表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
オセアニア評議国編
69/199

69.最初に呼んだのは・・・

よろしくお願いします。


イクタノーラの恩恵(ギフト)に関する必要な情報を入手したレイは虚無魔法『聚斂侵犯』の魔術を解き、一点鏡を外す。

メガネと鏡をアイテムボックスにしまい、ベッドに腰掛ける。

必要な情報以外にも得た情報が多く、そしてその情報に驚かされっぱなしで疲れてしまった。


「はぁ・・・、、」


一息ついて早速恩恵(ギフト)を発動させてみようとする。

自分の胸の辺りに手を当てて、イクタノーラの恩恵(ギフト)を理解した時に感じた力に体を馴染ませていく。あの時、コリウスの家にいた時に無意識のうちに行っていたことを今度は明確な意思を持って行う。

あの時善意を疑われ、阻害されたレイの心はどうしようもないほどに荒れていた。

孤独を恐れ、安心したいと、誰かに頼りたいと思った結果、猖佯の姿をした何かが現れた。

では今、自分は誰に会いたいのか。

それは決まっている。

NPC配下たちだ。

ならばどうすればイクタノーラの復讐をこなす最短ルートを辿れるのか。

本音をいえばNPC配下を全員ここに呼びたいし呼べれば復讐などあっさり片付けることが出来るはずだ。

けれどそれは難しい。あの時猖佯に似た何かを作り出した時も体から何かが抜ける気がした。偽物一人作るだけであれほど何かを消費するのなら本物の彼らを呼ぶという行為は体に相当の負担がかかるはずだ。


それに誰を呼ぶにしても前回と同じ方法ではダメだ。

前回と同じやり方で呼んだNPC配下は結局、今も『黒沼』に眠る猖佯に似た何かと同じで、NPC配下に似ただけの何者にかにしかならない。

レイはあの時のことを振り返る。


自分はどうやって猖佯を呼んだのか。

口は勝手に動き、体の中にある何かを代償に気付けば猖佯に似た何かを生み出していた。


確かあの時、最後の言葉はこうだったはず。


“我、想造、形作り給へ”


“想造”・・・

イクタノーラの能力。

ステタースで確認したように、その力は自分の脳内で思い描いた事柄を世界に反映させる能力。


そして“形作り給へ”。

形作る?


この場に“呼ぶ”ではなく?

もしかしたらレイは無意識のうちに思い描いた記憶の猖佯を具現化していたということなのだろうか。


それならば特定の地点にいる者を、今現在レイがいる場所に召喚する何かを作り出すことも可能なのではないか。


例えば『召喚陣』的な装置なら。


その考えに至ったレイは頭の中で今自分がいる世界とダイイングフィールド内メギド慰霊国にいるNPC配下たちとの間にパスを繋ぐイメージをする。

そしてそのつながった世界間を移動できるようにするための媒介措置を頭に思い浮かべる。


『天にまします我らが神よ

我信ずるは我が信念と配下のみ

猶し願ひつ神の御業

神ならば罪人なる我に見せ給ふ

我願う思い創造(つく)りだし給へ。』


その文言を口にした途端に、あの時と同じように体から何かが抜ける感覚を覚える。

薄暗い部屋の中に眩い光が迸る。

光がレイの前方、床のほうに収束していき光度が落ちた物体はどんどん形を露わにしていく。

床には円形の黒い光沢のある直径60cmほどの黒い大理石が出現していた。

大理石には白線で縦長の菱形の上に正方形が重ねられ、その正方形内に二等辺三角形が逆さまに描かれている。菱形と正方形が重ねられたことで生まれた三角の余白部分には上から下にかけて月の満ち欠けのような図が左回りに描かれている。その他の空白にもレイには読めない記号がたくさん描かれていた。


「これが召喚陣?」


疑っているような口振りとは裏腹にレイは確信があった。

イクタノーラの恩恵(ギフト)を完全に把握し、自分の能力とした。

それに魔法を使ったときにMPとは別だが何か似たものを消費する感覚を感じた。

それは魔法を行使することに成功したのと同じように、恩恵(ギフト)を使って召喚陣の想造、いや創造にも成功したことを意味すると考えている。


ベッドから立ち上がり、レイは恩恵(ギフト)によって創造した召喚陣に近づき、触れる。

初めて見た物なのに、触れた瞬間に使い方が脳裏に浮かんでくる。


アイテムボックスから短剣を取り出し腕を切り付ける。

大理石の上に傷付けた腕をかざし、血を垂らす。

大理石に描かれた白線の模様はレイの血が流れるたびに赤く染まり、染まっていくごとに8つある月の満ち欠けのような相位図から、順に光の柱が立っていく。

全ての白線が赤く染まり、全ての相位図から光の柱がたったことで召喚の準備が完了する。


あとは誰を呼ぶか。

一度にみんなを呼ぶことは難しい。

受け入れ態勢も整っていない、何より何かが足りない。

今の召喚陣発動の際もMPではない何かが抜ける感じがした。

だから誰を呼ぶかを考えなくてはならない。


それに呼べたところでNPC配下たちがどうなっているのかなんてわからない。

ダイイングフィールドと同じでプログラム通りの動きしかしない可能性だってある。

それでもよかった。自分の最も大切な者たちがいればそれでよかった。

ただ意志を持っていた場合、逆に反乱されることだってあるかもしれない。

レイが以前生み出した猖佯はレイの記憶、思いをもとに作られたものだったが自由意志?

のようなプログラム外の何かを体に宿していた。

だからNPC配下たちも普通に動くかもしれない。

自作のNPC配下たちならば問題ないと思うが、イベントや特定の条件を満たして仲間にしたNPCたちはもしかしたら仲間ではなくなっているかもしれない。

それが怖かった。

一度自分を受け入れてくれた存在に拒絶されるなんて考えたくなかった。


そのため選択肢はいくつかに絞られてくる。


自作NPC最強の慚愧。

最強の防御力を誇るオーキュローム。

戦いが苦手だが優しい少女ローチェ。


他は・・・・。

大蛇、太陽、天使、巨大触手、邪鬼、纏霊姿仮、幽鬼、その他の名もなき怪物たち。

考えてみると自分の国にいる自作したNPC配下の中でまともに人型をしている者が少ないことに気が付く。いくら教会の下に地獄が広がっていると言うコンセプトにしたからといってももう少し自分と同じくらいのサイズの生き物を作ればよかったと思う。


いや、可愛い配下であることには変わりないのだが。


そんなことを考えて、今呼び寄せるのに最適なNPC配下を考え、最適な1人を思い出す。

人型であり、レベルもレイと同じで200

能力を使えばイクタノーラの復讐を達成できる可能性だってある。


誰を召喚するか決めたレイは今もなお光を発している召喚陣に向かって詠唱を行う。


『世界を超えてメギドの國より来れ、ルノ・ヴェイネマイ』



召喚といえば厨二全開の文言ですが、どうやら私にはその才能が全くないようで、思いつきませんでした。

無念。

オレンジ髪の主人公の漫画たくさん呼んだんだけどな・・・。


次回更新は5月中です。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