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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
メギド胎動編
188/198

188.失う辛さ

よろしくお願いします。

宙を移動して知り合いを探すレイが最初に発見したのはテオだった。争いが始まってそれなりの時間が経過しているかと思われたが、実際、戦いの音が聞こえるのは局所的だった。金属音が激しくぶつかり合い、爆音轟く森林から獣の叫び声をレイは拾う。


「この声は、、、」


抱き抱えるサーシャに気を配りながらも最速で声のする方向に進んでいく。しばらくすると少しあけた空間にテオが見える。そんなテオを取り囲むようにして武装した多くの者が武器を構えており、穏やかではないと感じたレイは彼らに察知されないほどのスピードでテオの元まで飛んでゆく。


テオの元に来たことでその場にアルシアとナンシア、リオがいたことにも気がつく。2人は脂汗を浮かべ、全身至る所に傷を負っていた。空からはテオしか視認していなかったため、レイは意図せずアルシアの背後に降り立ってしまう。戦闘中の研ぎ澄まされたアルシアの感覚でもレイが背後に現れたことを知るには時間が必要で、その時間はレイが2人の存在に気がつくよりも遅かった。


「危ないっ。リオちゃんに当たってしまいます」


だからアルシアからすれば即座の反撃でもレイは容易に止めてしまう。攻撃を止めた手はそのままに現場の確認をしようとしたレイだったが、リオの泣きじゃくる様子に困惑を深める。


「お父さん・・・お父さん・・・!」

リオの言葉を聞いてレイの頭が真っ白になる。黒焦げの、とても人間だとは思えない姿で地面に転がる何かに対してリオはお父さんと縋り付いている。嫌な想像がレイの頭をよぎるがそれ以上に考えることを本能で止めてしまう。


「もしかして、パノマイト、さん?」

レイの問いに答えを返すものはいなかった。ただ、レイにしてみればそれで充分で、答えなど聞きたくなかった。


それからレイの意識がはっきりしたのは蝙蝠人を組み敷き、顔面を『黒悪魔の手』で握りつぶした頃だった。


「、、、おい!!レイ!!もういい、やりすぎだ!!!」


自分の肩を誰かに触れられる感触。敵意がないため反応することができず触れられてしまう。しかし、直接呼びかけられたことでレイは多少なりとも意識を覚醒させる。


改めて自分を振り返るとレイの体は血で汚れ、首から上をなくした体に片膝をついて地面に押さえつけていた。器用なことに、意識はないくせにサーシャを左腕で抱えていたため、右足だけで相手を地に倒れ付したようだ。それでも血飛沫は抑えることができずレイに抱えられていたサーシャも汚れてしまっている。


先ほど、レイが到着した時にテオを取り囲んでいた軍のなかに息あるものはおらず、テオたちを取り囲む包囲網は円形の死体の山に変わり果てていた。


「アルシアさん、」


あたりの様子を見てからレイは自分に呼びかけたエルフの女性に視線を向ける。レイからの返答があり、あからさまにホッとした様子のアルシア。


「来てくれて、助かった。聞きたいことも、言いたいことも山ほどあるけど、今は、まず、パノマイトをなんとかできないか教えてくれないか?」


諸々の疑問を告げた後、アルシアは小声でレイに話しかける。薄々、あの黒焦げの死体がパノマイトなのかと思っていたレイだったが、実際にアルシアからそう言われてしまっては、この事実を否定しようがない。


「あの魔法は生きている人にしか効かないんです。」


レイの一言でアルシアは落胆した表情を浮かべる。死んでいるとはわかっていてもリオの様子を見て頼まずにはいられなかったようだ。


アルシアとの会話が落ち着くとレイは立ち上がり、抱えていたサーシャに詫びを入れる。


「ごめんね、サーシャ。怖い思いをさせて。」


「んーん。お兄ちゃんと一緒だから大丈夫だよ〜」

アルドリエの頭巾をかぶっていても付着してしまった血飛沫を見てはサーシャの言葉は強がりにしか聞こえない。そんなサーシャと自分の汚れをレイはまとめて聖属性魔術『クリア』を使用してきれいにする。それからレイはナンシアたちのもとに移動する。


