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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
メギド胎動編
184/199

184.イレギュラー

よろしくお願いします。

シャナに周囲の状況を把握するように指示を出すと、レイ自身も動き始めた。シャナは別行動に難色を示したが、纏霊姿仮がレイの護衛として残ることで一応の納得は示す。纏霊姿仮は自分の存在を空気に溶け込ませることができる。レイですら認識することは難しい。そのため相手からはレイが一人でいるように見えるため、油断を誘いやすい。


上空を飛行していたレイは高度を下げ、あたりの様子を見てみることにした。レイであれば攻撃が当たっても問題はない。しかし、サーシャは一撃でも致命傷となる。そのためレイは降下する前、サーシャに防御アイテムのアルドリエの頭巾を被せる。これにより頭部は保護され、万が一にも一撃で殺されることはない。攻撃が当たらないようにレイもいつも以上に神経を張り詰めながら森に近づいていく。


高度を下げるとまず、争う集団が目に入る。片方はソアトル大森林に暮らしているというエルフ。彼らは後方を意識しながら、前方の敵に向けて弓を構えている。その様子から後ろに自分たちが住む集落があるのだと思われる。それに対して、ただ進軍あるのみと突き進む集団がいる。彼らは甲冑に身を包み、ガシャガシャとうるさい音を立てながらエルフたちに向かって攻めていく。エルフたちほど容姿が似ているわけではないが、耳や尻尾があるものが多く、甲冑の隙間から覗く体毛は獣人種の特徴を表している。


レイはぱっと見で守るエルフ、攻める獣人という印象を抱く。

そしてそれ以上の正解はこの現状を見るだけでは求めることができなかった。どうしてエルフに対して獣人が集団で攻めているのか。しっかりと話を聞かないことにはわからない。そのためレイはまず、自分の知り合いの安否を確かめることを優先する。押し込まれるエルフたちを他所にレイはあちらこちらを飛び回り忙しなく目を動かす。体を動かしながら上下左右とパノマイト、リオ、ナンシア、アルシアを探して、目がカメレオンの如く動く。目の動きはさることながら動き自体も尋常じゃないため、エルフ、獣人両陣営からレイの存在は認知されていなかった。



しかし、それは戦い合っている兵士たちの話だった。

レイがソアトル大森林の領域に踏み込んだ時点、一部の上澄の猛者が戦場の不確定要素に不安を感じる。その強大な力の持ち主がどの陣営の者なのか。エルフなのか、獣人なのか。はたまた第三陣営のものなのか。一体目的は何なのか。どうしてこのタイミングで存在を自分たちに認知させたのか。情報がないために各陣営の猛者、エルフのエルミア、獣人のクティスは動き出しを決めあぐねていた。



(なんだ?この気配。エルミアが動揺しているってことはあいつも知らないイレギュラー?それならこっちで利用するだけだ。)

「俺らの援軍が来たようだ。被害が拡大しないうち、大人しく捕まったらどうだ?」

最初に言葉を発したのは獣王クティスだった。


彼は今、エルフの集落の中枢。ハイエルフ、エルミアの居住地に足を踏み入れ、エルミアを捕えるため戦っていた。現在エルフの国が獣人に襲われているのはクティスがエルミアと戦いたい、戦争資金補填のためにエルミアを奴隷にする必要があるというひどく恣意的な目的のため。


エルフ集落の入り口。エルフにとっての最終防衛ラインの守りは硬い。そこの攻略に向けて四獣長の1人、ミロノヴィガは指揮をとっている。しかし、それだけ最終防衛ラインの守りが厚いということはそこを突破すれば戦力は格段に減ることが予測された。


強固に守られた前線をエルフに気づかれぬように突破したものがいた。王であるクティスと四獣長のライモンドとグリャの3名だ。そしてそのままエルミアの元まで直行し、戦闘が開始される。エルミアの捕獲が主目的であれば3名がかりで動いた。しかしこの戦争の目的はクティスがハイエルフと戦ってみたいという子供じみたもの。そのため、四獣長の2人は周囲を警戒して邪魔が入らないようにしていた。


