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まぞくといっしょ  作者: 黒梵天
第一章 白銀の鎧と悪魔の少女
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プロローグ01 タイトルでは、ネタバレしないお約束。あ、登場するヒロイン全部人間じゃねっす

 このお話には『パロ』『メタ』『変態』『ニート』『オタク』『最強(予定)』『ハーレム』『異形』『おバカ』の要素が多分に含まれていきます。

 そのクセ人が死んだりする事もあります。

 タイトルのわりには『ほのぼの』しているわけじゃないかもしれません。

 苦手な方にも読みやすく……なっているかはわかりません。

 技術的にも至らない点はありますが、どうぞご容赦下さい。

 テンポよく、さっくり読める小説目指して頑張っていますので、何卒お付き合いお願いします。

 青い空、白い雲、なーんて始まり方は今時流行らないかもしれないさ。

 でも俺がいるとこってすっごいのどかなのよね。

 ここはちょっとした湖畔。

 そしてすぐ近くには森がある……ってか森しかない。

 鳥の声、木々のざわめき、風の音。

 こんな感じのなんとも清々しい川柳まで思い浮かべるぐらい静かな所。

 でも、だけど、今そんなのどかで静かな所でさ――


「待てぇ!」


「待てと言われて待つヤツがいると思うなよぉ!?」


 俺ってば今、生首小脇に抱えた美少女に追われてるんですよぉおおお!!


「どぼじでぇええええ!?」

 

 木々を避けて土と石を蹴りながら走る、走る、走るッ!

 お、俺は今、全力疾走で森の中をかけているわけだけど、もう足の筋肉とか乳酸たまりまくってパンパンだし、息切れなんかとっくに過ぎちまってるんですよ!

 だってのに首なし鎧の化け物少女、いわゆるあれだ、RPGのゲームに登場してくるデュラハンってやつが執拗に俺を追いかけてきて――


「目を! 目を潰すしかないんだ! 私の素顔を見たんだから!」


 目を潰そうと企んでる!


「どうしてそんな理論になるの!? そんなの絶対おかしいよ!?」


 だから限界過ぎたって逃げるしか道は無いんだよぉおおお!!

 しかも馬のケツひっぱたくめっちゃ堅そうな鞭をぶんぶん振りまわして追っかけてくる首なしの鎧ってのは、未成年がみたらトラウマもんじゃないか……小脇に抱えてる生首顔はすっげぇかわいいし俺は未成年じゃないけれど……。


「ひぃっ……ひぃいいいいッ!」


 あーちくしょう! なーんでこんな事になったんだよ!

 こんな時、ゲームなら回想シーンが挿入されるもんだろ!

 誰か説明してくれよ!

 

 ――あれは今から何時間前の事だろうか。


 萩原律樹25歳、童貞。あと五年で魔法使いだぜ、イエーイ!

 ――イエーイじゃないよ! 本当は早く捨てたいよ!

 まあ大筋に戻ろう。

 半引きこもりみたいな生活してた俺は、深夜コンビニにタバコを買いに行ったわけだよ。しかも親の金で。

 そんな嗜好品は自分で働いて稼いだ金で買えって? わかる、その理論はわかる。

 だけど就職難の時代だし――いや、言い訳はよそう、確かに俺は甘えてる。

 だけど全然働く気が起きないんだもの。

 その気力のなさに後付けで理由を付けるならいくらでも付けられるけど、そんな事したって俺が底辺である事に変わりはないのだし『ごめんなさい、明日から本気出します』と頭を下げるぐらいしか――開き直るなよ、だから俺はダメなんだ……。

 ……それはさておき、そんなわけでタバコを買いに出かけて、家に帰ってくる帰り道の途中にある小汚い公園をふと見ちゃったわけ。

 まぁ深夜だし、お化けとか怖かったし……。

 ほら、人って怖いもんを見たくないわりには、気になったらそっちに顔を向けちゃうもんなんだよ。

 俺も例外なくそうやって顔を向けたらば、公園の砂場んとこに謎の次元ゲートらしきものが開いてたわけだよ。

 なんでそれが次元ゲートだってわかったかって?