「お久しぶりです。ナンシアさん、アルシアさん。」


「、、、お久しぶりです。」

穏やかな口調で挨拶するレイに対して、笑みの引きつるナンシア。一体どうしたのかとレイが首を傾げる一方で、アルシアが話だす。


「早速で悪いが、一緒にエルフの国まで来てもらいたい。」


「それは願ったりなことですけど、いいんですか?」

レイはエルフの国を訪ねてやってきた。それが国境付近では戦闘が発生しており、知人が攻撃を受けていたから助けに入った。そんな戦時中とも取れる状態で他種族の自分がエルフ種の国に入国しても良いのだろうかと疑問を返す。


「レイさんに助けてもらう前に私は援軍を求める魔法を空に打ち上げたんです。でも、誰1人として助けにはきませんでした。もしかしたらクティス獣王国の軍がここ以外にもいるかもしれなくて、そうなると私たちだけではリオちゃんを守ることは難しいので、レイさんにはついてきてもらいたいんです。」


レイの疑問に答えるナンシア。ナンシアの話を聞いて納得するとともに、レイは未だ泣き続けるリオに視線を送る。自分も最も大切存在、ラールを失ったばかりでリオの気持ちは泣きたいほどわかる。できることならパノマイトを蘇らせてあげたい。しかし、そのような芸当はレイにもできない。できるのであればレイは真っ先にラールを生き返らせている。気持ちがわかる手前、レイはリオに言葉をかけることができなかった。自分にとっての大切な人を失った時の苦しみは自分にしか理解ができず、どのような言葉をかけられても気休めにしかならないことをレイは知っていた。


「お兄ちゃん、降ろして〜」

そんなレイの視線を感じ取ったわけではないだろうが、サーシャは抱えられていたレイから降りると泣きじゃくるリオの元までトテトテと駆け寄る。


「大丈夫〜?」

サーシャは近づいてリオに声をかけるが反応はない。しばらく無言になったかと思えばサーシャはリオの隣に座り込み、頭を撫でる。それでもリオの涙は止まらない。同じくらいの年齢の女の子同士という点でサーシャはリオに何か思うことがあったのかもしれない。

レイがそう思うくらいにはサーシャはリオに対して親身な様子だった。


「悪い、できれば急いで移動したい。」

パノマイトの死体に縋り、泣くリオのことを見て申し訳ないと思いながらもアルシアはアルシアで国のことが心配で戻りたい様子を見せる。


「お兄ちゃんもいるから大丈夫だよ〜一緒に行こ〜」

サーシャは立ち上がるとリオの手をとり、引っ張ろうとする。


「やめて!!!」

しかし、泣きじゃくるリオには声が届かないようで、サーシャの手は振り払われてしまう。


急ぐ様子を見せるアルシアも流石に今のリオを見てはパノマイトから強引に引き剥がすことはできないようで、ナンシアとアルシアで顔を見合わせて困っている。


「俺がリオちゃんを守りますから2人は国に行ってください。落ち着いたらでいいので迎えにきてもらえますか?」

その様子を見かねたレイが提案を出す。


数瞬、考える2人だったが、よほど国のことが心配なのかレイの申し出に感謝すると走って国に向かってしまう。レイはここまでリオのことを守り切ったテオに回復の魔法をかけると、リオを刺激しないように近づいていく。手を振り払われたサーシャは辛抱強くリオの隣に寄り添っていた。


