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まぞくといっしょ  作者: 黒梵天
第一章 白銀の鎧と悪魔の少女
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ラッキースケベのお約束

 異世界生活――たくさん日目。

 まだカレンダーは作ってない。

 体感的にまだまだ四ヶ月ちょいぐらいな感じ。

 まあそんな感じて今日も異世界生活スタートっす。


「おはようリッキ。朝だぞ」


 ここはベッドの上。

 鳥の囀りと木々のざわめきとともに、彼女は俺を起こしにやってきた。

 時刻であればまだまだ六時前なのだろうが、彼女は毎日きっかり正確にこの時間に起こしにやってくる。

 しかしまだまだ体と心は睡眠を欲している。きっと季節のせいだろう。

 心地よい温かさと穏やかな風、言うなればそれは誘惑だ。

 そうして意志が薄弱で未成熟な俺は、かの誘惑に打ち勝つことができず、そのまま布団という、ただの一枚の厚い布からすら出る事が出来なってしまうのだ。

 彼女はこんな俺に呆れてはいないだろうか。怒ってはいないのだろうか。

 いいや、呆れていないからこうやって毎日起こしにきてくれるのだろう。

 まるで幼馴染のように、恋人のように、優しくはないが毎日決まった時刻に、しっかりと俺を起こしてくれる彼女は俺を見捨てる事はしないのだろう。

 だから俺は、彼女に、最大限の感謝をすると共に、今日とて彼女の優しさに甘えてしまおうと思ってしまっているのだ。

 それがある種のコミュケーションなのだと、信じて。

 ――なんつって。

 んぐー……。

 まだ無理……眠い……。

 布団のスキマからエクセリカちゃんの姿を覗く。

 ――チラッチラッ……。

 手を腰に当てて片足に体重を掛けてモデルさんのポーズのようにして『まだか?』といった感じに足をトントンしてる。

 ――ほほう、今日も見事にスパッツが食い込んでますな。

 もしも俺が寝起きが悪くなけりゃ、あれをガン見しながら朝勃ちをこっそりと、静かに慰めるところだが……。

 だが正直な所、朝は性欲よりも睡眠欲のほうが高いわけっす。

 もそっと寝たい。


「ほら、いっつもこんなに私に手間をかけて……。私はお前のお母さんじゃないんだぞ?」


 そんな事いったって朝の微睡は大事っすよ……。


「こら、リッキ! 起きないと鞭で叩くぞ!」


「サーイエッサー!」


 布団をかっぱいですぐさま立ち上がりますよ俺は!

 そんな事言われたら一発で目が覚めるわ! ほんっとにあれは痛えのよ!?

 馬のケツひっぱたくヤツでしょそれ! 人間の柔肌叩いていいシロモノじゃないよ!?


「ふふっ! 本当にお前はこれが怖いんだな? ほら、ケツを出せ、引っ叩いてやる」


「お、起きたから! 起きたからやめて!」


 あれでケツ叩かれたらもう一日中座るのが辛くてたまらんのよ!?


「うーん。私は最近こう思っているんだ。この痛みをこの時間に毎朝繰り返せば、自然と起きれるようになるはずだとな? どうだろうか?」


 パブロフの犬!? 条件反射!?

ってか、すっげぇ楽しそうに笑いながら鞭をぶんぶんするのやめてくださいよ!

 シャレになってないよ!


「あ、飴ちゃんくれなきゃ起きないっすよ。人はパンのみにて生きるにあらずです」


 パンがなければケーキを食べればいいじゃない。

 どっちもこんな時に使う言葉じゃないわ!

 自分中卒だから頭悪いよー……こういう時どんな事を言えばいいかわかんないわー。


「ふむ。飴と鞭というわけか。じゃあお前にとっての飴とはなんだ? まさか本当に飴が欲しいわけじゃないだろう?」


 あ、うーん。

 真面目に『じゃあどんな飴が欲しいの?』って聞かれても困るなあ。

 アルシラさんだったらあのおっぱいに顔をうずめて『ぱふぱふして欲しい』とか言えるけどエクセリカちゃん全然おっぱいがないからいいとこぺたぺた――。


「いでぇ!?」


 背中に鞭が飛んできたぁ!

 問答無用で叩くのやめてくださいよぉ!


「お前、今すごく失礼な事を考えなかったか? うん?」


 人の心でも読めるのかこの子は!