 だって見たまんまこれ次元ゲートだろって形してるからわかるよ!

 100人いたら100人が『あ、これ次元ゲートですね』って言っちゃうぐらいの次元加減だったんだから――いや、嘘ついたわ、SF映画好きだとかアニメ好きだとかじゃなきゃわかんねーや。

 ……もしかしたら俺以外わかんねぇかもしんない。

 心配になってきた……。

 まぁちょっと解りづらい人の為に説明しておくと、FPSゲームに登場するポ○タルみたいな感じの穴で、その穴ん中にはこう、キラキラぐねぐねうにょうにょと虹色の水銀みたいなんが波打ってんの。

 あ、わかんないかな……オタクでもわかんないかなこれ……?

 ……俺はオタクでも一般人でもないんだろうか……。

 ――いいや、俺はオタクだよ!

 でもオタクで得した事って、オタク同士ならすぐに仲良くなれるとかそういった事ぐらいだし、世間様の目はわりと厳しいからデメリットばっかりで嫌になっちまうよね!

 ただ、俺は今回そんなマイナス要素があったとしても、身に余るような得をしたっちゃ得をしたんだ。

 何せ次元ゲートなんてものが出現しても混乱する事もなかったし、逆に『オ、ナイスデザイン』なんて小粋なジョークぶちかましてそいつを間近でじっくり観察する事だってできたわけなんだから。

 ……ただ、それが幸運か不運だったのかってのは、一概にどうとは言えない。

 だって、俺はそん時めっちゃテンション上がってたわけで、もう足元に小さな段差があるなんて事には気づかなかったわけで。

 辺りも暗かったし、興奮してたし、俺はよく気分があっちこっち飛ぶ落ち着きのない人間だったりするわけで――端的に言おう。

 ――落ちちゃったの。

 次元ゲートの中に。

 ……そしたらもうあれだよ、ドラ○もんの時空間みたいなところをすげぇ勢いで真っ逆さまに落ちていって、ようやく抜け出したと思ったら今度は空から真っ逆さまだよ!

 ラ○ュタなら下に少年がいたりして『親方! 空から髭と髪の毛もっさり生やしたキモい男の人が!』なんて叫んで逃げるとこだよ。逃げんなよ! 受け止めてよ!

 だけど運がよかったよねー。

 だって下が湖だったもんね。

 ――ボッチャン。

 そんなわけで俺は奇跡的に命を拾ったというか、繋ぎとめた感じだったんだけど、そっからが一番大変だったなんてこの時ぁまだ全然気づかなかったね。

 いやもう泳いで岸にまでたどり着いて、飲んじまった水をげーげー吐いてみっともなくその場に突っ伏してたんだけど、何とか落ち着いて辺りを見渡してみると、裸の女の子がいたわけですよ。

 金髪の長い髪、聡明そうなおでこ、青い綺麗な瞳、小さくて可愛らしい鼻、ピンク色の二つの突起と起伏のない山、真っ白な肌とぷっくりとした丘に愛らしい谷。

 まさに美少女! 無毛地帯! ちっぱいも素晴らしい!

 そりゃあチ○コ勃ったよ。もうギンギンだったね。

 呆気にとられてこっちをぽかんと見つめて裸を隠そうとしないんだもの、この時の俺はここが何処だとか、何でこうなったとかそんな事を何一つ考えず、ただひたすら女の子の生の裸をしっかりと目に焼き付ける為にガン見したよ。

 だって童貞でオタクでイケメンでもなく金ももってない俺が、こんな美少女の生裸見る気かいなんてきっと二度と無いと、そんな事思っちゃったんだもの!

 でもさ、きっと俺は悪くないよ。

 こんな湖で水着も着ねえで裸になってるんだぜ?

 見られたって文句言えないっしょ!?

