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悪役令嬢の処刑人 〜処刑するはずだった悪役令嬢、連れ去ってみた〜  作者: 原案・ショコラパルム 本文・昊シロウ
7/11

最終話 後編 3ー3

ここまで長かった〜。

最後まで読んでいただいた皆さん、ありがとうございました。

 

 「アーサーぁぁぁぁあぁぁあぁぁああ!」


 彼の姿が見えなくなる。

 やはり、彼でも無理だったのだ。

 この国最強の剣士に送られる称号・剣聖に勝つのは。


 私は膝から崩れ落ちる。

 剣聖の全力の一撃を受けたんだ。彼はもう―――


 「・・・・・・・・・・え」


 しかし、収まってきた粉塵から見えてきたのは無傷のアーサーの姿。

 その手にはさっきと違う一本の黒剣が握られている。


 その黒剣はこの国には珍しい片刃の曲剣。

 文献で一度しか見たことのない極東の”刀”と呼ばれる剣に近かった。


 「……うっ」


 「ごめんなエル。すぐに終わらせる」


 どうしてかあの剣を見ていると具合が悪くなってきた。

 さっきの聖剣の一撃よりも禍々しい漆黒の魔力。


 だけどそれよりも、彼の仮面が割れていた。

 きっとさっきの一撃に耐えられなかったのだろう。

 仮面は欠片も残っていなかった。


 どこまでも深いきれいな黒髪。

 優しさがわかるくっきりとした目元。

 そして、右目についた一つの傷。


 最後に見た記憶よりも一段とカッコよくなっていた。


 「馬鹿な。その禍々しい魔力にその黒剣・・・・ありえないっ!お前は死んだはずじゃ・・・・」


 「ん?どうした今代(・・)剣聖。まさか先代(・・)の俺が先の戦争で死んだとでも?」


 「そっ、そうだ!お前は偽物だ!どうせその剣だって―――」


 「おい。もういいか?」


 彼の姿が一瞬で消える。

 彼の姿が見えたときには王太子は建物の壁に吹っ飛んでいた。


 「クソっ・・・・が!」


 「腐っても剣聖か。今のに耐えられるとは中々の耐久力だな」


 「どうして・・・・お前程の奴が処刑人を・・・」


 「まぁいい。冥土の土産に教えてやる」


 彼はそう言うと剣を持っている腕をまくった。

 そこには変な文様が浮かんでいる。


 「呪いだ。この魔剣に魅入られた者が背負う呪い。この魔剣の保持者は死ぬまで人を殺さなくてはならない。それが剣聖を退いた俺が、今だに処刑人として人を殺し続けている理由だ」


 「そう・・・・か。ゴフっ」


 王太子はもう瀕死だった。

 さっきの一撃はそれほどの威力があった。


 「せめてもの情けだ。苦痛を与えず殺してやる」


 彼が剣先を王太子に向ける。

 このままだと彼は王太子を殺すだろう。


 でもそれだとダメなんだ。

 だってこれは―――


 「死ね」


 「待ってぇぇぇぇ!」


 私は彼と王太子の間に割って入る。

 直接殺意を向けられているわけじゃないのに、なんて重圧。

 私の知っている彼の目からは想像もつかないほどの冷酷な目。

 前に立っているだけで呼吸ができなくなる。

 これが歴代最強と()われた「龍殺し」の剣聖。

 

 それでも。

 これだけは譲れない。


 「彼を殺さないで」


 「正気か?エル」


 「これは私のけじめ。私が選んだ選択だから」


 有無を言わせない声で言うと、彼の目を真っ直ぐ見つめる。

 数秒の沈黙。

 彼のプレッシャーから出た、冷や汗が首筋を伝う。

 彼の目がフッと元に戻った。

 一瞬にして殺意の檻から開放される。


 「どうなっても知らないからな」


 「うん。ありがとうアーサー」


 「待ってるから」と言って彼は私達から離れていく。

 さてと。早く終わらせて彼の元へと向かわないと。


 「なんだ。エルミナ・・・・・自分の手で僕を殺すか・・・?」


 「いいえ。あなたは殺さない。でもそのかわり―――」


 私は彼に近づいて、目線を合わせるようにかがみ込む。

 そして。



 パチンッ。



 王太子は目を見開いて私の顔を見る。

 まさかビンタをされるとは思ってなかったのだろう。

 私は立ち上がる。

 

 もう過去との決別は済んだ。

 私は現在(いま)を生きていける。

 


 「さよなら。殿下」



 私は振り返ることなくアーサーの元へと向かった。



 ◇◇◇



 「ねぇ。これからどうするの?」


 「うーん。考えてなかったな」


 「・・・・何も考えないで私を連れ去ったの?」


 「うっ!その・・・・あれだっ!あれ!恋は盲目って言うだろう?」


 「そう?」


 俺達は騎士団から拝借した馬に乗って走っていた。

 行き先は決まっていない。

 強いていうならどこか遠い場所へ。


 「というか。アーサー。あなた剣聖になっていたのね。しかもあの『龍殺し』。歴代最強じゃない」


 「うん。まぁいろいろあって・・・・・」


 他愛もない話をまたエルとできるなんて思ってもみなかったな。

 こんな時間でも今は幸せだ。

 あっ。一つ聞き忘れていたことがあった。

 

 「呼び方はどうしようか?」


 「呼び方?」


 「『エル』か『エルミナ』。どっちで呼べばいいんだ?」


 俺は結構難しい質問だと思ったのだが。

 あっさりと彼女は答えた。


 「『エル』がいいわ」


 そうエルは言うと俺の腰に手を回してきた。

 彼女の温もりが伝わってくる。


 肌で感じる風が心地いい。


 「それで?私をどこに連れて行ってくれるのかしら。王子様?」


 「王子はやめてくれ。あいつを思い出すだろ」


 「ふふっ」


 「ははっ」


 一時は離れ離れになった俺とエル。

 だけど、罪人と処刑人として今日六年越しに再会を果たした。

 これは偶然か必然か。

 それとも運命だったのか。


 俺は処刑人。

 元剣聖という肩書もあるが、それはもう必要ない。

 これからはエルを一生守る、エルだけの処刑人。

 悪役令嬢の処刑人だ。





 【完】



注意。これはあくまでも異世界恋愛です。

ちょっとだけファンタジー要素強めだけどラブコメです。

作者が言ってるんだから異世界恋愛です。


ここだけの話。最初この作品は短編として投稿予定でしたww


最後に面白いと思った方は評価とブクマのほうお願いします。

一旦は完結です。今後、番外編を書きたいと考えているのでお楽しみに。


それではまた。次のお話で。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせなら黒剣を突きつけた状態で大勢の国民の前で、他の女と一緒にエルを陥れました!って白状させた上で脅かして失禁させるなどして生き恥さらさせてほしかったかも。殺さなかったのと大勢の他人の前で…
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