「私の胸を見ながら、なんで悲しそうな顔をしたんだ? 言ってみろ」


 ああ……俺そんな露骨に残念そうな顔してたんだね……。

 というかそもそもなんで俺無意識にエクセリカちゃんのおっぱい見ちゃったのよ。

 女の子ってそういう視線に敏感なんよ? エクセリカちゃん男勝りなところあるけどやっぱり女の子なんよ?


「いや、なんも、見てないっす。たまたま――ヒギィ!」


 あーいだーい!

 その鞭絶対人を殺せるよ! 痛みで人を自殺に追い込めるシロモノだよぉ!

 こういう暴力系ヒロインやめてよぉ! 飽きてるのみんなー!


「そうか、そんなに痛かったか。すまなかったな。さあ、それでは次にお前にとっての飴をやろう。何が欲しい? うん?」


 鞭を手から消して、俺の方を笑顔を浮かべて見てくるけど、エクセリカちゃんの目笑ってない、絶対キレてる。

 もしかして、実はすげえ胸にコンプレックスあったのか……?

 俺はもしかしたら逆鱗に触れたのか……?

 いやいや、大きい大きくないはそんなに関係ないよ? 俺ちっぱい大好きだよ? エクセリカちゃんの胸だって最高だよ?

 でも、エクセリカちゃんのちっぱいを、自分の思うがまま、欲望の赴くまま好きにできるってわけじゃないでしょ? 吸ったり舐めたりできるわけじゃないでしょ?

 おっぱいが大きければ顔うずめて楽しむだけでも十分だったりするわけっすよ。


「でもエクセリカちゃんのちっぱいじゃ、顔うずめてぱふぱふできないし、そんなに気持ちよくなさそうだし、それじゃあそんな褒美なんていらないっすって事になるわけで。そうなってくるとやっぱり、ぷにぷにのお尻だとか、そのスパッツの所で柔らかそうに膨らんでるおまん――心の声が漏れてる!?」


 最後まで言わねーでよかったああああ!!

 びっくしたー! びっくしたー!

 ――ってもう遅いわぁあああああ!!


「……そうか」


 お、おいィ……? どうしてエクセリカちゃんは俯いてプルプルしてるんだ? まさか本気で俺をしばき殺すかどうか悩んでるのか? 

 ちょ、なんか喋ってくだしあ……。沈黙が怖い……。


「……そうか、お前への飴は、そういうものだったんだな? そしてきっと、お前は今までずっと! アルシラのものと、私のものを! 比べていたんだな!? ああ、わかった、わかったさ! このスケベ! いいだろう! お前がどれだけ失礼なことを考えていたのか教えてやる! ここまで言われて黙っていられるか! このっ!」


 でえー!?

 ちょ、ちょっと! どうして肌着脱ぐの!? てかエクセリカちゃんノーブラっすか!? あ、ブラするほど無い――って、鞭が飛んでこねえ!? 逆に怖い! 逆に怖いよエクセリカちゃん! やめて! そんな真剣な顔で俺を見ないでぇ!?


「ほら! こい! こいよリッキ! 偏見なんて捨ててこの胸に飛び込んでこい! どうした! 怖いのか!」


 ちっぱいが怖いわけねーだろ!

 怖いのはエクセリカちゃんの反応だよ!

 そんな鬼気迫る顔で両手を広げられても怖いだけだよ!


「ちっぱいなんか怖くねぇ! 飛び込んでやるぁああああ!」


 おいィ!?

 俺は何言ってんだよ!

 コマ○ドーごっこしてる場合じゃねえよ!


「嘘をつくなよリッキ! 本当は怖いんだろ! ここにちゃんと胸があったら、お前は間違いを認めなくちゃならないんだからな! 来ないのか? ほら、どうした、弱虫め! お前がこの胸をおっぱいだと認めたあかつきには、この鞭でじっくりかわいがってやる! 泣いたり笑ったり出来なくしてやる!」


 サー! ハート○ン軍曹ですかあなたは! サー!

 ――ぐっ、しかしここまで言われちゃ俺だって黙ってられんぞ……!

 だが、勝利は見えてる。

 どうせあの胸には何もない!

 山もなければ谷もない!

 山なし、オチなし、行き場なし、だ!

 ――それはやおいだ、全然意味が違う。


「ぐ……。今なら、まだ間に合うんだぞ……。引き返せるんだぞ、エクセリカちゃん……! 間に合わなくなっても知らんぞー!」


 だがしかし! 

