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第六話 地球の最後

地球最後の大暴動が発生したのはゲルンの地球支配が始まって1300年も経過した頃であった。もはや地球人にかつて支配を受けていなかった頃の記録すらない時代で、暴動のきっかけも別にゲルンの支配を否としたからではなかった。当時ハワイでは新しい島が形成されつつあり、危険区域に指定されてリゾート地とはいえない状態であった。しかしマウイ島には危険が少なく風光明媚なため、地球在住のゲルン人の総会がここで開催されることになった。いざとなればシールドを張る事もできる、そう高をくくりいつものように地球人を奴隷のように酷使して総会の準備をすすめたのである。ロボットで十分できることを地球人を使ってやらせるのが現地ゲルン人の傾向であった。核恒星系では地球人はそれなりに使える種族として、またクレア家が中心となっている人権団体やデュレストの眼もあるため、平時に面だった非道な事はできない。だが核恒星系から遠く離れた地球で、大勢の地球人に傅かれて育ったゲルン人の中には、地球人を家畜以下に思っている者も多くいた。

きっかけは現地で行われたサッカーの試合であった。野蛮なスポーツといいつつ、ゲルンにはないこの競技は一定の人気があり、ゲルン人対地球人の対抗戦が行われたのである。もちろん地球人が勝ってはいけない。しかし表向きはフェア・プレー精神が謳われ試合は開始された。どう見ても圧倒的に地球人のチームの方が強かった。これは別にゲルン人の身体能力が劣っている訳ではない。単に練習不足だったのであるが、それにしても差がありすぎた。結局ゲルンチームは勝つことができたが、ゲルン人からみてもそれは明らかに、勝ちを譲ってもらった形であった。その時一人のゲルン人チームの若者が引き返していく地球人プレーヤーに向き直った。彼の手には小型のブラスターが握られていた。そして次の瞬間、11人の地球人チーム全員の両足が炭と化していたのである。あるものは絶叫をあげ、あるものはなぜ自分が歩けなくなったのか理解できずもがき、あるものは神経系へのショック症状で一瞬で絶命した。スタジアムには3万人のゲルン人と2万人の地球人がいた。そして暴動が起きたのである。暴動はマウイ島全土にあっという間に飛び火し、中継されていた世界各地でも同様の暴動が発生した。11人の足を失いもがく選手達の映像は地球人の荒ぶる魂を突き動かしたのである。結果としてハワイだけでゲルン人1万人、地球人3万人、全地球では、ゲルン人2万人、地球人5万人が暴動とその鎮圧の過程で死んでいったのである。

この事態にさすがにデュレストは黙っていなかった。時のクレア家の当主を含む調査団を地球に送り込もうとしたのである。場合によっては地球はデュレスト管理下に置かれるようになる可能性もあった。そうなれば1300年ゲルンが地球で地球人をどのように扱ってきたのかが白日の下にさらされる事になる。時のゲルン皇帝は無思慮で短慮な国粋主義者であった。これは5王が皇帝に有能な者がなってもらっては困るため、わざわざそういう者を皇帝の座に据えて、傀儡としてきたのであるがこれが裏目に出た。

皇帝は一応は国家の最高権力者である。公的な場で公の前で命令されれば5王とて従わない訳にはいかない。結果として地球は12億人の地球人と巻き添えを食らったゲルン人5千人と共に砕け散った。この事態にデュレストとクレア家は大きく反発し、クレア家に至っては、ヴェーレフの軍閥であるクロス家を同盟者としてゲルン帝国に宣戦布告したのである。クロス家はヴェーレフの辺境、ゲルンとの境界面を領宙に持っており、ゲルンとの小競り合いや大会戦を何度も経験してきた、ヴェーレフ国内で最強の私兵軍団を持つ家系である。その始祖はゾーネンコートの反乱を鎮圧したトーラス・ヴァーレン・クロスに遡る。

戦いは妙な構図であった。ヴェーレフ皇帝は「地球のことなぞどうでもいい。だがクレア家とクロス家でゲルンと戦争するのは勝手」という態度だった。クレア家は財力があり私設の研究機関を持ち、核恒星系人としては珍しく科学技術の向上に努めていた。もちろんクレア家の援助で学問を修めた多くの地球人を抱えていた。一方クロス家にはゲルン一国と互角以上に戦えるだけの十分な艦船と兵士(地球人傭兵を含む)と戦略・戦術立案能力と戦争状態を効率的に運営するだけの社会基盤を確立していた。この後ゲルン帝国対クロス・クレア連合軍という構図が生まれるのである。


そしてついにプルートゥが動いた。地球破壊というゲルンの蛮行自体は核恒星系に多くの地球人が居住する現在ではプルートゥにとって驚異ではない。だが根っこを失う人類に対しプルートゥは「同情」したのである。レーヌという端末を通じて様々な人々の感情の波を感じ続けてきたプルートゥは地球人に感情移入したと言える。ゲルンの攻撃をさけるために大急ぎで当てもなく地球を脱出した人々をプルートゥはレーヌを通じて自らの内部に受け入れた。そして自ら動いて太陽系を脱出したのである。冥王星が衛星のカロンを置いて消えるという事態にゲルンは驚いたが後の祭りであった。12億人の地球人が地球と運命を共にし、約3千万人の地球人がプルートゥにかくまわれて脱出した。彼らはこれから長い間宇宙を漂流し、徐々に地球人の同胞を取り込み一つの勢力として成長していくのである。

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