命の水
振り返るが、誰もいない。
誰かに呼ばれたような気がしたのだけれど――・・・
少女はマニキュアを塗る手を止め、胸に絡み付いてくる黒い苛立ちを吐き出すように深い溜息を吐いた。
ここ数日時々感じる、声。
部屋で化粧をしているときでも、電話をしているときでも、寝起きでも就寝前でも関係なく。
痛みを伴うような、苦しい苦しい、声。
何を叫んでいるのかは聞き取れない。聞き取れないほど小さな声なのだ。
どこから聞こえるのかもよく分からない。
ただ一つ言える事は、その声は自室にいるときにだけ聞こえるという事だけだった。
気味が悪く、数日前に彼氏に話してみたが、彼は真に受けてはくれなかった。
「は?何ソレ。あれじゃね?心霊現象って奴!!心霊写真撮れるかもしんねーぞ」
揶揄する様なその口調に怒った。
あれ以来、彼氏には会っていない。
「はぁ・・・マジ最悪」
黒い苛立ちはどんどん肥大して、体にまとわりついてくるような不快感を覚える。
真っ赤なマニキュアを中途半端に塗りかけた爪。
もう続きを塗る気も起きない。
もう寝てしまおうと勢いをつけてベッドに転がった。
そのとき。
聞こえた気がした。
いつものあの声が。
いつもより大きな声で叫んだ「助けて」という声が。
翌朝、目を覚ますと雨の音が聞こえた。
その音に引かれる様に窓際に寄った少女は、窓枠に置かれた鉢植えを見た。
小さな、小さな鉢植え。
そういえば、いつから水をやっていなかったのだろう。
瑞々しく輝いていた葉は茶色く皺だらけになり、ピンと背を張っていた茎も渇ききり首をもたげている。
項垂れた枯れた草の向こう側で、雨は静かに降り注いでいた。
少女は鉢植えを捨てた。
もう、あの声は、聞こえない。
初投稿です。月読といいます。
読んでくださりありがとうございます!!初めてなので至らない部分が多いかと思いますが・・・
命の叫びを表現しようと思ったんですけど、どうでしたでしょうか。読み終わった後題名を見ると、題名の意味が理解できるかと思います。