そんな折にその巨大な力を察知した。戦闘中のエルミアの動揺を見てとり、クティスは仕掛けた。さも、その場に現れた巨大な力を持つものが自国からの援軍であるかのように。


「無視に、よそ見なんて随分と余裕だなあ!!!」

エルミアがレイの存在を感知して動揺する一方でクティスは目の前の相手に集中していた。クティスが非常に好戦的であったことに加えて、相手が自分よりも格上だとクティスは察していた。エルミアには集落を襲ってきたクティスたちに対して怒りの感情は感じられど、こちらを恐れる素振りが全くない。クティスたち3名が現れたときも大して気にする様子はなかった。クティスがエルミアと戦いたい気持ちなどエルミアは知る由もない。そのため、遭遇時は1対3になることを覚悟していたはず。それなのに、エルミアは動揺することがなかった。そして実際に戦ってみてもクティスの攻撃はエルミアにとって致命傷たり得なかった。


その実力の差が、レイの存在を認知しときに取った行動に大きな変化を見せた。


クティスの渾身の一撃。あまりの一撃に宙を舞う土埃。ライモンドとグリャも自分の王が押されている姿にわずかばかりの焦りを感じていたが、攻撃が綺麗に決まったと安堵する。


ただ、もう一度言うが、クティスの攻撃はエルミアにとっての致命傷にはなり得なかった。土埃が晴れると僅かにかすり傷を負ったエルミアが立っていた。レイの存在による動揺はまだ完全に無くなってはいないようで戦闘相手であるクティスに焦点は定まっていない。それはクティスの渾身の一撃が致命傷になっていない以上仕方がないのかもしれない。


それでも四獣長の2人は驚かずにはいられなかった。強きを尊ぶ獣王国でクティスは名実共に最強の名を手にしている。自分の実力に自信のあるライモンドとグリャですらクティスには一歩及ばないと感じている。そんな、自国の王がいつも見下しているエルフ種に手も足もでない状態でいる。そんな姿想像もできなかった。


「君たちの仲間であんなに強い人がいるなんて聞いたことがないよ。私を捕まえたいのなら、彼がこちらにくるべきだ。そうしなかったということは獣王国側も彼の存在を把握していないということかな。」


「そんなの俺がお前と戦いたいからに決まっているだろう!」

問いを投げかけたエルミアに対してクティスは拳を返す。飛びかかってくる攻撃をエルミアは軽くいなしながらクティスの様子を観察する。先ほどまではクティスのことなど眼中にない様子だっただけにエルミアの変化はクティスも感じた。


「俺の言葉が本当か嘘か必死に考えているな!無駄だ無駄、あれは俺の援軍だ。そして俺はお前と戦う!!!」

白い立髪をたなびかせながらクティスはゴツい図体からは想像できないほど軽やかに回し蹴りを繰り出す。


「困ったな。君たちを追い払うだけでなく、私はその仲間とも戦わなければいけないのかい?全く、エルフは人材不足すぎるよ。」


それからしばらくエルミアはクティスの言葉の真偽を探るために接近戦で攻撃をいなしていく。


撃ち合いをする中で感じたことだが、クティスの興味は完全に自分にあるようで、探りを入れても無駄ではないかと感じていた。


エルミア自身も今の撃ち合い程度であれば余裕を持っていなすことができるが、クティスとその背後で様子を伺う2人もまとめて制圧するのには時間がかかる。そのため、クティスたちを足止めしている方がエルフ側の勝利につながると考えていた。しかし、イレギュラーの存在が気がかりにもなっている。獣王国との関係がこれ以上ないほどに拗れることになっても獣王クティスを倒して自分は何が起きても即座に対応できるように動くべきだと方針を変更する。


