表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/23

1話 思い出した! ワシ、死んだんじゃった!

「大丈夫ですかフレデリカ様!」


「大変だ! フレデリカ様が落馬なされた!」


 意識が朦朧としている中、使用人や執事達の声がぼんやりと聞こえます。頭の痛みも強くなってきた所から、私、頭から落ちてしまったようですわ。私、このまま死んでしまうのでしょうか。


「フレデリカ様! まずい、頭から落ちている!」


 私の近くで執事が叫んでいますわ。うるさいですわね……。まるでクソみたいなマフラーつけた単車のダッサいエキゾーストノートみたい……。


 …………あら? 何ですの単車って。それに段々と何か大切なことを思い出したような……。待て、思い出した。ワシ、あの日死んだんじゃった。




   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 広島の都市高速を、仲間と一緒に、愛車のゼファーで駆け抜ける。改造に改造を重ねた最高の愛車じゃ。


「美玲さん! 鈍愚璃(ドングリ)との約束のポイントまでもう少しっすね!」


「おうよ! 奴らワシらの前で調子こいとるけぇのぉ。このバトルでワシら死魔李巣(シマリス)の恐ろしさを見せちゃるわ!」


 そうじゃ。今日はライバルチーム鈍愚璃とのバトルの日。単車で都市高を攻めて速かったチームが勝利する単純なルールじゃった。まあ結局は殴り合いの喧嘩になるのがいつもの流れじゃったが。


「あ! 見えたっすよ!」


 合流から何台もの族車が高速に乗ってきちょる。族車見ると自然にアクセル握る手に力が入るってもんよのお。


「勝負じゃ田代美玲(たしろみれい)! おどれらに吠え面かかしちゃる!」


「かかって来いや翔子(しょうこ)ぉ!」


 ワシと翔子はギアを一つ下げてエンジンの回転数を上げ、アクセルを全開までふかし、フル加速させる。加速は互角じゃ!


 都市高はコーナーも多いしキツイ。じゃけえいかにロス無くクリア出来るかが重要じゃ。


 早速コーナーにさしかかった。……そうじゃの翔子、ブレーキは踏むわけ無いがのぉ!


 明らかなオーバースピードでコーナーに突っ込む。じゃがこんくらいじゃったら曲がれる!


 待て、翔子の単車がおかしい。ケツが滑っとる。あれじゃ曲がれん! それどころかこっちも巻き込まれ。


 ここでワシの記憶は途切れた。




 というとこまで思い出せた。じゃあここはどこじゃ。明らかにワシが居った広島と違う。こんな自然豊かじゃねぇし、遠くにおとぎ話に出てくる感じの城が建っとる。ありゃ絶対広島城じゃない。


「お怪我は大丈夫ですか? フレデリカ様!」


 執事がワシを心配してくれとる。そうじゃ、ワシ、今はフレデリカって名前じゃった。落馬する前の記憶もしっかりあるし、前世の記憶を思い出したって話しかの。


「おう。平気じゃ」


「じゃ? じゃとはなんですか?」


 そ、そうか。今は貴族の令嬢じゃった。今までの記憶があるから言葉遣いは分かるが前世の記憶がよみがえったせいでついつい前のしゃべり方がでるのぉ。


「気にせんでえ……お気になさらず」


「そ、そうですか。フレデリカ様、念のため本日は医者に見て貰いましょう」


「ええ」


 ワシは美玲改め、フレデリカ・フォン・ミューゼルじゃ。元の世界に帰るどころか、そもそも今の私にとっては今が元の世界って事になるから帰りようも無い。じゃけぇこれからここで生きていかんといけんのぉ。正直不安じゃ。




 ここがワシの家、ミューゼル公爵邸じゃ。結構でかい城じゃろ。なんせ部屋が多すぎて行ったことの無い部屋があるくらいじゃ。


 こんな城に住んどるくらい、ワシの今の家族は金持ちじゃ。今世のワシ、ラッキーじゃのぉ。


「フレデリカ様、医者がいらっしゃいましたよ」


 執事がワシにそういう。確かにおっさんがワシらの方へ向かってきよる。


「は、始めまして、フレデリカ様」


 医者のおっさんは頭を思い切り下げて挨拶してきおった。なんじゃ、なんであんなに怯えとんのじゃ。


「よろしくお願いいたしますわ」


 なんじゃあの医者。ワシが挨拶したら目を丸くして驚きよった。失礼なやつじゃのぉ。


 ともあれ、ワシは医者を屋敷に招き入れ、体をみてもらった。その結果、全く問題はないそうじゃった。


「念のため本日は安静にしてください」


 そういうと、医者はそそくさと帰っていった。


「何故あのお医者様は怯えていらしてたのですか?」


 執事にそう聞いてみたが、執事は大汗をかいて挙動不審になってしもうた。多分ワシに直接言いたくない事なんじゃろう、つまり原因はワシにあるという事じゃ。何しでかしたんじゃワシは……。


「そ、それよりも明日は魔法学院の入学式でございますね。怪我も無かった様ですし、安心して入学式に臨めますね」


 執事は散々考えてその話題をひねり出した。なんか悪いことしたのぉ。と、そういえば確かに明日入学式じゃった。


 王立魔法学院。ここは国で一番の学校で、魔法を専門的に学べる所じゃ。入学難易度も学費も高いから基本的に貴族しか来ん。


「そうですわね。どんな事が学べるのか、今から楽しみですわ」


 ……なんじゃ。なんでそんな目が飛び出そうなくらい驚いた顔でワシを見るんじゃ。ワシなんかヘンなことでも言うたか。


 まあいいや。とにかく明日は入学式じゃ。他の奴らに舐められんようにせんとな!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 広島県人のワイにブチささったで!
[良い点] 方言が、不良キャラとして好印象。 「広島城」という単語が、地元ネタを感じられて良かったです。 [気になる点] ですわ口調と、方言口調が入り混じるので、すこし読み辛い。 [一言] 1話だけ読…
2022/06/07 15:29 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