夏風2
俺は食べ終えた食器を運び洗い物をしていた。
ただおみは食事に満足したのか、ホクホク顔でTVを見ている。笑いのツボが浅いのか常にどんなシーンでも爆笑している。
「悪いな、グスタフ。食事まで世話になってしまってな。」
「別に良い、ただおみには酒をもらった。」
「ハハ、そうか。ならば、もう一つ頼み事を聞いてもらっても良いか?」
「?」
「あいにくと我の部屋の風呂が壊れていてな。どうだ?一緒に銭湯などという所に行っては見ぬか?」
銭湯? 風呂のことか。
「風呂なら俺の部屋にもあるが。」
「我は大きい風呂でないと駄目なのだ。せっかく美味い飯までご馳走になったのだから、我が貴様に風呂上がりのフルーツ牛乳をご馳走してやろう!」
ただおみは凄い満悦した笑顔で語る。
「...フルーツ牛乳は飲みたい。」
「そうか!ならばいざ!」
「!しかし、ただおみ。お前の替えの着替えがないぞ...どうするつもりだ?」
「何を言っておる?当然貴様の服を貸してもらうに決まっているだろう?まぁ、多少サイズ違いでぶかぶかになるだろうが気にはしない。グスタフよ、何か適当な袖通しと股隠しを貸してくれ。」
俺は慌ててただおみでも着れそうな服を探す。シャツとスウェットならば着れるか?
「よし、では行くぞ!」
銭湯に行く道中ただおみにこう聞かれた。
「ところで、先ほどの料理は我の国にもあるのか?」
「あれはナポリタンというイタリアの料理だ。」
「ナポリ?聞いたことがあるぞ...確か何処かの地名だったはず。惜しいな、我が軍師ならばまだ見ぬナポリタンの境地へ貴様を連れて行けたものを!くっ。」
「ただおみ...戦争などしなくても、我々で旅行に行けば良いのでは?」
「っっ! ...ハハッ、グスタフ!貴様も愛い奴よ!」
ただおみが突然俺の肩に腕を絡めてくる。夏の暑さのせいかただおみの腕は汗をかいていて、服も汗で濡れていた。
「グスタフよ、それは我が統帥の時代にも同じ事を言えたか?貴様と盟友だった日々、我ら二人で何処かに行くなど戦争以外には考えられなかっただろう?」
「...そうかもしれない。戦場で背中を任せられる唯一の相手がただおみだった。けれど、あの時よりも今の方がよっぽどただおみの近くにいる気がする。」
ただおみはそれを聞いて、満足気に頷く。「風呂上がりはアイスもくれてやろう!」と言っていた。よほど気分がいいのだろう。
「旅行か...それもよいな。国の外は遠いが、近場の温泉には今度行ってみても良いかも知れぬな。温泉の中で熱燗をくいっと飲むのは格別だぞ!グスタフよ。」
ーーー
そうこう話してる間に銭湯に着いた。
外観はボロではあったが、中に入ると恐らくはこの銭湯の主である老人がいた。
「お二人ですか?」 「ああ」
「でしたら家族風呂の方に案内させていただきます。」
「家族風呂?」
「此処の湯は源泉ですので、大浴場はございません。代わりに、個室の家族風呂を格安で提供しています。」
「それはよいが、フルーツ牛乳はあるのだろうな?」
「フルーツ牛乳でしたら売店の方にありますので、好きなだけお買い求めください。」
それから個室の鍵を貰ったただおみの後を俺もついていった。
ーーー
「ふぅ、なかなかの湯ではないか?なぁ、グスタフよ。」
「ただおみ、熱くないのか?」
「確かに熱いがこんなものではないのか?」
俺は湯面に浸かる事が出来ず、足だけを湯に浸けては抜いてを繰り返して体を温度にならしていた。
「ハハッ、これはよい見せ物ではないか。ほれ!」
「おい!あつっ」
お湯をバシャバシャと足で叩いて水しぶきを上げるただおみ。顔にかかるお湯からは硫黄の香りがした。
「まさか、我の背中を預けてた者が熱い湯すら苦手とはな。どーれ。」
よいしょっ という掛け声と共にただおみは俺の後ろにやってくる。