12話 でかい馬車じゃ……
当日、ワシとアリアは正門前で待ち合わせをした。
「あ、きましたよ!」
「遅いぞおみゃあら! って、なんじゃありゃ」
アイツらごちぃ馬車できおった。どこから持ってきたんじゃ。
馬車からアスランが顔を出してきた。
「すまない、馬車の手配をしていたら遅れた。皆んなもう乗っているから、2人も乗ってくれ」
こん馬車、ぶちでかいのぉ。ワシらは全員乗ってもちぃと余裕があるぞ。
「馬車なんかどこにあったんじゃ……」
「これは僕の家の馬車でね、この日のために手配しておいた」
はぇー。金持ちのやることは違うのぉ。
「町までは距離があるからね。馬車があったほうが便利だろう?」
そがぁに離れとるか? こんくらい、ワシならあるからがのぉ。
「てか、他の奴らはどうやって町へ出るんじゃ? おみゃあのことみてぇに馬車持ってくるんか?」
「それがこの学校の問題の一つとなっていてね。みんなこぞって町の馬車をここまで寄越すんだ。だからこの休みの期間は町の交通機関が全てストップする」
「更に寄越しといて態度が悪いときた。だから俺たちもこの問題をどうするかと困ってんだ」
アスランとガイアの話を聞く限り、カスが多いんじゃのぉ。
「問題の一つと言っとったが、ほかにもあるんか?」
「それは町に行けばわかるさ。そして君たちは気をつけてほしい」
「まあ大丈夫じゃろ」
「アリアはそうだけど、フレデリカは心配だなぁ?」
「なんじゃと?!」
馬車内で笑いが起こった。こいつ、ワシのこといじりおって、笑うてくれたからいいが。
「町が見えたよ」
「おお!」
馬車の窓から見える町は、まるでヨーロッパに旅行に来たみたいじゃった。まあ、生前いった事ねぇから本物のヨーロッパは分からんが。
「楽しみですね!」
「そうじゃの!」
馬車は町へ入って行った。