日常パート01 A○Sから、○が逆流する……! ギャアアアアアッ!
「もうソレ疲れたぞリッキー……。休憩! 休憩するかんな!」
拡張中の畑のど真ん中で大の字に寝転がるシャンヘルちゃん。
「休憩するなら畑の外でしてね……ほら、そこ邪魔でござるよ」
俺はそんなシャンヘルちゃんのケツを、何度か足で軽く『ぺちぺち』と蹴る。
「うわあー」
それを受けたシャンヘルちゃんはすげえやる気のない声を上げながら畑の外まで転がっていく。
「おいィ……その服を洗濯するのも俺なんだけど……」
そのせいでシャンヘルちゃんの着ている服がドロだらけになっちまった。
もうかれこれ3時間ぐらいこんなやり取りばっかりでござる……。
「うう……全然作業が進まない……」
作業を始めたのが午前7時ぐらいで、あれから多分5時間ぐらい経ってるはずなんだけど、未だに4坪ぐらいしか耕せてない。
予定では一反(約300坪)ぐらいの広さにするらしいから、こんなペースじゃいつまで掛かるか分かったもんじゃない……。
「リッキー! このイモ食っていいかー?」
ぶええええ!? シャンヘルちゃんがいつの間にか隣の畑からサツマイモを引っこ抜いてるゥ!?
「ダメに決まってるでしょぉおおお!?」
俺は急いでシャンヘルちゃんの元へ向うも時すでにお寿司。
「あぐっ……むしゃむしゃ……」
あわれにもサツマイモは泥を落とされ、シャンヘルちゃんに齧られる事となった。
今はだいたいお昼時だし、村人はみんな飯食いに帰ってるから見られてないけど、信頼されてる手前『お野菜勝手に食べさせちゃいました』なんて事は出来ないよ……。
まだ食われたのは一個だし、とりあえずこの掘り返されたところを埋めて、綺麗に――
「うまそー」
「えちょっ、何してはるんですか!?」
掘り返されたサツマイモの場所を埋めてたら、色んな畑が大変な事にぃいい!?
「きゅ~♪ むしゃむしゃ……」
シャンヘルちゃんの足元にキュウリ、トマト、サツマイモ、キャベツ、他もろもろの各種野菜が山盛りに積まれて、もぎたて野菜祭り状態になってる……。
「ど、どぼじでごんなごどに……」
太陽の光が燦々と降り注ぐ大地で、俺はがっくりと膝をついた。
……こんにちは、萩原律樹25歳(童貞)です。
今日はシャンヘルちゃんがこの村にやってきてから4日目の朝。
何だか色々あったけれど、ようやく今日から平常運行。
営倉にぶち込まれていたシャンヘルちゃんも『村の手伝いをするなら』外に出てもいいという条件でようやく解放されました。
これは昨日の会議で決定された事なんだけど、最初は『今後も営倉で監視を続ける』っていう意見と『森に返す』っていう慎重な意見しかなかった。
そうやって意見が分かれて二進も三進もいかなくなってる所で――
『これ以上聞く事も無いし、いつまでもあんな薄暗い所に閉じ込めておいても仕方がないじゃろう? そろそろ解放して、うちの村で面倒を見てやろうと思っておる』
カーリャさんはそこで大胆にも『村で面倒を見る』とみんなに言い放った。
もちろん村の人達からは『危険だ』とか『万が一があったら』といった声も上がってたんだけど――
『危険だと言うのなら端から殺してしまえばいいわい。じゃが、誰一人そうする事を良しとしなかったではないか。それはあの子が『子供』じゃからか? 違うじゃろ? 皆の者は口に出さずとも、何となく心の隅っこでは理解しているはずじゃ。あの子は『人間側のスパイ』でもなく『恐ろしいドラゴン』でもなく『ただの子供』なんじゃとな』
と言って笑った。
そのさっぱりとした笑顔に村の人達は『ま、まあ確かに……』と恥ずかしそうに顔を伏せて、最終的には『営倉で監視を続ける』といった話に『ただし、村の仕事を手伝ってくれるならある程度自由にさせる』といったカーリャさんの話を付けくわえて『そしてもしもその動向が信ずるに値するのなら、森に帰るなり、ここに残るなり、あの子の好きにさせる』といった具合にまとまったわけです。
……だけど、村の人たちは知らない。
カーリャさんがシャンヘルちゃんの事を『スパイでもなく』『恐ろしいドラゴン』でもなく『ただの子供』だと言い切ったその理由を。
実は……カーリャさんが会議でこう言い切る前に、村の人たちには内緒でシャンヘルちゃんから様々な情報を得ているんです。
まず、魔力は聖力の干渉を受けると魔法の行使ができない。
そして聖力は魔力の干渉を受けると奇跡の行使ができないっていう二つのルールが如何様なものなのかを、カーリャさんはすぐに明らかにした。
