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失われていく自分の世界  作者: 糸守 朱知。
オセアニア評議国編
116/199

116.仮面のツラが厚い3

よろしくお願いします。

レイの傲慢な歪さに押された領主たちはとうとうレイから視線を外す。


「領主様から質問がないのなら俺の方からも一つ、いいですか?」


「な、なんだ?」

話し合いの場であるにも関わらず、レイからの呼びかけられただけで上ずる領主の声。


「男爵のことで一つ。

そもそもリオちゃんが男爵に追いかけられていたのは、男爵がリオちゃんの父であるパノマイトさんが魔法をかけられていたことに気がついたからなんです。

実際パノマイトさんは男爵から精神操作系の魔法をかけられているようで、その魔法の効果と解除方法は知っていますか?」


「何んだと?そんなことは聞いていない。ミャスパーめ。まだ隠し事をしていたか。それに関しては悪いことをした。後ほど調べて使いを送る。

今、普通にしている様子から見ても早急に解かなければ死に至るようなものではないだろう?」


レイの恐怖に押される領主であったが、男爵にさらなる余罪が出てきたことでレイから受ける恐怖を怒りで上書きしようとする。


「ええ、まぁ今のところ大きな問題はありません。ですが、知り合いが精神魔法をかけられているのはあまりいい気分ではないので、出来る限り早く対処してもらえると助かります。」


「了解した。今度はこちらから一つ質問だ。そこの褐色肌のエルフと、先日地下牢で生まれた二つ首の獣について詳しく知りたい。」


「ルノとペスですか。ルノは俺の専属のメイドで、旅の同行者です。

俺の護衛も兼ねているので実力は相当です。ペスだった存在に関しては俺もよくわかりません。元々はリオちゃんたちと旅をしていたベムとペスという獣でした。先日の戦いの前に男爵に殺されていたようで、かろうじて生きていたペスがベムを取り込んだ結果、双頭の獣に変化しました。」


レイの説明に全く納得できていない様子のニーベルンだったが、これ以上深く掘り下げることに恐怖を感じて口をつぐんだ。


「そうか。襲撃のあった日のことについて、私が集めさせた情報とそこまで齟齬はない。背後関係の説明も納得のいくものだった。拉致されたものたちに関しては私が責任を持って彼らの望む地に帰すことを約束しよう。」


「失礼だが、領主様、そこ言葉どこまで信用できるんだ?」

領主の言葉に対して今日一度も言葉を発していないアルシアが質問を投げかける。

ナンシアは手で顔を覆ってガックリ項垂れており、口を出さないように厳命されていたのだということが伝わる。確かにアルシアの言葉使いはナンシアと比べるととても領主に対した物言いでないことは明らかだった。しかし話し合いの場で、やり方は不明だが領主に手を出したレイがいるためアルシアの無礼さは、多少言葉使いは荒いが礼儀をかかさぬよう努力していると捉えられた。


「ふむ、確かに今の私の言葉は信用できんか。ならば何を要求する?」


「少なくともエルフたちに関しては私たちで国まで送りたい。その道中の食糧とかの支援を頼む。支援をしてもらえると私たちもこの拉致が国ではなく個人のしでかした行いだと説明もしやすい。」


言葉使いは完璧と言えないアルシアだったが提案した内容がどちらの利にもなるためニーベルンは快く了承した。


「レイは何かあるか?」


「俺としてはパノマイトさんにかけられた精神操作魔法の解除、もしくは解除方法。それにパノマイトさんたちの要望に沿った支援をしてもらいたいです。」


レイの意見にニーベルンの視線がパノマイトに向く。

「パノマイトはそれで良いのだな?」


先ほどから貴族、それもこの街のトップである領主の目の前ということもあってすっかり縮こまっていたパノマイトは領主の問いに何度もコクコクと首を縦に振る。


「あー領主様、それと襲撃に関しての私たちの処罰はどうなるんだ?」


「襲撃は本来なら領主として貴族を襲った者を処刑しなければならない。しかし拉致されていた者たちを送りたいという要求を私が受け入れたため罰は罰金になるはずだ。細かい金額は追って知らせる。ただし、レイに関しては竜人を何人も殺している。例え竜人に非があったとしてもそれは罪だ。その点は理解してもらえたと思っている。」


ニーベルンの言葉に黙って頷くレイ。

そしてその背後でお青筋を立てていたルノだったが、続くニーベルンの言葉によって同時に訝しげな表情を浮かべる。


「だが、私に君は裁けない。1人で男爵館を襲撃しようとしていたことからも明らかだが、君は危険だ。下手に抵抗でもされて領民たちに被害が及ぶことを私は望まない。それでも君が君のしでかしたことに罪を感じたのならこれは貸しだ。私、ベニート伯からレイ個人への。表向き、今回の事件で私は君を領外追放に処する。これで実際に何も罪を与えていなかったとしても民は納得するだろう。」


「男爵も処分は?」


「処刑だ。」


「それなら尚更、街の人は納得しないんじゃないんですか?」


「そこは情報の扱い方だ。レイは竜人を殺した。しかしそれは皆兵士だったり、冒険者といった戦いを生業とするものたちだ。そして処刑される男爵はそいつらを利用して他種族を拉致するといった国際問題に発展する事件を引き起こした大罪人だ。大罪人の罪を暴いた君を領外に追放することで、殺された遺族の怨念は男爵にむき、頭の回る第三者は事実上、私が君を無罪にしたと捉えるはずだ。」


「なるほど。それで貸しというのはどういった形で返済すればいいんですか?」


「決めていないからこその貸しなのだ。」


ニーベルンの要求がよほど答えられないような、それこそルノを寄越せというような内容でなかったことに安堵するレイ。しかしその要求が不明なだけにわずかばかりの不安はある。しかし殺しが罪であるというこの街の法に従う場合自分が罪を犯したことは確かではある。無理難題を突きつけられた場合、最悪跳ね返せばいいかと楽観的に考え了承した。その後、男爵は3日後に公開処刑になるということを聞いて話し合いはひとまずお開きになった。


ありがとうございました。

更新遅くなり申し訳ございません。

ただただ、執筆時間がありません。

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