自分にとって
「龍聖、仕事休むって」
「ダメだろうねー」
「だよなー…」
拓未はまだ立ち直る事が出来ずうーと泣いている。
「でも拓未より一回り以上上だろ?だったら結婚もするだろうし」
龍聖は周りに散らばった缶を回収しながら言う。
「そんなおばさん…」
「殺すぞ」
「言葉間違えました」
先程まで泣いていた人とは思えないかなり殺気立ったオーラと表情で拓未は龍聖を睨みつけていた。
「俺にとっては物語のような初恋のお姉さんなんだ。代わりなんていないんだよ」
「ま、見てたのは物語だけどな」
「あ?」
「ごめんなさい」
どうやら龍聖は一言多いようだ。しかしよくこんな二人が一緒に暮らしているものだ。
「そりゃ最初の入りは物語だったさ」
拓未は思い出すように上を見上げる。
「でもテレビでの活躍だったりイベントに行く度に、あ、俺の感覚は間違ってなかったんだなって」
ここまで言うと拓未はフッと笑って
「代わりなんていないんだよ。俺の人生には」
そう続けた。その表情は口角は上がっているものの、どこか寂しそうであった。
「結婚したかったの」
「もちろん」
龍聖の問に秒でサムズアップして答える拓未。
「でもたかが塾の受付の男が有名女優を…」
「現実を言うなぁ…」
拓未は先程とは違うベクトルのダメージを受けているようだ。
「なんか親戚のお姉ちゃんが結婚した子供みたいだな」
龍聖にそう言われ、拓未は呆気にとられた表情をする。
「考えてもみなかった?」
龍聖の言葉に拓未はゆっくり頷く。
「まっ、無理に切り替えろとは言わないさ」
そう言いながら龍聖はかき集めたビール缶を抱えて流しの方へ向かう。
「無理に切り替えようとして生徒に手を出して捕まったら困るし」
「俺をなんだと思ってんだよ」
拓未の返しを聞き、龍聖はフッと笑った。拓未もそれに同じように返す。
「さてと」
拓未はそう言いながら立ち上がる。
「今日も一生懸命仕事しますかね」
伸びをしながら仕事への意気込みを言葉にした。
「じゃ、まずはお風呂へどうぞ」
「へ?」
龍聖からの思ってもいなかった言葉に驚く拓未。
「かなり酒臭いぞ?後スーツも消臭剤かけとけ?」
龍聖に言われ、拓未はようやく自分がスーツで寝ていた事に気付いた。
「ウニウロで買った安価なやつかもだけど、それで寝たら変な折り目ついてダサいぞ」
「お前はおかんか」
拓未の返しにそうですけど?言わんばかりの表情で返す龍聖。
拓未溜息をつきつつ笑いながらスーツをぬ脱ぎ、窓に掛かっているハンガーを手に取りスーツを掛けた。