シャンヘルちゃんがこの村にやってきて、竜化が解けた直後、カーリャさんはシャンヘルちゃんに魔法を使ってたんだけど……あれは竜に対して魔法が有効かどうか調べる為にやった事だったらしく、俺には『有効』に思えたんだけど、カーリャさんにとっては『有効に見えるだけ』といった感じだったそうで、結局再びシャンヘルちゃんに対して魔法が有効かどうか調べる為に、俺とエクセリカちゃんが立ち会いの元、シャンヘルちゃんに同意をもらってから、魔法が効くかどうかの検証を会議が始まる6時間前に行ってる。
そこでカーリャさんが、いの一番に使った魔法は『隷属化』の魔法だった。
隷属化の魔法ってのは、掛かると相手の体に刻印が刻まれるから、掛かったかどうかってのが見た目にもわかり安い魔法で、その効果は相手に対して絶対的な命令力をもつようになるって事――ようするに『死ね』と主人に言われたら、何の反抗もできずに自殺に向かってしまうようなある種の『洗脳力』を持ったもの凄く恐ろしい魔法なんでござるよ。
だけどこれって、魔力をもっている生物なら誰でも抵抗できる魔法で、掛かるか掛からないかってのは魔力量による即決勝負によって決まるものなんですわ。
でも、ドラゴンは体外に魔素を排出する生き物だから、体内に魔力なんてものを有していないわけで、何かしらの手段でもってして抵抗しなければならない。
カーリャさんはそれを見る為に、あえてこのヤバい魔法を使う事を選び、シャンヘルちゃんに対して――
『もしもこの魔法が成功したら、お前さんにはこの村の男たち全員と交わってもらい、ドラゴンの奴隷を大量に作ろうかのう? ……なあに、安心せい……穴という穴が疼いてどうしようもなくなるような媚薬をたっぷり使ってやるからのう……お主は頭の中を快楽で満たされたまま、ただ延々と壊れたおもちゃのように腰を振り続けてれば良い……』
なんて恐ろしい事を言い放ってから魔法の詠唱を開始した。
最初はシャンヘルちゃんも――
『え? う、嘘だろ? 嘘だよな?』
ってな具合に本気にしてなかったんだけど、何も言わずに淡々と魔法の詠唱を続けるカーリャさんに対して真っ青な顔になったシャンヘルちゃんは、必死に隷属化の魔法に対して、何かしらの手段をもって抵抗したんだけど、最後にはヘトヘトになって抵抗する事もできずに、あっさりとカーリャさんの奴隷になってしまった。
もちろんそこで、カーリャさんは抜かりなく『命令』でもって知りたい事の全てを聞き出してから――
『さて、意地悪はここまでにしておくかのう、ほっほっ!』
なんて笑いながら『交尾怖い……交尾怖い……』と呟くシャンヘルちゃんに掛けられた隷属化の魔法を直ちに解除した。
……さてさて、ここまで思い出してようやく俺は『魔力は聖力の干渉を受けると魔法の行使ができない』っていうルールにある『干渉』ってのが何なのかってのが理解できた。
干渉っていうのは要するに『パッシブ』ではなく『アクティブ』に分類される行動だって事ですな。
じゃあここで魔法についての補足も少し織り交ぜて整理しよう。
まず、魔法は物理系、精神系の大まかな二種類のものに分類さてている。
物理系っていうのは『火』『水』『土』『風』といった創作物ではお馴染みの四大元素を精霊や妖精の御名において自在に顕現させ、それを魔力を介して操るといった……まあ、魔法が使えない俺にとってしてみればイマイチ掴みどころがないモンで、防ぐ方法は魔法の盾だとか、鉄の盾だとか『目に見える』『触れられる』といった『物理的な物』でしか防ぐ事ができない。
逆に精神系っていうのは『幻惑』『洗脳』といった『心』や『脳』に強い錯覚を与えるもので、これは人が本来もつ魔力によって抵抗する事ができる。
さて……ここからわかるように、この世界の魔法には『ディスペル』といった『魔法を打ち消すための魔法』ってのが存在しておらず、それを打ち消せる聖力ってのは、とてもチート臭いものなんだけど……ドラゴンや天人といった『旧人類』にとって、聖力ってのは己を構成する体の一部なんだそうで、一定以上消費すると死んでしまうらしい。
つまり『旧人類』がもつ聖力っていうのは、どんな魔法でも打ち消せるけど、そうするためには自分の身を削らないといけなくて、しかも燃費が悪いって事かな。
あとは聖力を使用した奇跡の行使なんだけど、ドラゴンであるシャンヘルちゃんが使える奇跡は『竜化』と『原初の炎』と『精力変換』と『聖力干渉』だけです。
