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悪役令嬢の処刑人 〜処刑するはずだった悪役令嬢、連れ去ってみた〜  作者: 原案・ショコラパルム 本文・昊シロウ
8/11

番外編 1

読んでいただきありがとうございます。


 これは、彼が”剣聖”になるまでの物語。



 ***



 「おい。少年。大丈夫か?」


 「…………」


 人の声が聞こえる。

 女の人の声だ。だけど、ノイズがかかったようにはっきりと聞こえない。

 身体を動かそうとするけれどピクリとも動かない。


 「こんなに傷だらけで……いつからここにいたんだ?」


 そう、通りすがりの女は言うと倒れている少年の背後にそびえ立つそれ(・・)を見上げる。

 

 それは魔物の死骸だった。

 ただただ大量の魔物の(むくろ)

 

 「一体、何匹殺せばここまでになるんだか」


 女はため息をつくと少年を抱える。

 しかし、その顔は台詞とは裏腹に歓喜に口角がつり上がっていた。



 ◇◇◇



 『ごめんね。アーサー』


 『待ってっ!』


 遠ざかっていく小さな背中。

 追いかけようとするけれど、その身体は鎖に縛られて動けない。


 『クソっ!なんだよこれ。千切れろっ。千切れろ!』


 俺は必死に鎖を引き千切ろうとするが鎖は千切れる気配がない。


 『アーサー』


 呼ばれて俺は視線を上げる。

 エルは立ち止まって俺を見ていた。


 『エル!』


 俺は手を伸ばす。

 だけど当然届かない。


 『アーサー。いつか私を―――』


 『待って!待ってくれ!お願いだから行かないでくれ。エル……』


 エルの言葉が最後まで聞こえない。

 自分の無力さに涙が出てくる。

 再びエルが歩き出した。


 『待って!』


 エルが暗闇に消えていく。

 姿が見えなくなっていく。


 エルはもう俺の声に振り向くことはなかった。



 

 「エル」


 なんだか嫌な夢を見ていた気がする。

 俺は伸ばされていた手を額に置く。

 視界に映るのは知らない天井。

 知らない天井?


 そして気づいた。

 ここは一体どこだ?


 「()っ!」


 「おっ!やっと起きたか少年。丸3日寝込んでたぞ。しかも今日はうなされてたみたいだしな」


 起き上がろうとして不意に声を掛けられた。

 聞いた覚えのある声だ。

 俺は声の主に顔を向ける。


 それは綺麗な赤髪だった。

 彼女の活発そうな見た目を象徴するかのような烈火の如き赤髪。

 そして一目見て気づいた。

 彼女は強い。

 強者独特の雰囲気を感じる。


 「あなたは?」


 「開口一番がそれかよ。でも…まぁいいか。どうせ長い付き合いになるからな」


 「どういうことだ?」


 「お前はオレの弟子になるからな!」


 「…………は?」


 女は腰に手を合てて堂々と言い放った。

 人は見た目によらないとは言うが、この女はそのままんまだな。

 助けてもらったところ悪いが、俺はここで立ち止まっているわけにはいかない。


 「悪いが俺は―――」


 「強くなりたいんだろう?」


 自分の心臓が跳ねたのを感じる。

 今の言葉は俺の心を見透かしたような言葉だった。


 「強くなりたなら私の弟子になれ。きっとお前の望みは叶う」


 女は真剣な目で俺を見据える。

 今の言葉には嘘も冗談もない。

 それが当然かのようなそんな自信を感じた。


 「本当に。強くなれるのか?」


 「ああ。本当だ」


 俺は目を瞑る。

 きっとこの選択は俺の人生を大きく決めるものになる。

 それほどの強さをこの女から感じる。


 この女は今まで見てきた中できっと一番強い。

 冒険者のトップだった両親の戦いを見ていた俺だからわかる。

 この女はその両親よりも強い。


 きっとあの(ドラゴン)よりも。


 俺は目を開けると手を差し出した。


 「俺の名前はアーサーだ。これからよろしく頼む」


 「おっ!やっとその気になったか。私はシェリーだ。師匠と呼んでもいいんでもいいぞ?」


 「わかったよシェリー」


 「なんで!?」


 「ははっ」


 シェリーはそう言いつつも俺の手を握る。

 それにしても笑ったのはいつ以来だろうか。

 身体の強張りが解けていくのを感じる。


 こうして俺は、シェリーの弟子になった。


 


まだ投稿を予定しているので、面白い・続きが気になるといった方は評価とブクマのほうお願いします。

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