レイが側に来たとわかるとサーシャは立ち上がり、レイに耳打ちをする。


「お兄ちゃん、どうしよ〜復活できない〜?」


「ごめんね、俺は何もできないんだ。サーシャがリオちゃんのこと心配だと思うその気持ちをしっかり伝えてあげて。ゆっくり見守ろう」


「うん、わかった〜」

サーシャはこくんと小さく頷くと、再びリオの隣へと戻った。泣き続けるリオの背中をさするサーシャの姿は、レイの目には小さく映るが、けれども頼もしく見えた。




日も暮れて野宿を覚悟し始めた頃。アルシアが戻ってきた。

リオは泣き疲れ、サーシャはさすり疲れて眠ってしまっていた。


「悪い、遅くなった。」


「いえ、その様子だと国の方でも大変だったんですよね。大丈夫ですか。」


レイはソアトル大森林に到着した際の獣人の多さを空から見て知っていた。アルシアたちが戻ってくるまでには時間がかかるだろうということは何とかく考えていたため、問題はなかった。念の為、シャナは森で潜伏してもらい、纏霊姿仮にはそのまま姿を消した状態で護衛をお願いする。アイテムボックスから毛布を取り出して寝てしまったサーシャとリオにかける。


そうして自分も休む体勢を取ろうとした頃にアルシアは戻ってきた。


「ああ、レイの言うように国の方も大変なことになっていた。幸い、前線で食い止めることができたから国内までは侵攻されていない。これもレイのおかげだ。ありがとう。」


「俺は何もしていないですよ。」

レイはテオの声に応じてこの場を助けたが、それ以外は何もしていないとレイは思っている。それゆえに本気でアルシアのお礼の内容を否定していた。アルシアからすればそのレイの言動は不可解でしかない。レイが現れ、その存在がクティス獣王国軍を撤退に追いやったことは間違いがない。


「まずは、私たちの師匠に会ってもらいたい。テオは国に入れることはできないが、そこの2人の寝床は用意した。一緒に来てもらえないか?」


アルシアの提案を聞いて、温かい布団で寝かしてあげた方がいいかと寝ている2人を見て、テオを見る。


「できれば今晩はリオちゃんをお父さんとテオと一緒に居させてあげてくれませんか?」


「テオは難しい。ここにいるとしてもまだ獣王国の残兵がいるかもしれない。あまり安全ではないぞ」


「それなら俺が今晩はここにいます。アルシアさんの師匠との話は明日でもいいですか?」


「それは、」

アルシアの師匠は普段気楽な様子を弟子たちに見せているが、実際のところ忙しい。その様子を見せていないだけで、アルシアたちはそのことを知っている。そのため、できれば時間を作ることができる今のうちに話をしてもらいたいと思っている。それに落ち着いてからでは師匠と会う場合に様々な手続きや承認が必要となり、レイ自身も動きにくい可能性があった。


どうしたらいいかと困っていると別の声が割って入ってきた。


「いいよ、僕がこっちにきたから。用があるのは僕なんだしね、呼び出すのは失礼ってものだ」


「し、師匠!」

突然聞こえた声に驚いたアルシアは背後を振り返り、さらに驚き声を上げる。レイもだいぶ接近されるまで存在に気がつくことができていなかったため、アルシアの驚きに内心で共感していた。


そしてその相手がアルシアの師匠だと言うことを聞いて相手をまじまじと見てしまう。


レイの想像するエルフ像に驚くほど合致していた。眩く陽光を弾く金のヴェール。輝くその髪は、腰のあたりまで滑らかに伸びており、風に乗ってしなやかに舞う。光のない闇夜ですら一本一本が光の糸のようで、彼女が歩みを進めるたび、周囲の空気すら清められていくような錯覚を覚える。すらりと伸びた肢体は、アルシアよりもわずかに小柄で160cm台といったところか。それでも彼女の立ち姿には、他の誰よりも大きな存在感があった。背筋を真っ直ぐに伸ばし、柔らかくも凛とした気配を身にまといながら、まっすぐにこちらへと歩を進めてくる。顔立ちは整っている、という言葉ではとても足りなかった。涼やかな翠の瞳は、木々の間から覗く初夏の湖面のように澄み、睫毛は薄く長く、肌は雪のように白く輝いていた。頬や顎の線は繊細で、けれど芯の強さを秘めている。まるで神々の手によって丹念に彫り上げられた彫像が、そのまま命を得て動き出したようだった。