全部読んで字のごとくなんだけど、この中で『原初の炎』ってのはシャンヘルちゃんが口から『ボッ』っと噴くアレの事で、なんか名前のわりにショボいなって思ったら案の定レベルが上が――成長すれば様々な奇跡に派生するものらしいです。
だけど残念な事に『旧人類』が使うだいたいの奇跡は、後出しで適当な魔法をぶっぱされるとその効果全部が消滅するらしく、わざわざ聖力干渉なんて奇跡を使って魔法を打ち消さなけりゃならん『旧人類』ってのはめっちゃ不利な立場にあるみたいだ。
……さて、そんでもって最後に、カーリャさんが隷属魔法を掛けた時に聞きだした情報についてだけど、大した事は聞けなかったよ。
だけど『人間と手を組んでるわけでもないし人を食った事もない』って事や『村に危害を及ぼすつもりはなく、亜族を敵視してもいない』って事が真実であるって裏付けが取れたわけだし『どうして進めずの森にいたのかってのは本当にわからない』ってのだけは少し気になる所だけど、それは追々解決していけばいいと思う。
と……短絡的に楽観的に考えてる俺の横で、カーリャさんは事の細部までしっかりと聞き出して、じっくり内容を吟味してからエクセリカちゃんに――
『これを斥候に渡しておくれ』
と、何やら既に用意してた手紙らしきものを手渡した。
俺が『それ、何ですか?』と聞いたら、カーリャさんはすぐに教えてくれたけど、どうしてそんな事をしたのかってのがイマイチわからなかった。
手紙の内容は『レガストの情報を"どんな些細な情報でも買う"という条件で、人間の商人と取引を行え』というものだ。
レガストって確か魔法大国だった気がするけど、この村からずっと遠く離れた北の大地にある国だし、どうしてそんな国の情報を買うのかってのが俺には良くわからん……。
だからその事も聞いてみたんだけど、カーリャさんは――
『女が出した手紙に興味を持つなど、ハギワラ殿は助平じゃのう……なんての。いずれわかる事じゃ、その時が来たら……の?」
と言ってはぐらかしてしまった。
そして最後に『今日の事は他言無用じゃ。良いな、皆の者』と付け加えて情報収集を終えた。
……はい、そんなわけでカーリャさんはとても綿密に裏付けを取ってから動くとっても慎重な人なんだけど、村人に見せてる顔は『豪快』で『さっぱりとした』表情しか見せてないわけです。
これは村の人たちに要らない恐怖感を与えないようにする為か、それとも何か別の考えがあってやってる事なのか……。
俺にはそれがさっぱりわからないけど、とりあえずシャンヘルちゃんはある程度の自由が約束される事となりました。
さてさて、そんなわけで俺はさっそく今日、シャンヘルちゃんを営倉の中から連れ出して、ここ数日間の運動不足の解消と、ちょっとした日光浴を兼ねて、畑の拡張をお手伝いしてもらう事にしたわけです。
だけどシャンヘルちゃんの飽きっぽさといったら俺の比じゃなくて、もう1メートル耕したら10分休憩するみたいな事ばっかり繰り返してて、結局農作業よりもシャンヘルちゃんを構ってる時間のほうが長くなってしまったのであります。
そして挙句の果てには作物を食われ、もう正直ストレスがマッハでござる。
さて……と、そんじゃあそろそろ回想は終わらせて野良仕事に戻ろうかな。
だってこのままだと――
「もぐもぐ……」
サツマイモ畑が大惨事になるから。
「おいィ……」
「きゅっ!?」
幸せそうに地べたに座って、むしゃむしゃと何かを食ってたシャンヘルちゃんが『ビクッ』としてから、ゆっくりと振り向いてきた。
「むごっ! がつがつっ! ごくんっ! ……な、何だよリッキ」
すごい勢いで口の中に全部入れて飲み込んだけど、俺には見えた。
ありゃイモだ、サツマイモ。
しかも火噴いて焼いたのかしらんけど焼き芋にしてた。
「イモ……食ったな?」
「……い、一個か二個しか食ってない」
シャンヘルちゃんが首を横に振るけど、めっちゃ視線が泳いでる。
……どうして子どもってのはすぐバレる嘘を付くんだろうか。
「そのぽっこりとしたお腹はなんだい、シャンヘルちゃん」
じわじわと近づいて、シャンヘルちゃんの前にしゃがんでから、人差し指でそのラージぽんぽんをつっつく――適度な弾力だ。
このチビドラゴンめ……どれだけ食ったんだよ……。
畑も随分掘り返されちゃってまあ……村の人にどう謝ればいいんだ……。
「え、えっと……あ、赤ちゃんできちゃった……とか?」
「誰の赤ちゃんだよ!?」
おのれこのチビドラゴンはこの期に及んで何を言う!