そして、エルミアがクティスを倒そうと動き始めたその瞬間。

ソアトル大森林、そのものが静まり返る。

吹き抜けていた戦場の風すら止み、木々の葉擦れも聞こえない。

誰もが感じる突然の異質な圧。

その圧は大森林一帯を満たす。まるで森が巨獣に睨まれて竦み上がっているような、そんな錯覚。


「間に合わなかった、ということかな」

エルミアはイレギュラーの存在が獣王国側のものである可能性は高いと感じていた。それはここまでの打ち合いでクティスが突如森に現れたイレギュラーに対して全く関心を向けることがなかったためだ。それに背後にいる2人も驚きはしていたが焦りなどの感情は伺えなかった。そのため、獣王国に属するかはともかくとして、今回の争いに限っては獣王国側に与する相手だと考えた。


返答があるとは思わなかったが、エルミアはクティスに問いを投げた。しかし、返答はない。これまでのクティスの様子を見ればその答えは攻撃によって返ってくることがわかる。


エルミアはあえて隙を見せながらも攻撃が繰り出されたらカウンターを決め込めるように用意をしていた。だが、クティスから攻撃が飛んでくることはなかった。範囲攻撃の可能性を察してエルミアはクティスから距離を取った。


それでもクティスが追撃してくる様子はない。

というよりも、クティスは構えたまま全く動きを見せない。

何があったのかと詳しくクティスの表情を見てみると、そこには青ざめた顔をしているクティスがいた。背後に控えていた2人は地面に膝をつき、呼吸も荒い。


獣人側の変化がエルミアを混乱させる。

イレギュラーはクティス側だと思い始めていた。しかし、今のクティスの青ざめた様子をみるに森一帯に放たれる圧はエルフだけでなく、獣人にすらひどく影響を与えている。イレギュラーの存在を検知してから数十分程度。その間に何があったのかエルミアにはわからない。しかし、味方にまで圧を撒き散らすような存在がいるだろうか。このことからイレギュラーはエルフ側でも獣人側でもない本当にイレギュラー的な存在なのではないかという考えがエルミアの中に生じる。


クティスを早急に排除してイレギュラーの様子を直接観察しないことには同胞たちの安全に対しての不安は拭いきれない。そのため早急な排除を意識してエルミアは戦闘のギアを一気に2段階ほど上げようとする。


「王様ッ!!!」


そこに血相を変えて滑り込んでくる乱入者が現れた。


王と叫び呼ばれたことでクティスの意識が現実に戻ったようで、乱入者に視線を向ける。


「・・どうした、ミロ。」

クティスはとてつも無い圧に押しつぶされそうになっていたところ、自分を呼ぶ者の声が自分以上に取り乱しているように聞こえて意識を取り戻した。しかし、その声の主がエルフの最終防衛ラインを攻略するために指揮をとっていた四獣長の1人ミロノヴィガだった。


「撤退の指示を!!突如現れた獣の仮面をしたものによってこちらの被害が許容範囲を超えました。このままでは全滅すら有り得ます。早急に撤退を!!!」


撤退しなければいけないほどに損耗していることにも驚いたが、それ以上にその損耗を1人で生み出した存在にクティスは言い知れぬ感情に襲われる。生まれて初めて感じる感情の正体がわからないまま、その感情を拭い去るために声を張り上げる。


「目標は、何も達成できてない、このまま帰ったらシープエントにキレられるぞ」


撤退という言葉が脳裏をかすめる。だが、その考えをクティスはすぐさま打ち消した。イレギュラーから離れたいわけではない。エルミアとの決着をつけたい。そう自分に言い聞かせながら、戦場に踏みとどまる理由を探す。


「戦費の補填も、まだ終わってないからな・・・ミロ、そういうことだ。撤退はできない。」


普段なら猪突猛進そのものと言われるクティスが、あえて損得を理由にしてまで戦いを続行しようとする。その姿は、計算づくなのか、それとも単なる強がりなのか。ずる賢い、と評するには、あまりに普段の彼らしくないやり方だった。



普段のクティスとは異なる様子に疑問を感じたが、それ以上に今は恐怖の根源がいるこのソアトル大森林からいの一番に撤退しなければいけない。その責任感だけでミロノヴィガはさまざまな恐怖を押し殺し、クティスに進言していた。


