番外編 3
次で終わると言ったがソレは嘘だ!本当にすみません。
読んでくださりありがとうございます。
「………シェリー」
俺は走る。
もう三日も経つがシェリーは帰って来なかった。
いい子にして待ってろと言われたが流石にもう待てない。
生憎だが俺はそこまでいい子じゃない。
俺はシェリーの通った気配を感じ取って魔獣の森を突っ切っていた。
そして走ること三時間弱。
大勢の人の悲鳴と爆発音が聞こえた。
「あっちか」
俺は更にスピードを上げてその場に向かう。
殺気をだだ漏れにしているから一切魔物の邪魔を受けずに現場に到着した。
そこで俺は目を見開く。
「なっ!」
そこには両親を殺した龍とそれに剣を向けるシェリーがいた。
◇◇◇
「シェリー!!」
俺は叫びながら戦っているシェリーの元へと向かう。
しかし思わぬ障害に阻まれた。
「止まれ!なぜこんなところに子供が……」
「おいあの黒髪の少年。”剣聖”様が言っていたとおりの特徴だ。絶対に剣聖様のところへは行かせるな!」
「剣聖?」
もうちょっとというところで武装した騎士たちに止められる。
さすがの俺も数には勝てず捕らえられてしまった。
それに今、この騎士はシェリーのことを剣聖と言ったか?
「クソっ離せ!俺を行かせてくれ!」
「ダメだ。剣聖様からの命令なんだ。私達も援護することを禁じられている」
騎士の顔を見上げると苦渋に満ちた顔をしていた。
こいつらも俺と同じ気持ちなんだ。
「だったら尚更!俺を行かせろ!」
「ならんっ!!」
あまりの剣幕に俺はビクッと身体を震わせる。
そして騎士は俺に独り言のように語りかけてくる。
「あの笑わなかった剣聖様が笑うようになったんだ」
それはまるで遠くを見て懐かしむように。
「ボウズのことをよく話していたよ。『あいつはすごいっ!』っていつも笑って話してくれた」
騎士の声が震え始めている。
若干だが俺を拘束する力が緩んでいる気がする。
「剣聖様はとてもお優しい。だけどその優しさで自分の身を滅ぼしてしまう」
俺はシェリーを見る。
随分と身体に傷を負っている。
今の彼女は普段の彼女の剣速に遠く及ばない。
それほど疲弊している状態だった。
「あの龍はいくつもの国を破壊してきた伝説の邪竜・ファフニール。剣聖様は私達の命を案じて待機命令を出した。ボウズ。わかるか?忠義を尽くしている相手に何もできず守られる私達の気持ちが」
騎士の目からは涙が溢れている。
それは俺を拘束している騎士以外も例外ではなかった。
こうしている今もシェリーは戦い、傷を負い続けている。
「ボウズ。ここで剣聖様の戦いを見届けよう。それが剣聖様の望んだことだ」
この騎士の言っていることはきっと正しい。
シェリー自身が決めたことだ。俺が口出しする権利はない。
だけどな―――
「俺は救われたんだ。絶望していた俺をシェリーは救ってくれた」
どれほどあの笑顔に救われたか。
人の温かみを忘れてしまった俺に、また温かさを教えてくれた人。
シェリーは失いたくないと思った、大切な存在だ。
「もう俺はあの時の弱い自分じゃない。逃げるだけ……いや、エルを追いかけることができなかった俺じゃない」
俺は身体にありったけの魔力を流す。
シェリーから貰ったんだ。
この強い自分を。
「もう目の前で大切な人を失ってたまるか」
「くっ!……ボウズ待て!」
俺は無理やり拘束を解くと剣を抜いて走り出す。
今ここで、俺は自分の弱さと決別する。
それがエルを追いかけることができなかった、俺の償いだから。
◇◇◇
「シェリー!!」
俺はありったけの大声で叫ぶ。
シェリーは驚いたように俺に目を向けた。
「なっ!?アーサーお前がなんでここに!」
俺の声に視線を外したシェリーに龍が炎を吐く。
馬鹿!俺が来ただけで油断するな!
一瞬の油断でシェリーは龍の炎で飛ばされてしまった。
「……くっ」
「しっかりしろ!それでも”赤獅子”か!」
「……こんのクソガキ!来るなと言っただろ!」
俺は倒れているシェリーの目の前まで走ると、龍の重い一撃を受け流す。
重い。シェリーは、今までこんな攻撃を一人で受け続けていたのか。
しかし俺は同情しない。
「うるせぇ!最初に約束を破ったのはそっちだろ!」
「約束?」
「俺を強くするって言ったのはお前だろ!シェリーが帰ってこないと修行ができないんだよ!」
「………」
クソ。これ以上受けたら俺の剣がもたない。
その一瞬の逡巡を龍は見逃さなかった。
あっ―――受けを少し失敗し体勢が崩れたその一瞬。
迫りくる、尾の一撃。
躱せない。俺は悟った。
しかし、その攻撃は当たることがなかった。
キンッ!!
「私はお前に謝らなければいけないことがある」
シェリーの今までとは違う攻撃の威力で吹き飛ばされる龍。
後ろからシェリーが俺の横に並んで言う。
「なにを?」
「私はお前の強くなりたいという願望を利用した。お前と出会った時にお前を私の後継者にしようとお前を助けた。アーサー。お前は私を殴る権利がある」
突然の告白に俺は何も言うことができない。
シェリーの表情はうつむいていてわからない。
この場に及んでこいつらしくないな。
「お前あと、剣聖だったんだな」
「うっ…そっ、それは……」
「だから後でゆっくり話せ。お茶でも飲みながらいつもどおりな」
これでいい。後で俺は聞かねばならない。もっとシェリーのことを。
シェリーは俺の一言に顔を上げると、龍を見据えた。
「行くぞバカ弟子。これが最後の攻撃だ」
「ああ」
俺とシェリーは龍に向かって走り出した。
この度は私事で投稿を遅らせてしまい誠に申し訳ございませんでした。それに加え、まだ終わらないというのは本当に反省しております。
次回こそ完結なので、評価とブクマの方よろしくおねがいします。
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