2、接触
そこに居たのは昨夜取り上げられていた人物
――――― 俳優の【 篠崎ハルキ 】、その人だった。
「クックック…、さすがの佐和ちゃんも驚いたか?」
まるで悪戯の成功に喜ぶような社長の声を遠くに感じるほど
目の前の人から視線を外せずにいるあたしに、彼は穏やかな笑みを向けてくれて
≪その顔は……あの役の…≫
作られた笑顔にようやく強張った体が動き、あたしはホッと息を吐けた。
「社長も人が悪いですね。
彼のような有名人に会うなんて初めてですもん、驚きますよ。
コーヒーのお替りが必要になったら、いつものようにコール下さい。
それじゃ、どうぞごゆっくり。失礼します」
短く会話するとあたしは会釈をして、部屋を出る。
――――― その後、どんな話がなされていたのかなんて、この時のあたしに解るわけもなく―――――
暫く激しく動いていた動悸も
仕事を再開すれば直ぐにペースを戻して
ホームページの更新をし終わった頃には彼の存在すら頭になかったから
「すごい集中力だね」
いきなり耳元で聴こえた声にビクッと反射的に体が動くけど
驚きに声も出せないでいるあたしに
「へぇ......。不動産やのホームページってこうやって作ってんだ。ふぅん」
彼の方はいたってフツーにパソコンの画面を見ていた。
≪そりゃあね…≫
自意識過剰だって解っていても
もう少しズレてほしいとか、
もういい加減、飽きてほしいとか、
社長の知り合いに『もう帰ってくれない?』なんて思うのは
大変失礼だって判ってはいるけど
≪この手の男性に免疫ないんだから勘弁してほしいんです、社長~~~っ!≫
心の救済を求めて社長の姿を探そうと身動きした途端――――
「ひゃっ!!」
あ、あたしの肩に、彼の顎がっ!
そ、それだけじゃなくて、か、顔が……
顔がそこに在るんですけどっ!!
≪な、なんで?!≫
「ん......。へぇ、そっか。さわサンってココ、感じるんだ?」
楽しそうに話す彼の目を見て、何となく……ううん
≪すっごく……すっごく、イヤな予感がするんですけどっ!?≫
――――― 結果的にその予感は的中した。
肩に乗っていた顎がゆっくり動くと、首に彼の吐息を感じて
「……っ……ぁ、……っ……」
さすがに声を抑えはするんだけど、
どうしようもなく体が震えて止まらない..............
そんなあたしを彼が抱きしめるように腕で包み込む
≪ど…してこんなこと……現実にあっていいわけ?≫
パニック状態になっているあたしに
「……すごい音。クスッ。これくらいでそんなにドキドキしてくれるんだ?
でも、大丈夫?倒れたりしないでよ?んじゃ、せっかくだし。サービスしよっかな♪」
激しい動悸を茶化すような言葉
≪…ったく!ええ、ええ。どうせ年寄りよ!
そんなにからかうなら心不全でも起す前に離れてよ!≫
ムッとしているあたしの首にチクッと痛みが走る
「……は?」
こ、
これって……
キ、キスマーク?
もしや夢オチ……?




