推しがぁ…
とある一軒家に響く特撮のオープニング曲。その曲はリビングのコタツの上のスマホから流れているようだ。モゾモゾとこたつ布団が動く
「ん〜…」
声にならないような唸り声を上げ、1人の男が出てきた。男は半目の状態でどうにか座ると、スマホに手を伸ばす。カシャン
「あ」
寝ぼけ状態の男はスマホの近くにあったビールの空き缶を倒してしまったようだ。幸い、中身は空っぽで大惨事には至らなかった。
男は後頭部をかき、再びスマホに手を伸ばす。スマホには10:03と刻まれており、画面には変身前のヒロインの写真が壁紙として映っていた。
「ふぁ〜」
男はあくびをしながら画面にの指示に従いトルクを横にスワイプする。もう一度なりかけた曲がピタリと止む。
「やっちまったかぁ…」
男は状況判断の為に辺りを見渡した後、落胆した。
テーブルの上には350mlのビールの空き缶6本、床の手が届く範囲にビール缶のケースのボール紙。どうやら昨夜一人で全て開けたらしい。
「お、起きたか」
ふと声が聞こえ、男が声がした方に顔を見上げるように向ける。顔を向けた先にはロフトから体を乗り出している男がいた。
「帰ってきたらお前もう出来上がっててさwって覚えてないかw」
男は笑いながらロフトから降りてくる。
「ふゆみん結婚しちゃったーって」
ロフトから降りてきた男の言葉によりこたつにいる男の頭の中に色々な情報が流れてくる。
仕事帰り、同居人と別れ、何気なく見たSNS、文字通り崩れる自分、回りから心配される自分、引きつった笑顔で大丈夫だといいながら立ち去る自分、ディスカウントストアに行ってビール1ケース買う自分…
「あー!」
色々と思い出した男は火のついた子供のように泣き始めた。
「でもまあ」
ロフトから降りてきた男は空の缶ビールを手に取り
「500じゃないだけまだ良かったんじゃないか拓未?」
ニカッと笑って言う。拓未は泣きながらチラッと缶を見たが、そのまま「うー」と泣き始めた。
「ま、子供の頃からの好きな人だもんなぁ…」
仕方ないかという表情で男は拓未を見ていた。