「ライモンド、グリャ!!あなたたちも王を説得して。できなければ無理矢理にでも引きずりなさい!!!」


普段はなんやかんやでため息をつきながらも周りの無理な行動を是とするミロノヴィガは今はいない。必死の形相ででクティスたちを引き戻そうと声を張り上げている。そんな様子を見たことなかった四獣長の2人はたじろぎながらもクティスの説得に協力する。


「ほら、お仲間も来たことだし、早く帰ったら?帰る分には見逃してあげるからさ。」

対峙していたエルミアからの了承もなぜか得られ、クティスは戦力的に味方のはずの3名にはがいじめにされる形で後退させられた。


クティスも言葉では強く抵抗するが、いつもより体に力は入っていない。クティスの本能でも撤退することが正しい行動だと理解しているようだった。



クティスの抵抗が少なく、エルミアからの追撃もないことでクティスと四獣長の3名はすんなりと撤退が完了できていた。ソアトル大森林から獣王国に撤退する中、ライモンドは今になってミロノヴィガの行動に不満を表す。


「あの時、森の空気が変わったのは俺も感じた……だが、それでも納得がいかねぇ。あれだけ短時間で撤退命令を出すなんて、どうかしてる。お前、戦費を少しでも減らそうとしたんじゃないのか?」


「そんなことする訳ないじゃない。確かに今回の戦争には反対していたけれど、始めて仕舞えば足を引っ張ることなんてしないわ。本当に、ただただ、蹂躙されたの。」


ミロノヴィガは小さく息をつき、まるで胸に溜まっていた何かを吐き出すように、低い声で語り出す。


ミロノヴィガは最終防衛ラインの攻略に全神経を注いでいた。エルフたちの抵抗は想定以上に激しく、進軍は遅々として進まない。それでも、損耗はギリギリ許容範囲内。こちらが戦っている間に王がハイエルフを捕獲できれば何も問題はない。最悪、数日かけて押し切る覚悟でいた。部隊の配置を変更するため、副官に指示を飛ばそうとしたそのとき――


「・・・?」


森の空気が、急に変わった。いや、変わったという表現では生ぬるい。森そのものが、圧倒的な「存在」に押し潰され始めている。体感的には、重力が倍に増したかのような錯覚。肺に空気が入らない。心臓の鼓動が不自然に早くなる。


「何、これ・・・」


周囲に目を向けると、部下たちが次々とその場に崩れ落ちていく。膝をつき、口から泡を吹き、呻き声すらあげられなくなっている者もいる。


「まさかエルフの毒?!・・・っ」

ミロノヴィガは必死に視線を上げ、前線の敵――エルフたちを見る。だが、彼らも同じだった。エルフも獣人も、種族も陣営も関係なく、森全体が同じ「圧」に潰されている。これは、戦術でも、魔法でもない。単なる圧。これだけの広域に、これだけの負荷をかけているのか。喉の奥がひゅうひゅうと音を立てる。指先の震えが止まらない。自分は獣王ほどではないが強い。四獣長として、これまで数々の修羅場を生き抜いてきた。それでも・・・それでも、今のこれは・・・


「・・・おかしい。これは・・・」


理性が危険信号を出す前に、本能が絶叫していた。――ここにいては死ぬ。


「撤退ッ!!」


反射的に怒鳴る。部下たちは、誰もが耳鳴りの中、それでもその言葉だけははっきりと聞き取ったようで、一斉に後方へと動き始める。だが、立てない者も多い。中には気を失い、その場で泡を吹いて動かない者もいる。ミロノヴィガは自分の震える足を必死に叱咤しながら、よろめきつつも倒れた部下の肩を掴んで引きずる。


