111.朝の一幕
夜に投稿してごめんなさいな内容です。
よろしくお願いします。
翌朝、良い香りと共に慌てた様子のリオによってレイは起こされた。
「お、お兄さん!」
体を揺すられてレイの意識は覚醒し始める。
しかしリオの元気な様子にレイは安堵し、再び眠りにつきそうになる。
眠りそうなレイをリオは一生懸命体を揺すって起こそうとする。
しばらくして、体を揺すられるのが止まり、再び眠ろうとするレイだったが、リオの救援を求める声が聞こえたため意識が覚醒した。
「うわ、助けて」
「レイ様の眠りを妨げないでください。」
慌てて目を開けると両脇に手を滑り込ませたルノによってリオは持ち上げられていた。
そんな2人の様子を微笑ましく見ていたレイだったが、ルノの表情がそんなほんわか空間には似つかわしくないほど厳しいものになっていたためオチオチ傍観することが出来ず、目を覚ました。
「ルノ、リオちゃんおはよう。」
「おはようございます。」
「わ、、、お兄さん、おはようございます!」
レイが声をかけるとルノはリオをベッドに放り投げ、空いた手をきちんとお腹の前で重ねて折り目正しく一礼する。
一方ベッドに不時着したリオは驚きながらも痛みなどはなかったのか、普通に挨拶をする。
「いい匂いがするけど、ルノが何か作ってくれたの?」
「簡単なものですが朝食を準備させていただきました。」
「そっか、ありがとう。こんな場所だと料理も大変だよね。早速食べてもいいかな?」
寝起きだが、レイは昨日この街に戻ってきてから何も口にしていない。そのため非常に空腹を感じていた。
レイとルノが穏やかな時間を過ごす中、呆気に取られていたリオがレイの胸に飛び込むような形で抗議する。
「お兄さん!お父さん知りませんか?!」
突然胸にダイブされたレイは驚きつつもリオの言葉を反芻する。
「パノマイトさん?あ、昨日連絡入れ忘れた。
ごめんね。朝ごはん食べたら急いでパノマイトさんの所まで送るから。」
「お父さんは大丈夫なんですか?」
「ん?なんのこと?」
「え?それはだって。あれ?どうして私、お兄さんの宿にいるんだろ?」
状況を把握しきっていないため会話がうまく噛み合わない2人。
「昨日、俺は兵士に襲われているリオちゃんを見かけてここまで連れてきたんだ。」
レイの言葉に何か考え込むリオ。
しばらくうーんと頭を捻ったのち、リオは話し出す。
「私、貴族に捕まって、それで、マーナおばさんたちが助けてくれて、お父さんと帰ったんです。でもお家に私を捕まえに人が来て、お父さんと逃げて、お父さんが血を流して、でも茶色の竜人が大丈夫だって言ってくれて、逃げたけど、道がわからなくて、そしたら急に武器持った竜人たちに殴られて、それで、えっと、えっと。」
レイは自分が見た状況が、かなり大変なことに遭った後の状況だったとなんとなく悟り、リオの頭を優しく撫でる。そしてマーナたちの様子を思い出し、パノマイトの安否が急に心配になる。
朝ご飯を食べてからパノマイトの家にリオを届ければいいかと思っていたレイだったが、状況が変わった。
昨日とはいえ、追手がパノマイトの自宅にまで来たのなら今家に戻っている可能性は低い。
それにリオの言っていたパノマイトが出血したことも気になる。
あまり質問をして嫌な記憶を思い起こさせるのは気が引けたが、血を出して倒れるパノマイトと聞いてレイはリダイオとマーナの死体を想起した。
そのため状況を聞かずにはいられなかった。
「リオちゃん、パノマイトさんはどれくらい血を流していたのかわかる?」
「たくさん。それでお父さん意識失って、でも私も意識失ったから早くお父さんのところに行きたいんです。」
「昨日家から逃げたのならおそらくパノマイトさんは家にいないよね?」
「・・・はい。」
「それならひとまずご飯を食べて落ち着こうか。」
「私はお父さんを探しに、、、、」
「パノマイトさんはその間に絶対探し出すからまずは落ち着こう?」
焦りからなのか、やや支離滅裂なことを語るリオを落ち着けるためにレイは声をかける。
それでもリオはどうすればいいか悩んでいる様子だったが、ルノが食事の支度ができたとこちらにやって来る。
ルノがメイド用のアイテムボックスから出したテーブルには2人分の食事が支度されていた。
「ルノ、えっとその2人分の食事は・・?」
レイはまさかリオの分はないのかと思い恐る恐る尋ねたが、レイとリオの分だったようだ。
いつも通りルノは自分の食事は後で問題ないと言い張る。
普段ならば一緒に食事をしようと言っている所だが、今はやや緊急事態だ。
「それならその間にしてもらいたいことがあるんだけど、どんな手段を使ってもいいからパノマイトさん、リオちゃんの父親を探してくれない?」
そんな突発的な要求にもルノは粛々と頭を垂れて頷く。
レイはリオにご飯を食べ次第、一緒にパノマイトの捜索を協力すると約束し、席に着く。
昨日から何も食べていないレイと、それ以上の期間ほとんどご飯を口にしていないリオのためと思われる食事が準備されていた。
胃に負担をかけないためなのか雑炊と温かいお茶がある。
早く体に取り込めと体が反応しているせいなのか、口内に唾液が分泌される。
そんな唾液を飲み込み、レイは席に腰掛ける。
リオもそんなレイの様子に釣られ、自分も相当長い時間食べ物を口にしていないことを思い出す。
お腹の虫を鳴らせて若干恥ずかしそうにするリオをテーブルに招く。
怪我をしている父を放っておいて自分は食事をしていいのだろうかと悩む様子のリオだったが雑炊を口にした途端に顔の表情筋が緩む。
その後、リオとレイはルノの作ってくれたご飯を一心不乱にかき込んだのだった。
ありがとうございました。
年内にもう1話更新する予定です。




