6話 ダチは大事にしたいんじゃ!
あの後、着替える時間が必要だろうということで早めに授業が終わった。
ワシはというと、アリアと一緒に寮へ戻っておる。全身濡れて、春先だからくそ寒い。早う着替えてぇ。
「先程の魔法、素晴らしかったです、フレデリカ様!」
アリアが目を輝かせてそう言うてくる。正直ワシもあんな風になるとは思っとらんかったが。……悪い気はせんな。
「マジ? まあ、ワシじゃけぇの! こんくらいどおってこたぁねぇ!」
「私もフレデリカ様のようになれるでしょうか」
「そりゃあおみゃーなら大丈夫じゃろ。お、そうじゃ。ワシが秘訣を教えちゃろ」
「本当ですか?!」
アリアは嬉しそうないい笑顔をワシに向ける。ゲームで見た時より可愛ええのコイツ。
「なによあの子。フレデリカ様に付き纏って困らせちゃって」
「フレデリカ様に失礼じゃありませんの? 農民上がりのくせに、身の程を弁えて欲しいですわね」
あ? 今ワシのダチの悪口言う野郎がいやがったか?
って、あぁ。このしょんぼり具合を見るとアリア聞いとったな。
「ごめんなさいフレデリカ様。私、迷惑ですよね」
あークソ。マジダリィ。
「おいコラ! おどれら黙って聞いとりゃ調子乗りおって、たいがいにせーよ!」
「あらフレデリカ様ごきげんよう。私たちは本当のことを言ったまだですわ」
「フレデリカ様も最近下品になられましたわよね」
こいつらワシの悪口まで言いおったぞ。
「ワシの生き方も連む仲間も全部ワシが決める。おどれらええ度胸じゃのぉ。表出ろや、ぶち回したる。病院で大人しく寝てろやゴラァ!!」
「待て!」
誰かに手を掴まれた。結構力強いな、多分男じゃ。
「なんじゃゴラァ! キレたワシをために入るとはおどれもええ度胸しとるのぉ! って、おどれは」
このいけすかん優男見たことあるのぉ。確かゲームだと、アリアに惚れる男数人の内の1人じゃ。
「そこまでだフレデリカ。暴力はいけない」
「アスラン様の言う通りですわ!」
あぁそうじゃ。たしかアスラン・ガレリアとか言うやつじゃ。この国の王子様で、遙香の推しじゃ。
「君たちも君たちだ。この学校に来れば出身は関係ない。むしろ身分で人を見下すようなみっともない真似を、その制服を着てやらないでもらいたい。学校の名が傷つく」
アスランに言われて、奴ら悔しそうな顔してどっか行きおったわ。
「あ、ありがとうございます」
「気にしないで、アリア。貴方は悪くない。それにお礼は私でなくフレデリカに言うべきだと思うよ」
「フレデリカ様。私のために怒ってくださってありがとうございます」
「気にすんな。ワシが気に入らんかっただけじゃ」
アスランがクスッと笑う。なんじゃ腹立つのぉ、馬鹿にしとんのか。
「それにしても見直したよ。まさか君が自分以外の為に怒るなんて」
馬鹿にしとったわコイツ。
「文句あるんか」
「いや? ただ私は嬉しいだけだよ。言葉遣いは以前よりも荒々しくなったようだけど、暴君の様だった君に友人ができて、その友人のためにあれ程怒れる様になるなんて」
あれ、フレデリカってそんなわやじゃったっけ。
「では私はコレで失礼するよ」
アスランはそう言うとワシにウィンクして帰っていった。マジキメェなあのクソ王子。
「私もその、嬉しかったです。ありがとうございます!」
アリアは目に涙を浮かべてそう言うてきた。コイツが馬鹿にされんの、どうにかしてやりたいな。