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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
オセアニア評議国編
83/198

83.ケルィナ・ボーモスという女

よろしくお願いします。

11/5夜 ケルィナ視点


現在レイが殺したい対象は9名だが、ベニートにやってきてから1人増えそうだった。

その人物こそケルィナ。


本名はケルィナ・ボーモス。

彼女は一介の冒険者ギルドの受付嬢だが、一応<ゲヴァルト>系貴族ボーモス侯爵の血縁者である。

そのためケルィナはギルド内でも発言力はかなり強い。

ギルド長ですら彼女の意見を無碍にすることはできず、ケルィナは女帝的ポジションを確立していた。

しかし、あくまでその発言力はギルド内でだけであった。

元々ケルィナがボーモスの血を引いていると言っても、妾腹として生を受けたために立場が不安定だった。

竜人の貴族も基本的に人種と同じで血縁を強く意識する。

そして血の繋がりを深めるために位の同等の他家の家に嫁に出されることが貴族の女性には多かった。

しかしケルィナは妾腹。そのため嫁ぎ先は自分より地位の低い、男爵や子爵、良くても伯爵の家だった。元々不安定な地位をコンプレックスに抱えていたケルィナは地位が確かなものになるとしても今の侯爵の血縁者より男爵、子爵の地位には惹かれなかった。伯爵家の縁談は相手が好みではなかった。


そのためケルィナは一時的に冒険者ギルドの受付として働くことにした。

高ランクの冒険者は貴族たちがこぞって抱えたがり、それ相応の地位を約束し、迎え入れることがある。

そんな冒険者と出会うことができれば男爵なんかと婚姻するよりも高い地位を得られると思い、ケルィナは冒険者ギルドに勤めることにした。

ケルィナは鱗を重視する竜人の観点からすると超絶とまではいかないがかなりの美人である。

そのため自分が冒険者ギルドの受付嬢になればすぐに男は釣れると確信していた。

しかしケルィナは貴族ゆえの失敗を犯す。

まず、冒険者ギルドにはさまざまなランクの冒険者がいる。

声をかけてきた男が部分鱗で、ケルィナからすると論外なCランク以下の低級冒険者であること多い。

そして何より、ケルィナの望むようなS、Aランクの高位冒険者は高ランク迷宮のないオセアニア評議国には滅多に現れないのだ。

そのことを知ったケルィナは婚活よりもギルド内の地位向上。そして小金稼ぎに精を出すようになっていった。


「おい、ケルィナ怪我は大丈夫なのか?」


冒険者ギルド近くに借りている部屋にノックもなく無遠慮に入ってくる男がいた。

普段のケルィナを知っているものたちからすればその後のそいつの末路を想像し顔を青ざめさせるだろう。


「顔の包帯を見て、大丈夫に見える?」


しかしケルィナは特に気にした様子もなく、その問いに対してベッドに腰掛けながら皮肉を交えて答える。

尋ねた男、シゼレコも返事を想定していたのか軽く微笑を漏らしたのち話を続ける。


「あの肌の黒いエルフなら宿にいるそうだ。

どうせお前のことだ、宿も調べ終えてるんだろ?」


「当たり前でしょ。

私の鱗をはいだゴミの居場所くらいすぐに突き止めたわよ。

それであの狐には勝てるのよね?」


「ん?ああ、あの狐ならヘルハンツ迷宮に行く方を選んでたぞ」


そうシゼレコが答えるとケルィナは一瞬の沈黙ののち残念そうにし、しかしその後すぐ楽しそうに笑う。


「そう・・・。あの狐があなたの試験を受けなかったことは残念だけど、それならそれでいいわ。

ヘルハンツ迷宮に行っている間にあの女が一人になるのならやり易いもの。

それで帰ってきて大切な女がいないことに慌てふためけばいいのよ。

まず帰って来られるかもわからないけどね。」


「あの冒険者が試験中に死のうが帰ってきて泣き叫ぼうがどうでもいいけどよ、女の方は貴重なエルフだ。表立った傷をつけんなよ。売れなくなるからな。」


「ええ。もちろん。でもどちらが上かははっきりさせておかないとね。

捕まえてから後々反抗されても面倒だわ。」


「その辺は全部、任せる。しっかりやっといてくれ。」


「任せてちょうだい。それとアルアもそろそろ売り時だと思うのだけどどう思う?」


「ああ?誰だそいつ。」


「ギルドの受付嬢よ。ほら、手下共が勝手に使える娼婦的な役割をしてる。あなたも使ったことなかったかしら?」


「ああ、あの女か。いや、俺は使ったことねぇよ。鱗のない女には惹かれないもんでね。」


そうシゼレコが答えるとケルィナは笑みを深める。

「あら、私を誘っているの?」


竜人にとって艶のある声を出すケルィナに対し、シゼレコは冗談はよしてくれと笑う。


「俺は全身鱗がないとダメなんだよ。口直してから出直してきな。

そしたら考えてやるよ。それじゃ、俺は試験があるから行くぜ。

そのギルド職員は勝手にしな。エルフは頼んだぞ。」


そう足速に告げ、シゼレコは部屋を出ていってしまう。

その直後、ケルィナは甲高い咆哮を上げる。


「キィィィィ!!!!!!!!!!

あの狐っころにクソエルフがぁぁぁぁぁ!!!!!!

それに何?考えてやる?何様のつもりよ、ただの冒険者上がりの分際で!!!!!!!!」


そう言ってケルィナは発狂し目に付くもの全てを叩き、投げ、割り、壊した。

自分の鱗を剥がしたであろうレイとルノ、そして自分の誘いを断ったシゼレコを嬲るように。



ありがとうございました。

突然の連続投稿、おそらく一旦ストップします。

次回更新はまた1週間空かない程度を目安にすると思います。

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