 ……だけどなー、気づかなかったなー。

 この女の子が、かの有名なデュラハンだって事なんかこれっぽっちも、一ミリたりとも気づかなかったなー……。

 気づくわけないよ! 見た目には普通の女の子じゃねーか!

 何か魔法みたいな事して白銀の鎧着て、自分の首抱えながら鞭振り回して追いかけてくるまで全っ然わからんかったわ!

 ……はい、そんなわけで俺は、多分異世界っぽい所にきてるんじゃないかと思います。

 おかしいな……異世界モノってまず神様に会って対話したりするんじゃないの?

 普通こういうのは異世界にやってくる前に神様がチート能力くれたり、俺に特殊な能力とかが備わるとかいうあっつーい展開が待ってるんじゃねえの!?

 ちくしょうめぇえええッ!

 

 ――以上回想終わり!


「ぜひー……ぜひー……」


 結局誰も回想シーン作ってくれなかったから逃げながらいっぱい回想しちゃったよ!


「……も、もう追いかけて――」

 

 振り返って確認――だめだぁあああああッ!

 まだ追いかけてきてるゥゥウウ!

 しかも回想してる間に距離が縮まってるゥウウウッ!

 いやだああああ死にたくなあぁああああい!!


「待てと言っているだろう! このっ!」


「げぇ!? 何それェ!?」


 デュラハンの子が手もっていた鞭がにょろにょろと伸びてるんだけど!?

 しかもアレ絶対全力投擲で投げようとしてるよ!


「――ふっ!!」


 デュラハンの子が止まって……大きく……振りかぶって……投げました!


「いでぇ!?」


 見てる場合じゃねえよ! 避けろよ俺!?


「ヴォー!?」


 なんか鞭がさっきよりもっと伸びてロープ状になってきたよおおお!? 

 ひぃっ!? 足に絡みつくゥ!?


「あおー!? ぶべっ!? ウーップス!?」


 うぐ……そのまま盛大に大転倒して顔を地面にキス――嘘だろ!?

 俺のファーストキスはこんな固い地面かよぉ!?

 大事にとっておいたのに――ただ機会がなくて余ってただけだわ……。


「さあ……観念しろ」


 キャー!? 落ちてる鞭をまたもや拾って、ゆっくり近づいてくるゥ!?

 ファーストキスどころか視力まで、命まで失っちまうよォ!


「シッ――」


 鞭を振り上げてくるよぉ! 嫌だぁ! どぼじでごんなごどずるのー!?

 こうなったら――。


「うおー! バリアー! バリアー! 俺無敵だから! 無敵だから!」

 

 顔、全力ガード!

 ガキっぽい? バカ! 何とでも言ってくれ!

 ここは異世界だ! きっと、きっと魔法が発動して――


「何をわけのわからない事を! ええい! その手をどかせ!」


 発動しないいいいい!


「い、いやだああ! どかしたくないいいい!」


「それならば力づくでだ! この――」


 ピィー!? すごい握力で俺の腕をメキメキと掴んでくるよお! いでぇえええ!? いでぇえええよおおお!! この子の握力一体なんなのぉおお!?


「エクセリカ、何をしているの?」


「何をしているだと!? 見てわかっ……ああ、アルシラじゃないか!」


 背後から澄んだ声がしたと思ったら、どうしてかデュラハンの子は『ちっ』とか舌打ちしながらすっごい冷たい目で睨みながらも、しぶしぶといった感じではあるけれど、握っていた腕をなんとか解放してくれた……。


「く、くぅ……」


 そのまま土下座の姿勢になって、頭全体を庇うように丸まる。

 う、うう……痛かったよお……。

 あんな万力みたいな力で締め付けられたらそのうち血がそこに溜まって、バ○って漫画で見た、腕が『パンッ!!』破裂するアレをそのままされるところだったよ……。

 ……それにしても一体どういうことなの?

 俺助かった感じなの……?

 謎の第三者の登場によって、展開が大きく変わる的な感じなの……?


「あら、人間がどうしてこの森にいるのです?」


「わからん……。きっと王国のスパイか何かだろう」


 土下座の体勢のまま二人の話に聞き耳を――ちょ、なんか雲行きが怪しくなってきてるヨ!?


