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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
都市国家連合国編
16/199

16.資料室の番人2(地図付き)

急いで簡易的な地図作りました。

レイもがっかりしたように読者の皆様もがっかりされるかもしれませんがご勘弁を。

よろしくお願いします。

挿絵(By みてみん)


冒険者ギルドの資料室にあった地図は正直言って微妙だった。

確かに地図には知りたかった情報である、大まかな国々の位置、山、森、海などが記載されていた。


ここ都市国家連合は大陸の中心からやや西側に位置しており、三つの国と隣接している。

菱形の中心に円形に広がる都市国家連合が存在し、北にクティス獣王国、南西にオセアニア評議国、南東にクラーヴ王国の領土が扇状に広がっている。


詳しい領土の区分けはもちろんあるのだろうが、この資料には記載されてはいなかった。


クティス獣王国の隣には右側にデースト聖国。オセアニア評議国を若干挟んで左側にはノマダ共和国。

さらに都市国家連合から見てその3国(獣王国、聖国、共和国)の奥にはソアトル大森林が広がっており、エルフ種や妖精種、蟲人種が暮らしているらしい。


オセアニア評議国の地形はもっと歪で周辺5カ国に囲まれている。

オセアニア評議国はこの地図を見る限り、まるで人を丸呑みにするサメの頭を横から見ているような形をしていた。

サメは大きな口を開けており、口内下側は都市国家連合、上側にクティス獣王国が存在し、下顎部分にはクラーヴ王国。

そして頭上にはノマダ共和国があり、そのわずか先にソアトル大森林。

完全に背後の、サメの胴体部分はカテナ西国に侵食されている。


クラーヴ王国は都市国家連合、オセアニア評議国、クティス獣王国以外に隣接する国はないが、南側には海が広がっている。南東には大きな入江がある。この大きな入江は資料中では中心に位置している。

この4国(都市国家連合、クティス獣王国、オセアニア評議国、クラーヴ王国)は面白いことに、どの国から見ても隣接する国が3カ国以上ある。

これは都市国家連合が円形という複雑な国境を有していることに起因するのかもしれない。


その他にも大きな入江を中心に北西にデースト聖国、南と東に海。北には鋳造国家ガレープ。

鋳造国家ガレープは左に聖国、右は海。そして下は大きな入江。

さらには北には錆色山脈があり非常に閉じた空間に位置している。

その錆色山脈を超えたところにラートル帝国は存在し、隣接するのはソアトル大森林のみで、どこか隔絶した感じがする。また海を超えた先にはブルビエ魔国やレフィーナ王国がある。


この地図を見た時の第一声はもちろん。


「え?」


この間の抜けるような声には色んな意味が含まれていた。


まず国の大きさが全く分からない。

地図なのに縮尺が記載されていないのだ。

レイが地図を見て微妙な反応を示した最大の要因がこれだった。


縮尺がどれくらいなのか記されていない。

つまりそれはこの地図のサイズが合っているのか分からないということ。


XXドーム一つで完結するようなもはや模型なのではと思う小さな世界の可能性もあれば、一つの国家で元いた世界の全ての国がすっぽり埋まるくらい広大な面積をしている可能性だってある。縮尺以外で判断しようと各国の人口についても調べてみたが機密事項に当たるためか見当たらない。国のサイズ感はわからないが、流石に国の位置や大きさが完全に違うことは考えにくい。

多くの違う地図を探し、そこから精査していくしかないのだろう。


地図には国名に魔国や獣国と記載されていたが、この世界にはたくさんの種族が存在する。

正直この街に獣人やエルフがいたことから人だけでないとは思っていたがこれほど多くいるとは思わなかった。


なんと11種類の種が存在する。

11種というのは人種、エルフ種、妖精種、混血種、竜人種、魔人種、獣人種、蟲人種、ドワーフ種、鬼人種、海人種。


またエルフ種とドワーフ種はハイエルフとエルダードワーフという個体に進化し、竜人種、魔人種、獣人種、鬼人種の中では特に優れた選ばれた存在が、その種族を取りまとめる亜神に神化するそうだ。

そんな種族の進化がある一方で、蟲人種、海人種の中には進化したことで理性を獲得し、魔物の区分から脱却したものもいるようだ。

また種として認定されているのはこれだけだが、他にも珍しい生物は存在すると資料には記載されていた。

その生物がどうして種として認められていないのかは資料中には載っていなかった。


想像以上に世界が未知に溢れていて、興味をそそられる反面これからのことを考えるとやることがどんどん増えていき、ため息が止まらない。



資料を読んでこの世界に存在するという迷宮についてもある程度わかった。

迷宮は冒険者ギルドが設立される前から存在しているそうで、誰がどうして作ったのかは謎だった。そして迷宮の管理体制についても何もわかっていないらしい。迷宮は各地に存在しており、発見されるごとに冒険者ギルドが調査を行い、攻略難易度が定められる。難易度はSランクからGランクまで存在し、低難度の迷宮はある日突然姿を消すこともあるそうだ。冒険者はそんな迷宮に潜り魔物の素材や迷宮から湧き出るアイテムを主な収入源としている。


