


「魔法いいなー」


 あの子、デュラハンだもんね。

 今んとこ魔法の収納ボックスだとか見た事ないし、固有魔法ってやつなんかねえ?

 ほむ……ことファンタジー世界において、魔法で鎧をぱっぱと出したり消したりがいつでも出来るってのは素晴らしいアドバンテージだよなあ。

 某ゲームの無限の剣○とかもできる亜族の人もいるのかしら……。

 いいなあ……俺も魔法覚えたいなあ……。

 今度、魔法を教えてくれないか頼もうかねえ?


「よいしょっと」


 まあ、それは追々考えるとして、今は薪割りが先だな。

 1セットが一個の木を4等分してできた細い薪12個だから……おおう……先は長そうだぜ……。

 そんなわけで早送り!

 ――できたらいいのになあ……。リアルでヘイスト魔法使いたいっす……。

 あれすごく羨ましいのよね。嫌いな授業とか、リア充の集まりに入らなきゃいけなくなった時とか、麻雀で残り点が絶望的になった時とか、経験値テーブルがクソマゾいネトゲやってる時の作業狩りとか、すげえ便利なんじゃないかな。

 あ、早送りで思い出したんだけど、最近モノマネ四天王であらせられるコロ○ケさんはどうしてずっと早送り芸ばっかりやっているんだろうか。

 俺はあの人のガチ五割、ネタ五割のモノマネがめちゃくちゃ好きだったんだけど、最近あんまり見せてくれなくてちょっとがっかりだよ。

 ――といったような事を考えながら薪を割り続けた。

 結果かなり量もそろってきたし、それじゃあそろそろ休憩にするかって事で俺は一度アルシラさんの家に戻る事にしました。


「ぶえー! 疲れた!」


 なんとか昼までに38セットいけたから、残りは飯食ってからだなって事で、今はダイニングにいます。

 テーブルんとこから椅子を引っ張り出してそこに腰かけて、ようやっと一息。

 力仕事は大変ですわ。


「……ほう、昼飯はサンドイッチ」


 テーブルの上には大きいお皿に山のように盛られたサンドッチがありまして、きっとこれが今朝エクセリカちゃんが言ってた飯なんだろうね。

 牛乳が欲しいとこだけど、氷室にはもう無いつってたっけなあ。

 パンだもんなぁ。

 飲み物なしはキツいよなぁ。

 でも結構腹減ってんのよね……。


「ヒャァ! 我慢できねぇ! いただきまーす! ……んほっ! ぶまい!」


 サンドイッチを鷲掴みにしてバクり!

 うまい! アルシラさんの愛を感じる!

 頬張った瞬間口ん中にうま味が弾けて脳天を突き抜けてきましたよアルシラさん!

 なんかの肉のハム(多分鶏肉)! しゃきしゃきのレタス! ジューシィなトマト! 謎のアボカド味のムースはまったりと口の中に甘みをもらし、そこを舌にピリっときて食欲をそそるコショウがの香りシメる! うーまーいーぞー!

 コンビニのサンドイッチって原価いくらなのよ? いくらであの値段で売ってるわけ?

 えー? それいくらよー? それ原価いくらよー? ねえねえいくらー?

 ――黙れ原価狂め! うまけりゃいいんだよ! コンビニのマズいけど。

 つまりそう、このサンドイッチは味も格別って事っすよ。

 アミノ酸? グルタミン酸?

 とにかくうまみ成分ぎっしりって感じ。

 食えば食う程口ん中が涎まみれ、うまい、うますぎる!

 それとハム! 燻製に何のチップ使ってんのかしらねえけどこれがまたいーい香りなんだなまったく。

 ――このムースなんなの? アボカドなんてこの地域じゃとれないよね……?

 こ、細けぇ事ぁいいんだよ! うまいし!


「もふもふ……」


 ほんっとアルシラさんって料理上手だよなあ……。

 お嫁さんにしたい、マジで。

 アルシラさんは俺の嫁とか言いたい。


「んっ……そう言えば……」


 そうだよ、嫁っていやあ、お母さんですよ。

 この家ってアルシラさんと、今は俺が使ってるアルシラさんのお父さんの部屋しかないんだよな……。

 ダイニングキッチンのテーブルだって、椅子が三つしかなくて、一つはエクセリカちゃんの分、二つはアルシラちゃん、そしてお父さんの分だろ?

 お母さんってのはどうして――


『私たち、人間に両親を殺されてるから……』


 あー、そっか……前にアルシラさんはこう言ってたよね……。

 普通どっちか一方だったら『親を』って言うもんな。

 だから『両親』っていうのは、お父さん、お母さんの事を言ってたんだな……。


「……最低じゃん……この世界の人間って」


 どんな軋轢があったかしらねーけど、あんなに素直で出来た娘を育てた両親だろ?

 それを魔物だ魔族だなんだって問答無用で殺して……。

 いっそ人間なんて滅んじまえば……って、俺も人間なのよね。この世界の人間じゃないけども。


「よく、話しかけてくれたよなあ……」


 普通そんな両親の仇みつけたら即斬首――ああいや……そっか。


「アルシラさんは……」


 ……いや、今はエクセリカちゃんもか。

 二人は俺を人間っていう大きな枠組みじゃなくて、萩原律樹っていう『個人』で見てくれてんだな、きっと……。


「ふむ……」


 こういった考えを全ての人がもってりゃ、人種差別やら文化の違いで戦争なんておっそろしい事なんか起きねーのかもしんねーけど……。


「無理だよな。みんなそこまで寛容にはなれんよ……。あの子たちが特殊なだけだよ。普通は『日本人はどうだ』『アメリカ人はどうだ』ってなるもん。一人一人を見る余裕も時間も、その短い一生じゃどうしたって作れない……」


 だから多分、世界ってのは永遠に変わらないし、歴史は絶えず消えて生まれてを繰り返してくんだろうさ。


「なんつって」


 いくら頭が良さそうな事言ったって、どーせ俺はニートだし、半ヒキだし、中卒なんですもの。はいはいワロスワロスでお終いだわ。無駄無駄、考えるカロリーが無駄。


「無駄、かあ……」


 こういった風に短絡的に話をまとめて、諦めて、弱者面して、ルサンチってるから人間はダメなんかもしれんけど、そうそう器なんて広がらんよ、マジで。

 ――あれ? そういやぁルサンチマンの定義ってなんだっけ?

 まぁいいや、思い出せないもんは無理に思い出さんでいい。間違ってても気にしない。


「そんな事より、おいらにゃまだ仕事がのこってんのよっと」


 椅子から立ち上がって、手に付いたパンの粉払って、大きく伸び……っと。

 

「人間には出来る事と、出来ない事があって――」


 身の程を弁えて……努力する。そういう事なんでしょ? ばーちゃん。


「ごちそうさまでした!」


 サンドイッチうまかった。

 アルシラさん、ごちそうさま。

 今日も頑張っていっぱいお手伝いします。

ここまでお付き合い頂きありがとうございます。

次回から少しずつ彼の生活が変化していくかもしれません。

魔物、異世界、剣と魔法とくればやっぱり――ですね。

彼は強くなれるのでしょうか。

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