「おかしいわね……。もしスパイさんだったら、魔獣がいっぱいいる森を抜けてこないと辿りつけないはずですのに、なんだかこの人……うふふ。弱そう」


 うん、弱いよ! 俺ただの人間だよ!

 伝説の勇者でもないし手練れの剣士でもなんでもない、普通の人間だよ!

 異世界にきたっていうのに身体能力もヒキコモリのまんまの貧弱な……人間だよ……。


「確かにな……。だが人間には違いない。ここで殺すに限る」


 なんでそんな物騒な事言うのぉ!?

 人間だって生きてるんだよ!? 掛け替えのない命なんだよ!

 やべでー!


「待って待ってエクセリカ。そんな事したら悪い人間と同じでしょう? とにかくこの人間さんが悪い人かそうでないか、それを知ってからでも遅くはないと思うの。……ね、人間さん? あなたは悪い人間ですか?」


 耳を撫でるような優しい声が聞こえる……。

 質問内容は『俺が悪い人間か、そうでないか』って事……?

 う、うーん……悪いか悪くないかで言えば、半ヒキでニートやって親のスネかじってのうのうと生きてるんだから悪い人間なんだろうけどさ……。そういった意味でなく、犯罪者だとかそういったもんで見れば俺ぁまっさらだーよ。

 だけど普通悪い人間って自分の事悪い人間だって言うのかな……いや、きっとここは正直に答えた方が良い。

 だってあのデュラハンの子が鞭ではたくのを止めてくれたし、こんな優しい声をしているんだもの……きっと天使か何かに違いないよ……。

 きっとすごく神々しい見た目をしてるんだろうなあ……。

 よし、正直に言おう。

 助かる道はきっとそれしかないんだ。


「は、はい……お、俺は、それほど悪い人間じゃないです……。い、生き物なんか食べる以外殺した事もありませ――悪魔だー!」


 速攻土下座スタイルに戻る。

 だ、だってそのご尊顔を拝見しようと目を開いた途端、捻じれた角を二本生やした青っぽい肌をもった、背中に蝙蝠の羽みたいなのを生やしてる女の人が目に飛び込んで来たら土下座スタイルで頭を庇ってブルブル震えたって仕方がないよ!

 う、ううー……悪魔だ……た、魂食われちまうゥ……!


「やっぱりこいつ! 悪い人間じゃないのか!?」


 ヒュッ!って音鳴った! 今ヒュッって言った!

 絶対鞭振り上げてる! やめて! 絶対それ痛いから!


「まあ落ち着いてエクセリカ。ねえ人間さん? どうして悪魔が怖いの? 何か悪い事でもされたの?」


 優しい声音だけど……い、いや、騙されるな、慎重に言葉を選んで話すんだ、俺。

 だって相手は、あ、悪魔なんだから……!


「さ、された事はないっす。で、でも、人間を誑かして魂を奪って、そ、それを食べるとか……食べられた魂は、転生もできずに一生苦しみ続けるとか……そ、そういった話を聞いた事があって……」


 どっかのアニメか映画かの知識だけど、悪魔は確かそんなような存在だったはず……。


「あは! 本当? そんなにわたくしは怖がられているのね! うふふ! あーおかしい! ああ、ごめんなさいね人間さん、笑ってしまって。でも、わたくしは別に、魂なんてどうやって食べればいいかわかりませんし、魔法もそんなに上手じゃないのよ? さあ、顔を上げて下さい人間さん、とって食べたりはしませんよ」


 ほ、本当だろうか、頭を上げた瞬間ざっくりなんて……。

 い、いや、今は信じよう。

 この人がこう言ってるうちは、デュラハンちゃんも俺の目を潰してこようとしないだろうし……いや、とにかくこの人に逆らったらダメだ!

 ……あ、あれ? もしかしてこれが悪魔の罠?