そもそもシャンヘルちゃん、その小さな体で妊娠なんか出来るんですかねえ……?
出来るわけないだろ……まだアレがきてるのかも怪しいわ。
「……えっと、り、リッキの赤ちゃんだぜ?」
愛しそうにお腹をさすりながらシャンヘルちゃんが見上げてきた。
「嘘をつくんじゃあないよ……俺がいつシャンヘルちゃんと交尾したのさ……」
俺にはヤった記憶もないしヤるつもりもない。
「交尾しなくったって出来るぜ? ほら、前に濃いのが掛かっちまっただろ? やっぱり精を吸収するのに一番手っ取り早いのは口と……わかるだろ?」
シャンヘルちゃんが意味深な視線を俺に向けながら、下腹部を『きゅっ』と抑えた。
「え、ええ……嘘でしょ? まさかアレを指ですくってわざわざおまん――」
「あなた……」
シャンヘルちゃんが俺の頭を抱きしめてきた。
もう意味がわからん。
「ほら、聞こえるだろ……?」
え、何が?
俺の耳には『ごろごろ……』って腸が動いてる音しか聞こえないんだけど。
「これからは三人で暮らそうな……。この子と、リッキと、ソレで……。あ、やっぱり卵を育てるなら、温かい毛皮とかが欲しいよな」
ああ、ドラゴンって卵から生まれるんだ。
「くひひっ! あ、今お腹蹴っ――」
「卵が蹴るわけねーだろこのチビドラゴンがああああああッ! もういいわ! いい加減にしないさい!」
俺はシャンヘルちゃんを抱き上げて、がくがくと揺さぶる!
ええい人が大人しくしていれば嘘に嘘を重ねおってからに!
「きゅうぅうう!? 赤ちゃんが死んじゃうぅうう!?」
お腹を抱きしめて叫ぶシャンヘルちゃん……が、そこには誰もいませんよ!
「もう茶番は終わりだ! そもそもさっきまでぺったんこだった腹がすぐに大きくなるわけねーだろ!」
「なるっ! なるって! だって卵だし!」
シャンヘルちゃんが俺の腕の中でじたばた暴れまくる。
「ああん!? じゃあその卵とやらを産んでみろオラァアア!!」
シャンヘルちゃん地面に卸して、まんぐり返しの格好――いわゆる恥ずかし固めで拘束する!
「や、やめろバカぁ! は、放せぇ!」
シャンヘルちゃんが『いやいや』と首を振って暴れるけど、不自然な体勢で体に力が入らないのか、いつもの半分の力でも余裕で抑え込めるわい!
「きゅうぅっ……何かこの恰好、は、恥ずかしいよおう……」
シャンヘルちゃんがお股の部分を両手で隠して真っ赤になってる。
ほう、恥ずかしいのね?
