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悪役令嬢の処刑人 〜処刑するはずだった悪役令嬢、連れ去ってみた〜  作者: 原案・ショコラパルム 本文・昊シロウ
6/11

後編 3ー2

次回で最終話です。

読んでいただきありがとうございます。


 「きゃあぁァァっ!」


 「涙の道化(ティア)がこっちに来るぞ!」


 「にっ、逃げろっ!」


 処刑が行われるはずだった広場が混乱に陥る。

 俺は勝手に空いていく道を走る。

 まさか処刑人としての俺がここまで恐れられてるとはな。

 意図してやっていたわけではないが、好都合だ。


 俺は更にスピードを上げようとエルの顔を見る。

 しかし、エルの表情は下を向いていてわからない。


 「・・・・・エル?」


 「どうして?どうして私を連れ出したの?」


 顔を上げたその表情はまだあの時のままだ。

 

 そうか。

 きっとエルはまだあの時のことを―――


 俺は立ち止まる。

 今、ここで言わなければならないことだ。


 「連れ出した理由?そんなの一つしかないだろう」


 俺はエルの目を真っ直ぐ見つめる。

 その瞳は不安で揺れている。


 ただ違うとするなら。

 この手がエルの手をを掴んでいることだ。



 「君のことが好きだからだよ」



 エルの目が見開かれる。

 そして更に涙が溢れ出してくる。


 「私もっ、私もアーサーのことがっ―――」


 「危ないっ!」


 キィィン。


 俺はエルに向かって投擲されたナイフを叩き落とした。

 見るとそのナイフには毒が塗られていた。


 「処刑人風情が。この僕の所有物に触れるな」


 奥から近衛騎士団を引き連れた王太子がやって来る。

 騎士団の何人かが魔法の詠唱を始めている・

 もう簡単には逃げられない。

 王太子の顔は憤怒に染まっていた。


 だけどそれよりも今、あいつは何と言った?

 エルのことを所有物だと?


 「おいっ!エルミナ!僕の所有物であるお前が何を勝手なことをしている?」


 エルの身体がビクッと震える。

 俺の手を握る力が強くなった。

 それは、怯えだった。


 「大丈夫だ。エル。俺に任せろ」


 俺はエルの手をそっと離す。

 そして背中の剣を引き抜く。


 「ダメっ!アーサー戻ってきて!相手はあの剣聖・・・・・」


 「なぜ、この国の王太子であり剣聖である僕の言葉を無視しているんだ?それに加えて処刑人風情が僕に剣を向けるだと?もういい。殺れ」


 王太子が命令すると、五人の近衛兵が俺に向かって走り出してくる。

 やはりこの国の精鋭である近衛騎士団。

 普通の人間が見れば隙一つないだろう。

 そう。普通の人間ならな。


 「遅い」


 俺は剣を横に一閃する。

 次の瞬間。近衛兵たちの腕がすべて消し飛んだ。


 「ぐあああああ」


 「なんっ、だと・・・・・」


 王太子の顔が驚きに染まる。


 俺は王太子に向かって歩き出す。

 その間にも次々と近衛兵が襲いかかってくるが、その全ての腕を俺は斬る。


 「お前は一体・・・・・」


 「ただの処刑人だよ。悪役令嬢のね」


 俺は皮肉を込めて言う。

 エルのこいつに対しての怯えからもう大体は想像がついている。

 こいつがエルを嵌め殺そうとした張本人。

 人を殺すのは好きではないが、こいつなら心も痛まない。


 「・・・・・・・・いいだろう。その剣の腕に免じて、”剣聖”であるこの僕が直々にお前を殺してやる」


 王太子が剣を抜く。

 するとその剣の刀身が光りだした。


 「それは聖剣か?」


 「そうだ。これこそが選ばれた者にしか抜けない聖剣。この剣の前ではこの世の全ては塵に化す」


 こいつの言っていることは嘘ではないようだ。

 事実。それほどの魔力があの聖剣には込められている。


 俺は構える。

 その瞬間。王太子の姿が消えた。


 だけど甘いな。

 気配までは消せていない。


 「なっ!」


 「なんだ。これが今代(・・)の剣聖の力か」


 俺は完璧に王太子の剣を流し切る。

 まともに受けるとこの剣では一発で折れるからな。


 「貴様ぁぁぁぁ!」


 「もう見えてるよその動きは」


 王太子の連撃を俺は流し続ける。

 冷静さを欠いた相手ほど読みやすい動きはない。


 王太子はいくらやっても同じだとわかったのか、俺から一度距離を取った。


 「なぜだ。なぜだなぜだなぜだ!どうして僕の聖剣が届かない!」


 「いやどうしてって。お前が俺よりも弱いからだろ」


 そう言った瞬間。

 王太子の魔力が上がった。

 その魔力がすべて聖剣に注ぎ込まれる。


 「これほど僕を怒らせたのはお前が初めてだ。処刑人。神の剣に焼き貫かれて死ね」


 聖剣がこれまで以上の輝きを発する。

 周りの建物を壊す程の絶対的魔力量。

 どうやらこれが今代の剣聖の力のようだな。


 「神の剣(ミョルニル)


 王太子が剣を振る。

 すると圧倒的魔力の奔流が俺を襲った。

 

 これは・・・・・まずいな。

 

 後ろにいるエルを見る。

 何かを言っている様子だが何も聞こえない。

 だけど俺を想っていることはわかる。

 俺は安心させるためエルに笑顔を見せる。

 ここで死ぬわけにはいかない。


 俺は手に持っていた剣を捨てる。

 決して諦めたわけじゃない。

 むしろ逆だ。


 好きな女の前ではカッコつけたくなるのが男ってもんだろう?


 俺は虚空へと手をのばす。

 もう二度と彼女を失いたくないから。

 エルを守るためなら俺はなんだってする。


 

 「来い。邪竜殺し(ファフニール)



 「アーサーぁぁぁぁあぁぁあぁぁああ!」


 王太子の技が俺に直撃した。



次回で最終話です

面白い・続きが気になるといった方は評価とブクマのほうお願いします。


最終話は2月3日12時投稿予定です。

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