 こうやって優しくして、俺を洗脳する……。

 ぐぅ、どうすりゃいいのよ俺!


「可愛そうに……すごく怯えてしまって……。エクセリカ、あなた一体何をしたの?」


「べ、別に、ただ習わしに従って目を潰してやろうと……」


 そんな風習とか習性とかだかで俺の視力は奪われかけたの!?

 ああでも、俺顔も裸もガン見しちゃってたもんね……。

 そうだよね、文句は言えないよね。

 でも、あそこで見ないやつは男じゃねえよ!

 ――16歳の少女の裸をがん見するのはロリコンだけだろ、いい加減にしろ!

 ちげえ、俺は断じてロリコンなんじゃねえ!

 ……ロリもいけるってだけだ。


「じゃあその鞭を仕舞ってあげて? そんなものを出されてたら、この人だって恐ろしくて何もできなくなってしまうでしょう?」


「ぐ、ぬ……。わ、わかった」


「……さあ、人間さん。もう顔を上げてください。大丈夫、あなたがわたくし達を襲おうと思っていないのなら、わたくし達だってあなたをどうにもしませんよ」


 うう……。なんだかめっちゃ優しい人に思えてきたよ。

 結局、俺がこうやって土下座スタイルで震えてても、永遠にこのままってわけにもいかないし、ここは信じてみよう。

 どのみちそれしか道はねーんだ。


「は、はい……。た、助けてくれるんですかね……?」


 顔を上げてみる。

 う、やっぱり悪魔だ。

 ほら、森羅○象チョコってあったよな? あれのアス○ロットみたいな感じの風貌の女の人だやね……。

 あんなムチムチボインなボンテージ衣装じゃなくて、白いローブで肌を隠してるけどさ。

 邪悪って感じはしないけど、ちょっと怖いっす。

 いや、嘘ついた。すげー怖い、異種族怖い。


「この森に入った以上、帰すわけにはいかないのだけど……。うん、ここで暮らしてくれると言うなら、悪いようにはしませんよ。もちろんちゃんとお仕事もしてくれるなら、わたくしの家に下宿させてあげてもいいです。ふふっ、どうしますか?」


 腰に手を当ててすごく大きなおっぱいを跳ねさせて『ふふっ』って微笑んでくるんですけど……これが天使のような悪魔の笑顔……ってやつなのかな。

 ……え、てか、ここに着て半引きこもりでニートの俺が就職?

 就職先は奴隷か何かですかい?


「あ、あの、それって、奴隷とかじゃないですよね……?」


「もう! わたくし達はそんな風に人を扱ったりはしません! むしろ人間がそうやってわたくし達を魔族だのと呼んで奴隷に使っているのではないですか! 例え因果応報だとは言っても、わたくし達はやっていい事と悪い事の区別ぐらいつけられます!」


「あ、はい! ご、ご、ごめんなさい!」


 腕を組んでほっぺ膨らませてるけど……なんだろうな、もしもこれが普通の女の人だったらちょっと胸キュンしそうだけど――いや、悪魔少女もありかもしれない……。

 青っぽい肌はちょっと奇妙だけど、顔立ちはすごく……き、綺麗じゃね?

 ……てか、俺単眼少女とかハルピュイアとかアラクネとかアルラウネとかスキュラとかケンタウロスとかメスケモとか全然おっけーよ! 最高にヌけ――いや、下世話な話はここまでにしておこう……。

 まあ、とにかく美人さんですね……はい。


「アルシラ! こんな海の幸とも山の幸ともつかん男を迎え入れるなどと、皆が黙っているはずが――」


「それを言うなら海の物とも山の物ともよ、エクセリカ。あなた食人願望でもあるの?」


「あ、あるわけないだろ! 汚らわしい人間なぞ、気色悪い!」


 あははー……気色悪いっすよねー……。

 顎鬚も口髭も伸びっぱなしで髪の毛だってもっさりだもんねー。

 はあ……先に床屋いっとけばよかったかなあ……。

 でもさあ、働いてない身分の俺が床屋とかいくのすげー怖いのよ。

 だって一見で行くと『へえー! そうなんですかあ! それで、お客さんお仕事は何してるんですか』みたな事聞いてくるし、知ってる床屋だと『萩原君。最近お仕事どう?』とか聞いてくるじゃねーの!