驚くほど、レイの思い描いていた“エルフ”像に合致していた。それもゲームや漫画に登場するエルフだ。この世界にきてナンシアやアルシア、それにミャスパー男爵に捕まっていたエルフたちを見て、顔立ちの整った美男美女という印象は持っていた。それでも今目の前に現れたアルシアの師匠はずば抜けて綺麗だとレイは思っていた。


「はじめまして、僕はエルミア・レオナイン。アルシアとナンシアがお世話になったね。」

片手をレイに差し出して、森の奥にまで浸透していくような透き通った声で挨拶をするエルミア。


「はじめまして、レイです。」

返事はしたもののレイは無意識で握手を返していた。


「君のおかげでエルフの国は救われたよ。ありがとう」


「アルシアからもお礼を伝えられましたが、俺は何もしていません。エルフの方々が尽力された結果だと思います。」


「そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ。だが、君のおかげというのもあながち間違っていないと思うんだ。というのも、アルシアも知らない話だが、実はエルフの国が最初に攻撃を仕掛けられたのは7日前なんだ」


「師匠!?」

初めて聞く話にアルシアは思わず声を上げてしまう。そんなアルシアをエルミアは無視してレイに話を続ける。


「防衛の関所をいくつか超えて、入国間際でどうにか相手の侵攻を食い止めていた。手助けに行きたかったけれど、僕の方にはクティス獣王とその側近2名が直接仕掛けてきてね。身動きの取れない状態だったんだ。ジリジリと戦線を後退させていく中で、今日君が現れた。そしてクティス獣王国軍は撤退した。単なるリミットだったのかもしれない。けれど、君がきてくれたおかげで相手が軍を下げたとも考えることはできる。だからありがとう、なんだ。」


「はぁ・・・でも、どうしてアルシアは7日も知らないままだったんですか?」


「理由は二つあるよ。一つはアルシアとナンシアが国の中心の方にいて、国境間際の話が伝わらなかったから。もう一つはお客人と関わりの深い2人に情報を伝えて、話が漏れてしまったらお客人を不安にさせてしまうからね。黙っていたんだ。まさか、こちら側にも軍を回しているとは思わなかった。結果としてお客人に被害が出てしまったことは本当に申し訳なく思っている。」


エルミアの話は全て納得できるもので、疑問が生じることはなかった。


「アルシアたちが知らなかった理由は理解しました。軍が下がったと言っていましたが、今はどこも戦闘中ではないということでいいんですか?」


「ああ、その認識で問題ないよ。今は国境沿いの村に支援物資を運んだりと、戦後の手配を行なっている。戦いが起きているという報告は受けていないね。」


「そうですか。戦いが終わったのならよかったです。」


「ああ、本当に。どうしてクティス獣王国がこのタイミングで攻めてきたのか全く検討がついていないからね。それに君もどうしてこのタイミングで現れたのか。レイ君。君のことは味方、と思っても?」


「アルシアさんとナンシアさんにはお世話になりましたから。それにパノマイトさんたちにも。」


ここまで、まるでセリフを読むように言葉を発していたエルミアの言葉がわずかに詰まる。しかし、そのことに気づくものはこの場にはいない。


「だが、アルシアたちから話を聞く限り、君は用事があってうちには来れないからルノ君を代わりに送ったのではなかったか?」


「ルノとも会っていたんですね。そうです。あの時は予定があったんですけど、それはもう終わっちゃいましたから。・・・パノマイトさんたちが無事にエルフの国に到着できたか心配で来てしまいました。」


レイのわずかな逡巡。サーシャと一緒に近くに住ませてもらえないかと聞きに来たらエルフは獣人と大規模な戦いがあったばかり。とても他種族の自分達が近くに住めるとは思えなかった。それに、争いを避けてきた場所で戦いが起きていた。そして知り合いが命を落とした。とても住みたいとは思えなかった。


「わざわざ来てくれたのに、最悪な状況を見せてしまって申し訳ない。しばらくしたら国も落ち着くはずだ。当面は僕の家にいてくれ。生活全てを面倒みよう。もちろんリオ君も。レイ君と別行動している彼も。」


