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おみぐす  作者: 不知火
5/6

蒸し暑い夜

ミーンミンミンミン


8月も終日、夏ももう半分を超えた時期だというのに、深夜になってもセミの鳴き声は止まらない。


「...なぁ、寝たか?」


「......」


「...のぅ、グスタフよ。寝たか?」


「............」


「っっ、こんなにセミの鳴き声が響く蒸し暑い部屋で寝れる奴がおるか!」


忠臣の大声量が部屋中に響いた。


「....ただおみ、深夜だぞ。落ち着いてくれ。」


「...グスタフよ、貴様、起きてあったのか。」


「...こんなところで寝れるわけがない。」


「ハッ、それはそうだ。...グスタフよ、貴様眠いのか?」


「...昼にただおみと酒を飲んで、夜まで潰れてさっき起きたからな、眠くはない。」


俺がそう返すと、忠臣は「そうか」と何か良からぬ事を思いついた笑みを見せる。


「こんな夜中に何をする気だ?」


俺がそう言うと、ただおみは電気も付けずに暗闇の部屋の中でガサゴソと物音を立てる。


「なぁに、たいした事ではない。そう言えば、前にアイスの当たり棒を貯めていた時があったであろう?」


俺は何の事か一瞬頭に疑問符を浮かべたが、やがて思い出した。


「...あの時のか。確か、銭湯に通い始めた時だったな。」


「覚えてあったのか、寝起きだと言うのに頭は回っておるようだな。」


ガサゴソと立てていた物音が突然止まった。ようやく目当ての物が見つかったのか、「お、あったぞ。グスタフよ。ほれ。」その言葉と同時にただおみが俺の方にある物を投げてきた。


まるで夜の遊びを始めたての少年の笑みを浮かべる忠臣。


「グスタフ!今から我と夜の遊びをしに行くぞ。」


俺は投げ渡されたそれを手に取り、ようやく忠臣が何を探していたのかが分かった。


ーーー


夜の公園、古びた遊具と小さなベンチが二つだけ置かれた公園には街灯すら無いほどに廃れていた。


「外の方が涼しいのではないか?」


「そうだな、近くに水辺もある。」


そうなのか?と返事を返しながらもただおみは着々と準備を進めていった。


「よし、グスタフよ。バケツの準備は出来たぞ。日が昇る前にやるぞ」


ただおみは大きな円柱型の箱から取り出した花火を手にカチッとライターで火をつける。


パチパチッ、 小さな火花が咲き始める。暗闇の中で唯一の灯りとなったそれは、ただおみの顔を明るく照らし出す。


「...小さいやつはやはり地味だな。悪くはないが、やはり花火と言ったら、どかーんとした奴を我は見たいものだ。」


「そうか?俺は好きだがな。ただおみは良いものに慣れている。俺にはこのくらい地味なやつの方が落ち着く。」


そう言って俺は箱から色違いの手持ち花火を取り出す。俺はただおみの方に目線を配る。それが伝わったのか「ちょっと待っておれ、ほれ。」そう言って、俺の方に近づくただおみの花火は最後の灯火を放ちながら俺の花火にやがて火を燃え移らせる。


「...綺麗だな。」俺がそう言うと、「ああ。」ただおみもまた、それがこれの楽しみ方であると理解したのか、それからも火が絶えないように花火を楽しんだ。


「ふぅ、ようやくこの時が来たな。グスタフよ。」


そう言ったただおみは地面に設置した手筒花火、ねずみ花火、さっきの線香花火よりも火薬の多い花火に火種を配っていく。


「よし、見よ。いいか、一瞬の輝き。見逃すでないぞ?」


その瞬間、パンッと弾ける音が聞こえた、それに続くようにシュルルッ、バンッ、ヒューッ、絶え間なく火薬の音が聞こえ、そして、


「このような田舎でも花火は楽しめるものだな、グスタフ。」


「ああ。」


「ハッ、分かってないな。貴様は。」


「??」


「隣に居る貴様とやるものに価値があるのだ。」


「...そうだな。」


「しかし、まぁ。やはり、風物詩には足りん物があるな。グスタフよ?」


「...酒か?」


「小腹も空いた、帰りにこんびにに寄って帰ってもう一回戦といくぞ。」


「ちゃんと片付けをしてからだぞ。」


「わかっておる。」


そう言ったただおみは少しだけ名残惜しそうにバケツの水を見ていた。













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