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invade  作者: ひまり
6/8

6、口説いてる?

どう訂正しようか考える俺の前で掛かって来た電話に出た千也さんは

またも仕事モードへ突入し、俺を意識の外に放り出す。



こんな扱い何度もされる俺って……



≪彼女の中にある『オレ』の存在がこれだけ薄いってこと?≫



はぁぁぁ......



吐息じゃなく、嘆息が出た



大きく息を吐き出すと

机に置かれたままになっていた彼女の名刺をポケットに入れて


彼女の邪魔をしないよう、先輩のとこに戻ってもう少し情報を貰うことにしたけど

思惑通りに彼女に興味以上のモノを持った俺は楽しそうに散々からかわれて、オモチャにされただけ



でも、そんなことはどうでもいい



「お陰で彼女と出逢えたからね」



楽しそうに写真を撮る姿

コロコロ変わるあの表情


もっとこのまま見ていたいけど



≪そろそろ行かないと、な≫



「また直ぐに会いに来るよ」



名残惜しげに小さく呟くと彼女の楽しみを邪魔しないよう、その場から静かに離れた。







その夜撮ったお気に入りの写真を添付して、今日のニュースをメールすれば



♪♪ ~ ♪♪ ~ ♪♪~



響からの着メロが鳴る




『マジ?マジでシノが来たの?』


あたしが声を出すより先に興奮状態の息子の様子に思わず笑ってしまう



「うん、驚いた?」


『ああ。侑一さんの人脈つーの?すげぇ!』



≪侑一さん、ね≫



親の勤め先の社長を名前で呼ぶのはどうかと思うけど?



あたしが今の会社に就職して暫らく経った頃、

響が社長と一緒に会社に現れた時は、本当にビックリした……



「独りになった佐和ちゃんのことがどうしても心配だって、息子君に頼られてね。

雇用主だけじゃなく、これからは佐和ちゃんの身元保証人になったから」


「身元……保証人?」



「そ。俺がお願いしたんだ。

離れて暮らしてんだし、千也が変な男に騙されたら困るじゃん。

何かあったら相談出来るようにってね。

そういうのって、千也は俺に言って来ないだろ?」


「何、ありえない心配してるのよ。あたしが幾つだか判ってるでしょ?」



ホントに響ってあたしに対して過保護なんだから!

前から思ってたけど、これって子が親に対してするもんじゃないよね?



しかも心配ごとが男性関係なんて―――――



―――― あるわけないのに




「……と、まぁ。こんなヒトなんで」


「そうだね。取りあえず変なヤツは近づけないから安心していいよ」



「ええ。侑一さんから見て合格だと思う相手なら、どうせなら紹介してやって下さい」


「了解。じゃ、遠慮なく」


社長が笑顔で告げた言葉に不覚にもドキッとしたけれど

それ以後そんな会話が出て来ることもなかったから社交辞令だと思っていたのに








「千也さん、おっはよ~。何してるの?」

「ち~やさん、ケーキ買って来た。お茶にしよ」

「千也さん、終わった?ご飯食べに行かない?」



主演ドラマの撮影があって忙しいはずの彼が何故にこうも現れるのか不思議で社長に聞けば



「男同士の約束だよ」


「男同士?シノ君と何かしたんですか?」



「シノじゃなくて、響君」


「響?あの子、何かまた言い出したんですか?」



要点を得ない会話に?マークが浮かんでいたけど

そこに息子の名前が出て来れば、話は別!


必死な顔のあたしを見て社長は一瞬驚いた顔をしたけれど



「あれだけシノにアプローチされてて、気付いてなかった?」


「アプローチ?」



「口説かれてる自覚もなかったワケか。佐和ちゃん、ある意味スゴイよ」



口説かれてる?



誰が?




………………え?




「ええ~~~っ!

く、口説かれてたんですか、あたし?な、何で?どうしてシノ君が?!」


「ブッ、クックック……そんなに驚く?

前にほら、響君に俺が見て合格の相手なら紹介していいって言われてたからさ」




――――― あ!




「思い出した?」


「で、でも!相手がシノ君だなんて……」



「タイプじゃない?」


「そ、そういうのはあたしじゃなくて、彼の方ですよ!

いくら何でもこんな年上紹介されたら迷惑ですよ。それにあたし、子供も居て…」



『離婚歴もある』と言い掛ければ



「ああ、そう言うのは気にしなくていいよ。あいつには全く関係ないから」


「は、い?」


遮られた言葉に目が点になるあたし



「あいつはちょっとワケありでね。

恋愛不信って言うか、女性……ま、愛情不信ってことかな?

裏切られるんじゃないかと怯えて、本気になれないんだ。

だけど心の中じゃ誰よりもそれを信じたい、欲しいと願っている。

だから俺はそんなあいつにこんな女性も居るんだって伝えただけ。

いくら可愛い後輩でもいい年の男を相手にそれ以上の世話なんか焼いたりしない」



さっきまでとは表情も声音も変わって告げられた言葉を頭の中で思索する。



「それなら……どうしてあたしなんですか?あたしこそ恋愛不信……男性不信なのに」


「ああ、それね。佐和ちゃんのは単なる経験不足ってだけでしょ。

それだけのことで『男性は』なんて一括りされたら、ハッキリ言うけど迷惑。

男性経験って言うか、この場合、人生経験って言うのかな?

この際、佐和ちゃん自身も経験値を積んだほうがいいと思うし、

シノのやつがイヤなら俺のことなんて気にせず振ってくれてイイからね」



厳しくとも納得出来る社長の言葉にあたしが頷きかけると

バタンと大きなドアの開閉音と共に



「……先輩、何、勝手なこと言ってんのさ。協力してくれるんじゃなかったワケ?

そんなこと言ってマジで振られたらどーしてくれんの?」



シノ君が現れて




真っ直ぐこっちへ歩いて来た彼があたしの背後に立つと




!!






――――― 抱きしめられた






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