124.イントロスペクト
よろしくお願いします。
ミャスパーの処刑が完遂され、レイたちは帰宅した。今日は時間が遅いということで、アルシアたちの出発は明日になった。レイは出発が明日になったことを伝えるために支度をしているパノマイトの家まで向かう。以前まで<狼の森>の前には番獣として扉の前にベムとペスがいた。しかし今は合体したため片側にしか狼はいない。そもそも狼なのかも怪しいのだがそこは置いておく。
ペスだった存在は二つ首が空いた片側に視線を向けており、どこか感傷的な雰囲気を醸し出していた。そんなペスとベムだった存在と軽く戯れあったのちに、扉を開ける。
「こんにちは、パノマイトさんいますか?」
お店の中に人影が見えなかったため、レイは多少声を張ってパノマイトを呼ぶ。
「あ、レイさん。どうも。領主様の方はもう大丈夫なんですか?」
「はい、一応全部片付いたと思います。ただ、今日の予定が思った以上に長引いてしまったので、アルシアさんたちの出発は明日に延期するそうです。」
「そうだったんですね。わざわざ教えに来てくれてありがとうございます。」
「いえ、ただ報告に来ただけではなくて、実はパノマイトさんに相談があるんです。ミャスパーにかけられた魔法を解除する方法があるかもしれないんですけど、パノマイトさんはどうしたいですか。」
「私にかけられた魔法と言いますと、先日領主様から伺った禁術のことですよね?でも、確かあれは、解除方法が国家機密で分からないのでは?」
「確かにそうですね。領主様は魔法の解除方法は二つあると言っていました。一つはその国家機密のため不明。もう一つは無属性魔法の『イントロスペクト』をかけ続けること。」
「それでは『イントロスペクト』をかけてくれるということですか?」
「いえ、『イントロスペクト』の方は確実じゃないですし、時間も労力もかかります。」
「では、レイさんは国家機密を知っていると?」
一商人である自分が立ち入っていい話なのか怪しいと思ったパノマイトはレイを注意深く観察する。
「いえ、俺は独自の解除方法があります。国家機密がどんな魔法なのかを知らないので、別物かどうかはわかりませんが。」
「そう、ですか。ではレイさんがご存知の解除の魔法を私に使ってくれるんですか?」
パノマイトはレイが色々と規格外の人物であることは、たった一月にも満たない付き合いだが理解していた。そのレイがわざわざ言い出すのだから魔法の効果もあるのだと思う。リオのために色々と骨を折ってくれたこともあり、信用はしていた。しかしどうしてその魔法をわざわざ自分に使ってくれるのかが謎だった。
「パノマイトさんさえ、よければですけど。」
「私はレイさんを信用しています。ですが、商人としてはどうしても無償で助けてもらうことに躊躇いがあります。お金は必要ありませんか。」
気になったパノマイトは思い切ってレイに尋ねてみることにした。
「俺が使える解除の魔法で本当に解除できるのかはやってみないとわかりません。そんな不確かな状況でお金はもらえないですよ。それに今後、俺は一緒に行動できません。けれどルノはアルシアさんたちに同行します。パノマイトさんがかけられている魔法がルノにとって何かしら悪い影響があるのだとしたら事前にとっぱらっておきたいんです。」
仲間のための行動という説明に納得したパノマイトは魔法を行使してもらうことにした。自分の眼前にレイの掌が翳され、淡く光ったと思った時には既に魔法は行使した後だった。
体に劇的な変化は見られず、本当に解除できたのだろうかと少し疑問に思ったパノマイトであったが、レイは解除できたと断言していたために信じた。
「元々急激な変化をもたらす魔法ではないようなので、変化も感じにくいのかもしれません。また何か変だと思ったら、ルノに言ってみてください。」
「わかりました。ありがとうございます。」
パノマイトはリオの一件以来ずっと世話になっていることを申し訳なく思っているようで、好きな本を持っていってほしいとレイに告げる。その後レイは本を数冊見繕い、宿に戻った。
お久しぶりです。読んでいただきありがとうございます。短くてごめんなさい。
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