「私は王に撤退の報告をします。この様子ならエルフの抵抗もなく、奥に進めるはず。あなたは副官に即撤退の準備をするように伝えなさい。」


蛇人とはいえ、自分も獣人の一員。普段なら絶対に口にしないはずの「撤退」という単語が、何度も、喉から漏れ出る。それほどまでに、今この森は「異常」だった。まるで、目に見えない巨獣が、大森林ごと押し潰そうとしているかのような――そんな圧。


「・・・いったい何が?」


答えはない。この場にいる誰一人、理解できる者はいなかった。ミロノヴィガ自身も答えを求めての発言ではないため、返事がなくとも撤退するために王の元に急いだ。


「そうして、あなたたちがハイエルフに押されているところに遭遇したのよ。」


「俺は戦っていない。苦戦した数に入れるな。」


「でも、王が苦戦する相手なのだからライモンドも苦戦するに決まっているじゃない。」


「黙れ!それで、その圧の正体を知る前に逃げ帰ったってか?」


「逃げた逃げたってうるさいわね。あなたたちがいても、それこそ王がいても撤退を選択されていたわ。それほどにあの森のあの瞬間は異常だったもの。」


「ライモンド、ミロを責めるのはそれくらいにしておけ。」

ミロノヴィガとライモンドが口論をしていると獣王クティスがやってくる。


「今、兵士たちの様子を見てきたが、意識を失った連中はまだ目覚める気配がない。正気を保っていた奴らも森から離れることができて安堵している様子だった。ハイエルフは確かに戦っていて勝ち筋を見つけることができなかった。だが、対面していない敵の意識を刈り取るなんて芸当はあのハイエルフにすらできていない。その時点でミロが遭遇した現象はハイエルフ以上の何かが起こした事象だ。対処しろと言う方が酷だろう。」


ライモンドは流石に王から諌められてしまうとこれ以上ミロノヴィガを糾弾することはできない。グリャは撤退してからここまで一言も口を開かず、腕組みをして何かを思案している。


「ありがとうございます。それで、ハイエルフは捕獲できませんでしたが、次はどうしますか。」


「戦果は0。今日は1月の10日だから侵攻を開始して2週間くらいか。この時点で白金貨が100枚くらい使用しているんだったか?」


「はい。侵攻を開始して1週間で、食料品、装備費用、兵への手当てを含めておよそ白金貨49枚ほどになりますので、現在で100枚は白金貨を使用していると思われます。」


当初の予定ではハイエルフを捕獲できれば白金貨が600枚は手に入ると甘く考えていた。失敗に終わった今、白金貨100枚の負債が確定した。


「そうか。それと、兵士たちをざっと確認しただけだが、バットラウトの姿がなかった。これはそういうことか?」


「恐れながら、バットラウト総牙軍隊長はあの圧の本体に遭遇したようで、殺されたようです。」


「それは正直白金貨100枚の負債よりも厳しいな。ハイエルフの実力を見誤っていたことは確かで、その責任として負債が生じたことは仕方がない。しかし、イレギュラーがいなければバットラウトを失うことはなかった。こればかりは納得し難い。」


「傷心のところ申し訳ありませんが、それでも今後の方針を定めていただけないと私たちは動くことができません。どのように対応をすればよろしいでしょうか。」

忠誠心の厚い実力のある部下を失ったことでクティスはダメージを受けていたが、ミロノヴィガは国を動かすために今後の方針を求める。


「少しでも負債を減らさなければならない。ライモンドは軍を一部率いてニーニャに合流。賠償金の額を少しでも増やしてこい。ミロはエルフとの外交だ。和解をする必要はないが、これ以上兵の損耗を増やすことは避けたい。不可侵あたりの話を進めてこい。今回の侵攻はエルフが獣王国の領土を無断で荒らしたことが原因だと言い張って進めろ。グリャは本国で待機。」


生意気なエルフを奴隷にすることに失敗したライモンドと、早速無理難題を押し付けられたミロノヴィガは渋い表情を浮かべる。


結局、イレギュラーの正体はわからないまま、最後までクティスの思いつきに振り回され続けるミロノヴィガたち部下であった。

ありがとうございました。

X → @carnal418

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