 あれやめてくれよ! 答えづらいんだよ!

 いっつもいっつも『あーバイトっす。長続きしないんすけどねー』とか言わされるヤツの気持ち考えた事あんのか!? それでもてめえら接客業かよ!

 ――俺が普通に就職してりゃいいだけの話なんだから相手を悪者にするなバカ。


「ふふっ。どうやら食べられる心配はなさそうですよ、人間さん。あ、そうだ、お名前をまだ聞いていませんでしたね。わたくしはアルシラ。この先の村の村長の娘です」


 自分の胸に手を当ててニコッて笑うアルシラさん? の顔には、何だか人を納得させるだけのオーラを感じるんだけど……。

 でもさ、あ、悪魔が治める村ですよね……。それはもしかして魔界ってヤツかい……?

 いや、どう見てもここ、人間界的なところだよね……? 湖は青くて綺麗だし、緑も青々としてるし、太陽は燦々と輝いてるし、おまけに空気もうまい。

 ……まあ、アルシラさん? は自己紹介してるし、俺もすぐに自己紹介しないとな。

 やっぱり礼儀って大事っすよ。

 ――女の子の裸ガン見してギンギンに勃たせてたヤツが言う言葉じゃないけど。


「お、俺は、律樹です、萩原律樹」


「ハギワラリツキ? えーっと、ああそうでしたね! 人間の方は苗字と、名前というのがあるのでしたね。そうなると……お名前はハギワラさんですね?」


 あ、この世界は名前が先で苗字が後なのね。


「あ、違います。律樹が名前で萩原が苗字です」


「そうですか! ではこれからリス……リッ……」


 あ、噛んだ。

 わかるわかる、俺の名前って言いにくいんだよな。


「あ、リッキって呼んでいいです。親からもそう呼ばれてましたから」


 名付け親が言いにくいからって愛称で呼ぶのってどうなのよって思う。


「うふふ……ごめんなさいね。じゃあリッキさんとお呼びしますね。さて、こんな所で立ち話もなんですし、私の家にいらっしゃって下さい」


 うわー……女の人の家に行くの初めてだ俺。

 でも悪魔なんだよね……い、いや、関係ないか? もうなんだか頭がこんがらがってきてどうにも色々とわからん!

 なんだっていい! この世界の事を聞くチャンスだ!


「おい」


 よろよろ立ち上がってアルシラさんの後ろをついて行こうとすると、めっちゃ不服そうな顔したエクセリカって女の子が睨んできた……目潰しは、諦めてくれたのかな?


「見てるからな」


 すっごい冷たい声で言い放ってスタスタとアルシラさんの後ろに走ってくエクセリカちゃん……。

 これが『あなたの事、ずっと見てます』的な意味だったら別にいいけどさ、あの子絶対俺の事信用してないよね。

 いや、裸見たのは悪かったけどさ……いや、俺が人間だから?

 どっちもだろうなー。

 全部俺が悪いんだよなー。


「はあ……」


 いやあ、キモがられたり避けられたりするのは慣れっこだけどさ、あんな可愛い子から言われるとちょっと凹むよ。あの子デュラハンで人間じゃねーけど。首もとれるし。

 ……だけど今度から自分の行動には責任をもたねーとな、うん。

 ――ちゃんと責任取れるかどうかはわかんないけども……。


「リッキさーん! 置いてっちゃいますよー?」


「あ、はーい! すぐ行きまーす!」


 まあ何はともあれさ、今は何とかして色々とこの世界の事を勉強すんのが一番大事な事ですだよ。

 落ちてきた時空見上げたけど、次元ゲートなかったし、帰り方もわかんねーからな……。

 うっし、とりあえず命拾えてラッキーラッキー。

 ポジティブにいかねーとな!


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