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invade  作者: ひまり
5/8

5、初めて

更新に一ヶ月もかかってすみません!m(__)m

夏は苦手なんです~~~っ(涙)

「ひびき?」


「さっき言った佐和ちゃんの息子さん」



「何で息子が?」


「佐和ちゃんの入社後ここに来たんだよ。誤解が生じたら困るからってさ」



誤解?



「自分の親の話をするためにわざわざ?

そういう状況で育ったのなら母親から聞かされた一方的な作り話なんじゃない?」


「いずれお前にも解ると思うが、佐和ちゃんは何も言わない。

それに響君にそのことを教えたのは母親でも祖父母でもなく……、父親自身。

これなら信じるか?」



!!



「父親が……」


「佐和ちゃんにとって酷い内容だろ?

だからそれを口にするのは響君自身にとっても辛いんだろうな。唇を噛み締めていた。

きっと話すたび思い出すんだろう……、それを口にした時の父親の顔を」



先輩はその息子から聞いた時を思い出しているんだろう



歪む顔を見て俺の中で何かが弾ける




「何で結婚したわけ?否、離婚しなかったわけ?

母子家庭になるよりイイ暮らししたかっただけじゃないの?」



所詮、女なんて金なんだ



「どんな家庭でも……家族の居ない彼女にとっては大事な場所だったんだ。

何より響君の傍で一緒に居られるだけで、彼女は幸せだったんだと。

お前は誤解しているが、二人は決していい暮らしなんてしていない。

確かに旦那名義のマンションで暮らしてはいたが、

会社から給与が振り込まれる口座のカードは結婚後 旦那が取り上げたそうで

響君が10歳になるまで彼女がパートしながら生活費を稼いで暮らしていたそうだ」



何で……



「パート?」


「ああ。結婚したことで夫の扶養家族になっていたし、何と言っても響君は幼いだろ?

だから出来る仕事にも制限が大きくて、結構切り詰めてやっていたそうだよ。

でも響君が10歳になって彼が家のことは自分がするからと母親を説得し、それでようやく扶養から外れたんだと」



「どうして旦那の親に言わない?当然の権利だろ?

何で彼女だけがそんな大変な思いをしなくちゃならないのさ!」



納得行かない


そもそもそれは条件だったはず



「だよなぁ。俺もそう思う。だけどそれは響君が嫌がった。

それを言うと母親が金の無心を息子にさせたと勝手に解釈されて、引き離されかねない。

それに父親の『扶養家族』でいつまでもいたくないから、と。

響君が二十歳になって離婚したのは親権問題から解放されるから。

響君に10年我慢してと言われて彼女はその約束を果たした、それだけだと」



息子からの願いとは言え、10年は長かっただろう




「……愛されてるね」


「ああ。響君は佐和ちゃんを理想の母親だと言うし、

佐和ちゃんも響君を自慢の息子だって、すごくいい笑顔で言うからね」



寄り添って生きて来た母子の繋がり



俺には無かったモノ.............




≪だけど≫




「何で、俺?」


「お前はいつまでも過去に囚われすぎ。 愛情に飢えてるくせに

女を信用出来なくて、ただ肌を合わせるだけのSEXしかしてない。

佐和ちゃんは佐和ちゃんで、

独身に戻ったのに一度の失敗だけで恋すらしようとしない。

お前に佐和ちゃんを紹介したかったのは彼女ならお前の呪縛を解けるかもって思ったからさ。

ま、口説く口説かないはお前に任すよ」



≪成程…、ね≫



「でもさ。フツー、年齢差とか気にするモンじゃない?」


「ブッ、クックック~。

お前の口から年の差が問題だと?すっげぇ~、初めて聞いたぞ!」



そこって、そんな大笑いするとこ?



「俺じゃないけど」


「あ、そうか、佐和ちゃんか?年下…、そうか、そうだよなぁ」


ようやく気付いた先輩が考え込んで



「ま、それより恋愛する気にさせる方が問題じゃないか?」


次に頭を上げれば、単純明快な回答



「……だね。じゃ、先輩。協力ヨロシク」



話が終わり部屋を出た俺の目に彼女が映る




真剣に仕事をする女性を見るのは好きだが、先輩に聞いた話のせいか

彼女に対してはいつも付けてしまう色眼鏡が外れている。



背後に立っていても気付かない彼女にじれったくなって、

わざと顔を近づけて話し掛けると


彼女が無意識に取った反応に俺の方が戸惑った。




≪嘘……だろ?≫



まるで高校生

否、もしかしたら中学生レベルじゃないのか?


こんな初な反応をする女性に周囲の男が気付かないなんて有り得ないだろ?




どこまでが演技かを見破る為に

あえて首筋にそっと息を吹きかけ、顎を肩に乗せた途端


ビクッと背筋を震わせる彼女



その反応で判る


これが『素』だと




調子に乗って首筋に唇を這わせれば



震えるカラダ


堪える艶声こえ




≪ヤバ........≫



堪らず抱きしめれば大きく動く鼓動に彼女の素顔を感じて

嬉しさを誤魔化す為に軽いノリを装って痕を付けた俺に


迷惑だと握った拳を突きつけて来た。




…………参った



もうお手上げ、降参するよ




笑い続ける俺に呆れて仕事に戻った彼女はオレがこれほど傍で見ているのに

全然気付いてもくれない……って言うか



すっかり自分の世界に入っている



こんな扱われ方すら初めての経験で、クスッと笑うと

彼女の手元からチラシらしき紙を半分ほど横から取って


彼女を真似て折りながらそのチラシに目を通してた俺の目に



【佐和】



彼女の名前が……





名前だと思っていたのは苗字で、名前は【ちやこ】だと言う

見せられた名刺には確かに【佐和千也子】とあった


少しでも距離を縮めたくて名前で呼べば、年上に失礼だと拒絶され、

仕方なく呼びやすく切って『さん』付けすれば



「それ……初めてかも」



彼女の呟いた言葉にドキッとしたのは悔しいから内緒にするけど



『初めて』



彼女にとっての『初めて』を俺が得た



たったそれだけのことで胸がホクッとする




俺だけの呼び名にしたくて使用の限定を強請り、

どうせなら千也さんにも特別な呼び方をして欲しかったけれど

彼女の口から出たのは聞き慣れたモノにただ『君』付けされた、だけ



不満を口にする俺に苦笑いを浮かべた千也さんの目を見て

『オレ』のリップサービスだと思っていることが判る


仕事柄って言うより、これは作ってきたイメージのせいだろう





≪これって自業自得なんだろうな≫






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