「テオはどうなりますか?」

シャナのことに気がついているあたり、エルミアの実力を軽視することはできない。しかし、それ以上に気になることはテオのことだった。パノマイトを失った今、リオにとって唯一の家族。


「彼は僕の家で面倒を見るには大きすぎるからね。ここにいてもらうことになると思うよ。だが、不自由はさせないつもりだ。」


リオは熱を出していてもベムとペスの様子を見にくるくらい彼らのことが大好きだ。父を失ったばかりの彼女は当然、昔以上にテオの存在を支えにするはずだ。その場合、リオとテオは近くで生活をさせてあげたい。自分がサーシャと暮らすことで安心感を得たようにリオにもそうした存在が近くにいてあげたほうがいいと感じていた。


「俺はパノマイトさんたちの様子を見たらすぐに出発するつもりでした。ただ、パノマイトさんが亡くなって、リオちゃんが1人になってしまった以上、俺が引き取ります。生前にパノマイトさんからも何かあった時はお願いすると言われていましたし。」


「君たちは主従揃ってすぐに行動したがるんだね。でもそんな幼い子供を2人も連れていく場所なんてあるのかい?」


エルミアから指摘されてレイは言葉に詰まる。纏霊姿仮という質量の法則をガン無視した建物持ち運び配下がいるためどこにでも気軽に拠点を移動させることができる。しかし、移動先として考えていたエルフの国は安全ではなさそうで、サーシャとリオを連れて移動しようかと思った。テオもいる以上移動は馬車になるだろう。そうなれば移動のペースは落とさざるを得ない。それに移動先の候補もない。


「それならここに生活スペースを準備させよう。そうすればリオくんとテオくんは一緒に生活できる。パノマイトくんの代わりに君が面倒を見るというのなら一緒に暮らせばいい。戦いがあったとはいえ、一度撤退した連中だ。彼らが戻ってくる可能性は低いだろう。そうした意味では安全じゃないか?」

レイが言葉に詰まった様子を見てエルミアが案を提示する。


エルミアの提案にレイは思案する。確かにここ以外の引越し先は何も考えていなかった。そのため、エルミアからの提案を断る理由がなかった。しかし、警戒心皆無のレイも流石に話が良すぎるのではないかと考えて答えられないでいる。


「リオくんには悪いことをしたと思っている。それにルノくんには同胞をここまで送り届けてもらっておきながらお礼ができていないからね。代わりに君たちの暮らす空間くらい手配させよう。」

レイの疑惑を晴らすためではないだろうが、理由を説明してくれるエルミア。それならばと納得しようとしたレイであったが、エルミアはそのまま話し続ける。


「それでも何か疑わしいと思うのなら、レイくんが納得できるようにギブアンドテイクな関係でいようじゃないか。」


「それはどういう?」


「こちらからの無償の行為に引っ掛かるなら、僕に君からの報酬をもらいたい。そうすれば互いに対価を払っている分、今の話が信用できるだろう?」


畳み掛けられて押されている感覚はするもののエルミアの話に齟齬はない。


「俺は何をすればいいですか?」


「何、別に大したことではないよ。『今後君たちがエルフと友好的に接してくれる』と嬉しいだけさ。」


「それだけですか?」


「ああ、エルフはとても排他的な性格をしていてね。外に敵を作りやすい性格をしているんだ。だからこそ、今回の襲撃もあったのかもしれない。身近な人からコツコツと仲を深めていかなければと思った次第だよ。」


「そういうことなら。でもしばらくしたら移動すると思います。俺が一緒にいる子の一人は獣人の血を引いていますし、あまりエルフの皆さんにはよく思われないでしょうから。それまでは、よろしくお願いします。」


レイはエルミアの意見に納得しつつ、妥協できるラインを伝える。エルミアの願いを了承し、2人は互いに笑みを浮かべて握手を交わす。それから今日はもう遅いということもあり、続きの話は明日行うことにした。先に寝てしまったサーシャとリオのために布団を準備してくると言ってエルミアとアルシアは国に戻って行った。

ありがとうございました。

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