レイが潜っていたミャスト迷宮はこの世界に6つしかないSランク迷宮の一つだった。


鋳造国家ガレープにあるイスネル迷宮。

ブルビエ魔国の虞峡谷。

ブルビエ魔国とラートル帝国のちょうど中間に位置するパドボドニー海底迷宮。

ラートル帝国を隔絶させる錆色山脈。

ソアトル大森林の奥にあると言われる及己森林、

そして最後にレイが最初にいた、ミャスト迷宮。


これらは世界が誕生して以来一度も攻略されていない迷宮で、過去に一度は攻略者を出したAランク迷宮とは隔絶する難易度の差があるという。


迷宮は魔物とアイテムが自然ポップするというのがこの世界の共通認識のようで、そこに理由はないようだ。

また魔物はある日を境に迷宮外にも出現するようになったという。

とある学者によると元々魔物は迷宮を作った何者かによって生み出されたもので、本来この世界にはいなかった存在らしい。そして気になる問題、どうして魔物が迷宮の外でも見られるようになったのかは残念ながらFランクの資料には記載されていなかった。

迷宮の出現に謎が多いように、どうして魔物が外に現れるようになったのかはまだ解明されていないことなのかもしれない。

迷宮によって出てくる魔物の系統も異なるようだ。

記憶を遡ると確かイーリもそのようなことを言っていた気がする。

ミャスト迷宮は主に魔獣が出現するとか。

竜のような強力な存在が現れる迷宮も存在するらしく、素材確保のために迷宮攻略が国家事業となっている国も存在するようだ。



一通り気になる資料に目を通したことで、この世界について理解が深まったとともにいっそう疑問も増えた。

こればかりはランクを上げて、閲覧できる資料を増やしていくしかないかと割り切り、そろそろサーシャとご飯の時間かなと思い、戻ろうと席を立つ。

資料を元あったFGの棚に戻し、カウンターにいるゾンバに会釈し、資料室を出ようとする。

しかし扉に手をかける前にゾンバから話しかけられた。


「もう資料はいいのかい?」


「はい、一通り知りたいことは知れたので。」


「そうかい。ところであんた・・・異世界人かい?」


不意に問いかけられた言葉に息を呑む。

答える間があくごとにゾンバの目つきはより剣呑になっていく。

人の内面を読み取ろうとする眼力に嫌な汗を流しながら、否定する。

理由はわからないが、本能がこの人に自分が異世界の出身であることを伝えてはならない気がした。


「そうかい。」


否定すると相手の態度はやや軟化する。

それでもレイを見る目には疑っている様子が感じられる。


「あのまず異世界ってなんですか。」


レイは致命的な受け答えミスをしたと感じた。

異世界を知らない人はそもそも異世界人であることに肯定も否定もしない。

その言葉の意味を尋ねるはずだ。

もう手遅れかもしれないが慌ててレイはゾンバに異世界の意味を問いかけた。


「知らないなら良いんだよ。

Fランクの駆け出しの癖に、依頼に関わる薬草資料は全く見ずにこの世界の常識を探ろうとしている。

まるでこの世界に来たのがつい数日前みたいにね。」


ゾンバはレイの問いが聞こえていないのか、答えるつもりがないのか一人、話を続ける。


「この世界に・・・?

俺は確かにウキトスには最近来たばかりですけど。」


仮面越しに嫌な汗が流れるのを感じながら、必死にとぼける。


「ならあんたここに来る前はどこにおったんだ?」


「クラーヴ王国の名前もない村出身です。

ミャスト迷宮越しに国境を越えてきました。」


困った時のクラーヴ王国。

これまで、イーリもメルラも門番のベスもクラーヴ王国の名前を言ったらどうにかなった。

クラーヴ王国のことなど嫌な国ということ以外、毛ほども知らないが頼らせてもらう。

そんな魔法の単語を口に出しつつ、ゾンバの様子を恐る恐る伺う。


「クラーヴ王国か。なるほどね。ほうほう・・・。」


「あの・・・?」


「いや、ワタシャの気のせいだ。なんでもない、気にしないでおくれ。」


ゾンバの目つきから剣呑さはなくなり、というかレイに対する興味すらも失しているようだった。

どうにか乗り切った?と思うと共にゾンバと同じ空間にいたくなくて一目散に資料室を出る


「そうですか。それなら俺はもう行きますね。

多分また来ると思うのでその時はよろしくお願いします。」


「ワタシャここに座っているだけだよ。

見たい資料があるなら勝手に読んで片付けて帰りな。」


冒険者ギルドを出たところで大きく息をはいた。

唐突に耳に入ってきた異世界という言葉。

それにあの気迫。ゾンバが発する異世界という言葉にはイクタノーラの殺意のようなものを感じられた。

そう感じただけに答える時は緊張した。

自分よりも小柄で、なんならサーシャより少し背の高いだけの老婆にここまで緊張させられるなんて思ってもいなかった。

これからは頻繁にこの世界の知識や常識を、資料を通して知ろうとすることは良くないのかも知れない。

ゾンバだけが例外だったのかも知れないが、異世界という言葉がこの世界にも存在していると知った。

それに異世界はこの世界の人にとってあまり肯定的でないように感じられた。もしかしたらゾンバが異世界人に対して並々ならぬ思いでいるだけかもしれないが、最悪は想定しておいた方がいいと思う。

だから今後は異世界出身はデメリットになる可能性が高いということを念頭に、より慎重にことを運んで行かなければならなそうだ。


ありがとうございました。

次回投稿予定は明日です。

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