 俺がこの弁天山以下のエクセリカちっぱい山を登頂した所でどんな得があるというんだ?

 確かにそのすべらかな肌やら甘そうな苺色の突起は登るに値するかもしれん。あわよくばペロペロしたっていい、というかしたい!

 だが、だからと言って登頂後に待ち受ける鞭は不可避の断罪ってやつだろう!?

 認めても鞭! 否定しても鞭!

 どうしてそんな恐ろしい鞭前提の飴ちゃんを舐めなきゃならねえんだ!

 ――全部自分の口がペラペラと喋ったのが悪い。この口めぇ! マジでチャックしてやろうかぁあああ!!

 ――はぁ……もうだめだ……おしまいだ……。


「悪かったよ……謝るっすエクセリカちゃん……。もうその胸の事なんか絶対言わないからどうか鞭だけは勘弁――」


「うるさいばか!」


 うおー!? 俺の頭を強引に胸の谷間ちゃん――いや、谷間っていうか。何だかその……なだらかな傾斜っていうか、あんま起伏ねえけど――に押し付けてきたんすけど!?


「うぼー!? え、エグゼリガぢゃん! ぐるじいがらやべでね!? んぐおー!?」


 できてねえって! 谷間なんかねえって! 全然――。


「むぐ!? ふおお……!」


 ――ある。

 ふわ……。

 何これぇ……。

 おっぱいが、そこにあったよ……。

 っていうか、出来た。


「どうだ! あるだろう!?」


 はひ……ありますぅ……。

 もうなんか、すっごい一生懸命に端っこから集めてきて、それらしいものができちゃいましたねえ……。

 すごぉい……やわらかぁい……。

 女の子の体って不思議……。

 寄せてあげるブラが売れるわけだわ……。

 あ、それになんか、やっぱり甘いような匂いもして……。

 んほぉおおおお!!!


「はふ……。うっ! ふぅ……」


 あっ。

 やべっ。

 最近ご無沙汰だったから手すら使わずに……。


「二人ともー? ご飯冷めちゃ……」


 え……?

 あ、アルシラさん……?


「ごめんなさいね、お取込み中だったのに……。でも、こんな事を言うのは無粋なんですけど……できるだけはやく済ませて下さいね? せっかくの美味しいご飯が冷めちゃいますよ? うふふっ」


 あ、あ、あ、ああああああ!!


「ぶべっ!? ふ、ふおおお! 違うんです! これはそういったやらしーことじゃないんです! ほんとです! これはいわゆる飴ってやつでして!」


 正気を取り戻したエクセリカちゃんが俺を床に投げ捨ててきたけど、別に今はそんな事どうだっていい! 弁明しねえと! 誤解をとかねえと!


「そ、そうだ! 私が人間といやらしい事をするはずがないだろうアルシラ! 勘違いしないでくれ!」

 

 そうそう! エクセリカちゃんだって手をばたばたさせて必死に言っているんだから、ちゃんと聞いてあげて!

 ――ダメだ! 聞いてないよ! アルシラさん聞いてくれてないよ!

 ほっぺた染めながら『うふふ、あらあら』とかずっと言ってるだけだよ!?

 待って! お願い話を聞いて!? 帰ってきて!? 行かないで!?


「……リッキ。すまん、私はどうやら勘違いしてた」


 え、その鞭は何? どうしてそんな鞭を手で『ポン……ポン……』てしながら、真剣な顔つきで俺を見るの?

 俺、こういう展開好きじゃないなあ。

 ほら、あれでしょ?

 ラッキースケベの後のお約束『このバカ犬! バカ犬!』でしょ?

 いやだなぁ。俺ってば、暴力系ヒロインってちょっと苦手なのよねぇ……。

 可愛いければ許されるって思うかもしれないけど、実際あれって不条理な事だっていっぱいあるのよ? なんで怒られないといけないのっていっつも思うんす。

 きっと汚い世間様の圧力で、それ以上の事書いちゃいけないから、作者は泣く泣くそうやってそういうお話を入れてえっちな展開を止めてるんでしょ? ヒロインがかわいそうだよ! 主人公も!

 義を重んじる騎士様なら、この不条理をわかってくださいますよね?

 そう、俺はエクセリカちゃんにはそういう事して欲しくないなーって思ってるの。

 あ、だめですよね。

 許されませんよね。

 そうですよね。


「ハハッ。ワロス――痛ぇ!?」


 やっぱちょっと家に帰りてえええええ!!

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