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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
オセアニア評議国編
60/198

60.喧騒に掻き消された独り言

今日短いです。よろしくお願いします。


「あーあ。行っちゃいました。レイさんとの恋バナを聞きたかったなー。

その方が鎖にもなりそうですし。」


ラールが宿に戻らなければいけないと慌ててギルドを後にした際に発せられたメルラの声は冒険者ギルドの喧騒の中に掻き消える。

メルラは1人、誰も来ない受付に腰掛け、相手のために淹れたお茶とお菓子を1人で食べながら先ほどの少女について考えを巡らせていた。

白山羊亭の新主人、ラール。

ウキトスは冒険者の街ということもあり、宿屋が結構多い。

その中で、白山羊亭は二つの理由から割と有名だった。

一つは宿の質が高いということ。

高いという言葉の前には中堅冒険者が利用するにはという修飾語が加わるが、白山羊亭はギルドからも結構おすすめ出来るいい宿だった。

そんな中堅冒険者が泊まるのにおすすめな宿、だが11R会議の会場ともなっている場所だった。11Rというと各種族の代表が集まるというギルドの受付嬢なんかには全く理解の及ばない話をする会議だ。当然、各国の王族、上位貴族に該当するような者が出席するために、会場にはしっかりとした格式が求められる。

そんな11Rの面々をもてなしているというのは中堅冒険者御用達の宿には考えられないことだった。


そんないろいろな意味で有名な白山羊亭だが、最近主人とその妻が亡くなり、娘2人が残されたという。そして白山羊亭は借金を抱え、取り立てが毎晩くるために、客も減っていると。そんな話を聞いていたのに、従業員が足りずに募集をかけに来た。


「やっぱりレイさんなのかなー。」


メルラは口にしたクッキーをゆっくり紅茶で嚥下しながら1人思考する。

メルラは日々誰も来ない受付業務に勤しんでいるため、あまりウキトスの街を気ままに散策することはない。それでも人がたくさん出入りするギルドにいれば噂の整合性はともかく、多くの情報を手にすることができる。

その噂では、白山羊亭の主人が交代し、借金の形として奴隷にされそうになっている。

毎晩、ロク商議会スレーブンの連中が金を返すように催促に行っている。

など色々な話がギルド内で持ち上がっていた。

しかし最近は、そうした悪い噂ではく、以前の白山羊亭に戻りつつあると言った好意的な話が聞こえてくる。

そしてメルラは一件の依頼を思い出す。


『金羊樹ツーメンチの捕獲』


わざわざ報酬の低い依頼書を持ってきたレイ。

あの時は知り合いが出した依頼と言っていたが、知り合いのためだけに金貨10枚近くを無駄にしてあえて低い方の依頼を受けることなんてことあるのだろうか。

話した感覚で人の良さそうなレイなら単純に頼まれたからと言う理由だけという可能性もあるかもしれない。しかし普通に考えればラールとレイがただならぬ関係だから益を捨ててでも損する依頼を受けたとしか思えない。

レイのおかげで白山羊亭はなんとか破産を回避した。

そうなれば、先ほどのなんの取り柄もなさそうな普通の少女が惚れるのも無理はない。


今日敢えてわざわざ区分の違う自分のカウンターに呼んだのは、ラールがどれくらいレイに対して本気なのか知りたかったことに加え、レイの普段の言動などの情報も集めたかった。

グンバに言われてメルラはクラーヴ王国に居を構える冒険者ギルドの職員にレイについて調べてもらった。

公式的なやり取りではレイなんてギルド員はいないと返事をもらった。

しかし念の為メルラはクラーヴ王国の冒険者ギルドに所属する友人に直接手紙を送り調べてもらうことにした。

まだ手紙を送ってからそれほど時間が経っていないため詳しいことはわからないため少しでもレイに対しての情報を得ようと頑張ったのだ。

そもそもレイは最初クラーヴ王国所属から抜け出すためにギルド証を消してまでウキトスにきた。

名前が同じはずはない。


そしてそれ以上にラールは受付嬢たちから煙たがられていた。

メルラはその原因となったあの時、ここのカウンターでぼんやりとしていたため後から愚痴として聞いて知った話だが、ラールは規定よりも低い報酬で依頼を掲示したがったという。依頼書は偽造ができないようにするために、割と作成に手間がかかる。

そんな絶対達成されないような依頼書を作る羽目になった受付嬢は文句を言っていた。

そしてそんな依頼が達成されたことで、男に媚びたのではないかとさらに文句を言っていた。

だからラールがあまり不快な思いをしないためにも、そしてレイがわざわざ気にかけるような相手がどんな人か知るためにメルラは自分の受付に呼んだ。

詳しい話は聞けていないが、“レイとラールの関係は悪くはない”というのがメルラが2人と話してみて感じた感想だ。そしてロク商議会のことは流石にレイも知っているはずだから、ロク商議会に目をつけられるとわかっていながら、ラールを助けたということはかなり本気なのかもしれない。何がレイという男の琴線に触れたのかわからないがレイというイーリ以上に謎な存在をどう扱うか考えるためにラールは非常に重要な人物になりそうな気がした。


「でもそうなると、あーあ、またダメそう。残念でしたねー。」


メルラはある人物を思い浮かべ、楽しげに口元を緩めた。


ありがとうございました。

来週から少し忙しくなるため、次話を明確に上げられそうな日が自分でもわかりません。

ただ遅くとも4/18日までには上げる予定ですのでよろしくお願いします。

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