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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
メギド胎動編
167/199

167.爆速侵入者とのんびり領主

短いです。よろしくお願いします。

「領主様、たった今、関所を無断で通り過ぎた輩がこの領内に侵入したと知らせがございました。」


「ん〜〜〜今日もいい天気だにゃ〜」

草むらに寝転がり、両手足を大きく上下に伸ばす猫人。彼女のことを知らない人が見れば、気ままな猫人がのんびりしているだけの風景に見える。しかし、そんな猫人は自分のことを知らない人がいる空間に出ることは滅多にない。今も大きな木から洩れる木漏れ日を感じながら言葉を発しているが、ここは領主屋敷の中庭。


「兵士が後を追っているようなのですが、相当に早いようで、中々捕まえられずにいるようです。」


「ん〜〜〜」


「兵士たちからは増援や指示が欲しいと連絡をもらってます、どうされますか?」


「ん〜〜〜」


「領主様?」


「知ったこっちゃないにゃ〜、私は今のんびりすることに忙しいにゃ〜勝手にするにゃ〜」


報告したメイドが指示のない命令に困っていると、後ろから怒鳴り声が聞こえる。


「姫様!さっさとお仕事なさいまし!」

そう言って目周りが真っ黒なメイド長のフライムは報告をしていたメイドから内容書を受け取ると、領主の眼前に突きつける。


「ん〜〜フライムはいつもうるさいにゃ〜ナマケモノ族でそんなにテキパキしているのはフライムだけだにゃ〜」


「私の系類なんて今は関係ございません!そんなことよりも指示をなさいませ!そうされないのでしたら、賊捕縛の陣頭指揮をとっていただきます!」


「もうわかったにゃ〜。おい、そこのメイド、関所を無断で通った奴らの目的は何にゃ?」

のんびりと昼寝をしていたい猫人のニーニャだったが、ナマケモノ人のメイド長フライムの剣幕と選択話法によって楽な方を選ばせられる。


「わかりません。兵士たちの報告によると、関所に向かってくる見たことのない獣が引く荷車がものすごいスピードだったため速度を落とすように呼びかけたようです。しかし、その荷車はこちらの要請に従わずに無視して関所に衝突しようとしてきたため弓を射かけました。」


メイドの詳細な説明にのんびり昼寝をしていたニーニャは興味を惹かれたのか耳をぴくりと動かせる。


「そうすると今度は御者が何か魔法を唱えたのか、荷車を守るように障壁が展開されて、射かけた矢は全て跳ね返されたそうです。そうしている間も荷車は止まらず、そのまま街の中に入ってきて、現在捕えようとしているそうですが、全くうまくいかずに救援を領主様に求めたとのことです。」


話を聞き終えるとニーニャは黙る。話していたメイドが困り、メイド長であるフライムに視線を向けたが、今度は何も動かなかった。


「敵の目的は?」


「わかりません。」


「街の被害は?」


「関所を超えてから障壁は無くなったようで、速度の速い荷車に驚く者はちらほらといたようですが、これといった被害はございません。」


「荷車はどこに向かっているにゃ?」


「オセアニア評議国側から侵入し、北上しているとのことです。」


「それなら放っておくにゃ。しばらくしたら勝手に出ていくにゃ。」


「しかしそれでは舐められたと怒っている関所の兵士たちが納得致しません。」


「そんなの知ったこっちゃないにゃ。むしろ、関所を突破された挙句、領主に助けを求める無能はこっちから願い下げだにゃ。それで文句を言ってくるようならそいつは殺すからどうでもイイにゃ。街に被害がない以上敵を刺激して被害が出るのも面倒だにゃ。動向を把握するようにして手出しは禁止と指示を出しといてくれにゃ。」


ニーニャに報告に来たメイドは指示が出されると不承不承ながらも一礼してその場を去っていく。すると今度はメイド長のフライムがよく伸びた鋭利な爪を器用に用いながら眉間の皺を揉みながら苦言を呈す。


「姫様、そんな甘い対応でよろしいのですか?」


「別にイイにゃ。面倒な敵を相手にするほど私も暇じゃないにゃ。それに、北たから竜人国に向かおうとしているなら全力で止めなきゃいけにゃいけど、北に向かっているならまだ獣人国内にゃ。適当にライモンドに投げるにゃ。あ、でもオセアニア評議国から来たから隣接する隣領のベニートには文句を言っておいてくれにゃ。適当にもらえるもん貰っとくにゃ。それの1割でも対応したライモンドに投げればあいつも表立って文句は言えないにゃ。」


「姫様がそこまでお考えのようでしたら構いません。早急にオセアニア評議国ベニート領に抗議書、ライモンド様の領内に警告をしておきます。それにしても侵入者は一体何の目的で関所を強行突破してきたのでしょうか?」


「知ったこっちゃないにゃ。そんな足りない情報で推察しても正解なんて出ないにゃ。それなら考えるだけ無駄にゃ。被害が出ないうちは適当に流すにゃ。私はもう昼寝するにゃ。今度はこんなどうでもイイことフライムで処理してにゃ。」


そう言って気ままな猫人領主は地内に侵入者があってもマイペースで昼寝を続けた。

ありがとうございました。

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