わかったわかった、それなら――
「……ちゃんと正直に謝ったら許してあげる」
ここでシャンヘルちゃんが正直に『イモ食べました、ごめんなさい』と言ったら、俺は紳士的にこの場を収めようと思う。
だが、もしもここまできてとぼけるなら――
「……赤ちゃんだって言ってんだろ」
シャンヘルちゃんが視線を逸らしながら小憎たらしくもそう言い放ってきた。
いいだろう、紳士の時間はここまでだ。
「……そうかい。あくまで認めないっていうんだね……残念だよ」
シャンヘルちゃんのお腹を何度かぷにぷにする。
腸よ……動け、動きまくれ……。
「な、何やってんだよリッキ……」
「……さあ、なんだと思う?」
お腹をぷにぷに……押したり、引っ込めたり……。
「……知ってるかいシャンヘルちゃん? おイモに含まれるセルロースさんは、胃では全部分解されてくれないんだそうで、腸の中で発酵して、ガスが出来るんだよ?」
お腹をすりすり……。
「きゅうっ……そ、それってまさか……イモを食うと……っていう、あの噂の事か?」
シャンヘルちゃんがものすごい不安げに俺を見上げてきた。
そう、その噂の事です。
「本当は今、ちょっとオナラしたいでしょ? 実は我慢してるでしょ?」
シャンヘルちゃんは何事もなく首を振ったけど――汗は嘘をつかない。
今、チャームポイントのおでこに汗がかすかに浮かんでる。
そう……話を聞かされた事でシャンヘルちゃんはお腹に意識を向けてしまった。
気づいてしまえばもう遅い。
「きゅ、きゅうっ……は、放せよぉ……こ、このままじゃ――」
「俺はこのまま、君のプリップリップーを顔に浴びる」
「!?」
シャンヘルちゃんの額に、じっとりと汗が浮かんできた。
「じょ、冗談だろ……?」
「そして深呼吸もする。しかもケツに鼻をくっつけて」
「!?」
もうわけがわからないといった感じにシャンヘルちゃんが目を白黒させてる。
「全部吸い取ってあげるからね。シャンヘルちゃんのオナラのか、ほ、り……」
俺は最後に『ニコッ』って笑ってお腹を『ツン』とつっつく。
決まった……完璧にこれ変態だろ。
さあ、盛大に恥ずかしがるがいいや!
「へ、変態ぃいいい!? や、やだあああ!」
よっしゃあああ!!
超恥ずかしがってる!
大成功だわ!
「ほら! はやく! ハリーハリーハリー!」
俺は調子に乗ってリズミカルにシャンヘルちゃんのお腹をポコポコと叩く!
うははは! いい音するじゃないの!
「きゅぅうううっ!?」
ぐっ!
シャンヘルちゃんがじたばた暴れ始めた!
すげえ力だ……だけど――
「ヌゥハハハハハ! 甘いわあああ!」
俺は足まで利用してシャンヘルちゃんの体をガッチリと拘束する!
「や、やあー!?」
からだをよじる事もズラす事もできずにシャンヘルちゃんは体を震わせるだけで何もできなくなった。
「ぎゅうぅ……」
そして――その時はやってきた。
シャンヘルちゃんのお腹からかすかに『ぐぎゅるる……』ってな音が鳴る。
間違いない、これは……放屁を我慢してるな!
「うん? 何だか今、音がしたよ? ねえどうかしたのかな? ねえねえ? もしかしてもうプリっちゃう? ねえシャンヘルちゃん? プリップリップーですか? ブホホモワッしちゃいますか? ねえねえ……クック……」
シャンヘルちゃんのお腹に手を当てて、優しくスリスリ――間違いない、腸が活発になってる。
もってあと1分といった所か。
「ひ、ひんっ!? わ、わかったよおう! 食った! 食ったぁ! いっぱい食ったからもう、もうヤバいんだって! 悪かった! ソレが悪かった! だから勘弁してくれ!」
シャンヘルちゃんの体が震えだして、顔にはもう汗がじっとりと浮かび、ケツが小刻みに震えてる。
さーて、十分恥ずかしい思いはしただろうし、そろそろ許してあげるかね。
「まったく、最初から素直に謝っておけばよかったものを……」
俺は腕に込めた力を抜いて、シャンヘルちゃんを解放――できない。
「あれ……何やってんのシャンヘルちゃん」
シャンヘルちゃんが俺の頭を足でがっちりと抑えてる。
「も、もうだめ……う、産まれちゃう……」
「はっ!?」
「『は』じゃ無ぇよ『ヘ』だよ! もう、もう、もう……!」
シャンヘルちゃんが顔を真っ赤にして、歯をぐっとかみしめて、目に涙をためながらぷるぷると震えてるのはいい、これはいいけど――
「ちょ、待て! 待て待て待て待て待て!?」
ぬ、抜けない! 頭が抜けないのはよろしくない! プランD、所謂ピンチですよ!
「あっ……」
突如として、シャンヘルちゃんの体(主にお尻から)力が抜けて――
「ギャァァァァァッ!!」
俺はその瞬間AC○A(アーマー○コア・フォー・ア○サー)に登場してくる逆流王子のセリフを、どうしてか頭の中で思い出していた。




