弁当も作るからさと、押しかけた居候はクリスマスの夜に消滅する
もともとは死神が見えるようになった優理が主人公のお話。今回の話は優理と出会った不健康男、健美の視点で書きました。
3部構成くらいで本編を考えていましたが、ずいぶん昔に考えたので展開を覚えてません。
機会があればちゃんと完結したい、なー
僕は暗闇を見る。
カラカラカラカラ……
死神が糸を手繰り寄せている。
カラカラカラカラ……
引き寄せられるのは、嗚呼、棺桶だ……
俺は料理する居候の背中を眺めていた。彼の名前は瀬戸優理、ひと月前から俺の家に住みついた。
「はい、お待ちどー。チキン南蛮と野菜スープだよ!!」
俺はもともとカップ麺にファストフードに酒が大好きで、気ままな1人暮らしを謳歌していた。ひと月前の仕事帰り、優理に声を掛けられるまでは。
「ちょっと〜、凄いスピードで引き寄せられてるよ!!不摂生?」
「勝手に引き寄せられてくんなよ!!お前に関係ないだろ」と振り払うはずが、やいのやいのとついてきて、たまたま実家から送られてきた野菜を見つけて、さっと料理してみせた。即、胃袋を掴まれた俺。
「今日から住むね」と笑った優理に、マジか!帰れよ!と突っ込んだが、弁当も作るからさ、と押し切られた。
たったひと月で、俺の体調はみるみる良くなった。睡眠の質まで改善されて、頭重感もスッキリ。部屋は掃除され、物は整頓され、窓辺には多肉植物の寄せ植えが…
「って、変なもん増やすなよ!!」
「健康な毎日には緑も大切なのさ、健美くん。」
何だかんだ、飯は美味いし、会話も楽しい。優理はもはや生活の一部だった。
ークリスマスか。
さらにひと月が過ぎた。せっかくだからと街のイルミネーションを見に行くことになった。
なんで男と2人でと思ったが、案外綺麗で楽しめた。
「メインのツリー、凄いね!」
道路を挟んだ広場の巨大ツリーは圧巻で、もっとそばで見たい衝動にかられる。
誘蛾灯につられる蛾もこんな感じか……
「マーマー!きれーい!!」
「待ちなさい!ダメっ」
はしゃぐ少女の声と制止する母親の声。
信号は赤だ。
飛び出した少女に、迫るトラック。
耳に刺さるブレーキ音。
音が消えた。のろまな光景。
その中、風のように駆けるのは。
優理だ。
彼は、少女を思い切り突き飛ばした。
何故か一瞬下を見る優理。ダメだ、トラックが……。
誰かの悲鳴のあと、洪水の如く、音が戻って我に返る。
「優理!」俺は叫んだ。
少女の泣き声と、近づくサイレンの音。
優理は?トラックに近づこうとしたところで、警官に止められる。いつ来たんだよ。構うか!優理!
「女の子は無事です!他に怪我人はいません!」
「は……?」
もう一度トラックの方を見る。血痕も、倒れた人もいない。優理がいない
混乱、目眩、その刹那。ツリーの脇に笑って棺を抱える死神を見た気がした