3話 寮の飯は食い放題じゃ!
魔法学院に来て初めて迎えた朝は、言うてもそんなに変わらんかった。隣にアリアが寝てるくらいしか違わんかった。まあ、ええ朝だってことじゃ。
「ふあぁ…………。おはようございます、フレデリカ様」
「おう」
アリアは眠そうに目をこすっている。うーん、平和よのぉ。
でも今日から学校か。たいぎーのぉ。ふけてしまおうか。
「今日から授業が始まりますね。私、楽しみです」
アリアは、それはそれは良い笑顔でそう言った。……ちょっとくらい受けてもええかの、ちょっとだけじゃけぇな。
「そんじゃ、早く準備しょーか。まずは飯食わな」
「はい!」
その後、ワシとアリアは着替えを済ませ、寮の食堂へ向かった。
寮の飯は食べ放題の店みたいな形式じゃった。長机に沢山の種類の料理が置かれ、好きなもんを好きに取っていく仕組みじゃ。族の奴らとよく行ったパワフル次郎って焼肉屋を思い出すのぉ。
「好きに食ってええんじゃの、ここは」
「凄く美味しそうな料理が沢山! 流石魔法学院です!」
アリアはぶちはしゃいどった。気持ち分かるわぁ、ワシも食べ放題形式はワクワクするもん。
ワシらは飯を取り、席に着いて、飯を食い始めた。
ワシはフォークとナイフで、高級そうな肉を切り分け、くった。
……何じゃこりゃ! ぶち美味ぇ。こんなん食ったことねぇ。こんな美味ぇ食いもんを学校で食えんのか、最高やん。
「美味しい……! 私、こんなに美味しい食べ物は初めてです!」
「アリアもそう思うか? こんなの毎日食えるとか最高や……」
いや、屋敷ではこんくらいのもの食ってたが、なんか学校で食うと違うのぉ。一段と美味く感じる。
それからしばらく黙々と飯を口に運んでいた。じゃが半分ほど食ったところで、誰かが騒いでいる事に気づいた。
「なんじゃ? 騒がしいのぉ」
よく見ると、新入生が食堂のシステムに文句を言ってる様じゃった。なんでも家では使用人が持ってきてくれたから、自分らが飯をよそって食うのはおかしいだろって事らしい。
「ダッサいのぉ」
「そういえば、フレデリカ様はあのようにお思いにならないのですか? 私は使用人なんていませんから、どうとも思わないですが」
「お? ワシがあいつらと同じじゃ思うとんかワレ」
ワシがそう言うとアリアは慌てて、手と首を横に振る。
「ち、違います! ただ、フレデリカ様にも使用人ですとか、そういった人が付いて居らしたと思うのに、あのよう不満ひとつ零さないのは流石だなと」
喧嘩売られたんかと思うとったが、どうやら褒めてくれとったらしい。
「そういえばあいつらが文句たれるまで考えたこと無かったのぉ。なんでも食わしてくれんならええ思とったわ」
そんなこと言っとると、その生徒がワシらの方へきよった。
「あなたも! この食堂は無礼であると思いません?」
なんでこっちにくるんじゃ……。
「そうは思いませんわ。食堂の方が丹精込めて毎日料理を作ってくださること、まずはそれに感謝するべきでしょうに」
うーん。我ながらいいことを言ったのぉ。流石ワシ。
「何を言ってますの? 私達は貴族ですのよ? 平民が貴族に毎日料理を出すことなんて当たり前ではありませんこと?」
これだめな奴じゃわ。飯が出てくることが当たり前に思うとる。こいつ料理とかしたこと無いんじゃろうな、じゃけぇそんな言葉が出てくるんじゃ。
「……あなた、フレデリカ・フォン・ミューゼル様ですわよね。あなたともあろうお方が、まさかそのようなことをおっしゃるとは」
え? フレデリカってやっぱし結構なクズじゃったんか? えれー奴に転生したのぉ。
更にその生徒は、アリアの方を見て更に言った。
「あら、そちらの方は確か農民上がりの。あなたのような格下と同じ食事を取らないといけないなんて、ごめんですわ! だいたいあなた。農民風情がここの食事を取って良いとお思いで? あなたなんてその辺の草で十分ですわ」
「ええ加減にせぇよ」
「……え」
「ワシのダチに何言うてくれとんじゃ! 黙って聞いとりゃ好き勝手言いおってからに。だいたいワシら関係ねぇじゃろが! なんじゃいきなりワシらん所来おって散々かばちばっかたれおって、そんなワシらに文句あんなら表でぇや、ぶち回したろかワレェ!!」
…………おっとしもうた。ついカッとのぉてまくし立ててしもうた。ワシはアリアの前以外ではフレデリカなんじゃ。おしとやかにせないかん。ってもう遅いかのぉ。
結局、その子は散々泣きながら逃げるように去っていきおった。ちょっと言い過ぎたかもしれんのぉ。いかんな、流石にこのまま素を出しまくりょーたらわやくそんなる。気ぃつけんとな!
まあええわ。飯も食うたし、授業受けに行くかの。……まともに授業受けんの初めてかもわからん。上手いこと乗り切れるとええけど…………。