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「なろうラジオ大賞3」のための物語

その日 雨が降ったから、サーファーは星の波を越える

作者: ヤギマルケイト

「あいにくの雨ですね」

 俺は渾身の笑顔で話しかけた。

 一目でピンときた。彼女は“お嬢様”だ。

 こういうのを待ってた。

 俺はご覧の通りのサーファー

 ……なんかじゃない。

 サーフィンなんてやったこともない。ボードはただの飾りだ。

 じゃあどうしてこんな格好してるかって?モテるからさ。この格好だけで簡単に女は引っかかる。

 ナンパ野郎?とんでもない。俺はちゃんとその時の彼女を本気で愛してる。夢を見せてるのさ。

 だがここ数ヶ月、どうにも調子が悪い。

 一人なんて俺のプライドが許さない。幸い雨だ。海に出なくても疑われる心配はない。今がチャンスだ。

 そこへ、彼女である。

 旅行中のお嬢様ってとこか。上手いことやれば、今後の俺の生活はかなりハッピーになるかも。

 このチャンス、絶対に逃してなるものか。



「ええ、本当に雨ばかりで困ります」

 私は渾身の笑顔で答えてみせた。

 一目でピンときた。彼は“サーファー”だ。

 こういうのを待ってた。

 私は見ての通り、名家の令嬢

 ……なんかじゃない。

 いや家柄は悪くない。一応は王女なんだから。というか問題はそこじゃなく、

 私がこの星の人間じゃないってこと。

 母星の大乱に巻き込まれ、脱出したまでは良かったが、次元超波とかいう代物に巻き込まれ、気がつけばこんな辺境に来ていた。

 ケンカ売られっぱなしなんて私のプライドが許さない。すぐにでも戻りたいのに、あの次元超波だ。あっちへ逆流するとなるとかなり難しいらしい。

 でもいいことを聞いた。

 この星には、波に乗る専門家がいるらしいじゃないか。

 問題は、次元超波に地球人が耐えられるか分からないってこと。死ぬかもしれないけど来てください、と言われて、はい分かりましたなんてお人好しがそうそういるとも思えない。

 ならば方法はひとつ。

 黙って、連れて行くのだ。

 騙してるわけじゃない。ただちょっと秘密にするだけ。ほら死ぬって決まったわけじゃないし。今がチャンスなんだ。

 そこへ、彼である。

 雨でも海に出る波好きってとこか。上手くやればこの先、私の未来はすごくハッピーかも。

 このチャンス、絶対に逃してなるものか。



「何だか僕たち、気が合いますね」

「ええ本当に」

「よろしければこの後、お食事でもいかがです?」

「もちろん喜んで」



 この後、星の海へと旅立った二人は、大いなる驚きと共に己の安易な選択を悔いることになるのだが……

 それはまた別の物語である。

 彼らの冒険は始まったばかり、いや

 まだ始まってさえいないのだ。

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